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特集 ソフトバンク 東浜巨投手 ノーヒットノーラン達成 あふれた感謝のことば 

野球 2022年5月13日(金) 午後6:00

東浜 巨 投手

疲れました。でもこんなに気持ちのよい疲れは久しぶりです。まさか自分ができるとは思っていなかったですし、まだ信じられないです。

プロ野球・ソフトバンクの東浜巨投手が11日、福岡市のPayPayドームで行われた西武戦でノーヒットノーランを達成した直後のヒーローインタビューで最初に発したことばです。プロ野球のノーヒットノーランは史上84人目、沖縄県出身者としては初めてです。

 

2022年5月11日 西武戦でノーヒットノーランを達成した東浜投手

東浜投手は、今シーズン、ここまで3勝1敗。この日は、まっすぐには球威があり、シンカーをはじめとする変化球もさえ、西武打線を寄せつけませんでした。そしてノーヒットのまま2対0とリードして迎えた9回、ツーアウト、西武の9番・金子侑司選手をセカンドゴロに打ち取りノーヒットノーランを達成しました。

今季のプロ野球 ノーヒットノーランは早くも2回目

 

東浜投手はフォアボールを2つ与えましたが、直後の打者との対戦でいずれも内野ゴロによるダブルプレーでしとめました。そして、9回まで毎回3者凡退で27人のバッターを相手に三振を6つ奪い、球数は97球に抑える「省エネ」ピッチングでした。

 

今シーズンのノーヒットノーランは、ロッテの佐々木朗希投手がことしの4月10日に完全試合で達成して以来で、早くも2回目となります。

 

2008年春の甲子園  決勝で東浜投手が完封し優勝

東浜投手は沖縄県出身の31歳です。沖縄尚学高校3年のときに春の甲子園で全国優勝を果たしました。そのあと亜細亜大学に進み、2012年のドラフト会議でソフトバンクから1位で指名され入団しました。

 

2012年12月 ソフトバンクの入団会見

2017年には16勝5敗の成績をあげて最多勝のタイトルを獲得。おととしは開幕投手を務め、9勝2敗でしたが、年末に新型コロナウイルスに感染しました。さらに昨シーズンはけがの影響などもあって4勝4敗の成績に終わりました。10年目の今シーズンは開幕からローテーションを守ってきました。

最後はヒヤリも・・・

持ち味は打たせて取るピッチングです。この日も1回、セカンドゴロ、ショートフライ、ピッチャーゴロと、3人の打者をわずか7球でしとめました。その後も、最速151キロのストレートと、自身が「代名詞」と話すシンカーなどの変化球を駆使し、27のアウトのうち、半分以上を内野ゴロで奪いました。外野に飛んだのも、3回の先頭のセンターフライのみで、盤石の内容でした。

 

9回ツーアウト 金子選手の打球にグラブを出す東浜投手

それでも9回、ツーアウトから、9番の金子侑司選手を迎えた場面。球数はここまでわずか90球。7球目をはじき返された打球は、東浜投手に向かって飛んできたものの、捕ることができませんでした。記者の脳裏に一瞬、「内野安打か」という思いがよぎりましたが、セカンドの三森大貴選手が落ち着いてさばいて、ファーストにボールを送りました。

偉業達成の要因はコミュニケーション

東浜投手は試合後の会見で、偉業達成の要因について話しました。

 

ノーヒットノーランを達成し、甲斐選手(右)と握手

東浜 巨 投手

常にコミュニケーションをとって、試合の中で話しながらやっている、拓也(キャッチャーの甲斐選手)のリードが僕の中では本当に大きい。ずっと拓也と組んでやってきているし、いい時も悪い時もどっちも経験しながらやってきている。きょうも話し合い、拓也に引っ張ってもらいながら、要所では自分の願望を通しながら、コミュニケーションがうまく取れた。そこが一番大きかったと思う。

藤本監督の評価は「攻めのピッチング」

 

「打たせて取る」というといわば受け身のピッチングにとらえられがちですが、そうではありません。藤本博史監督は、東浜投手のこの日の内容について「攻めのピッチングができていた」と評価しました。この日投じた97球のうち、ストレートが38球、シンカーが32球と、得意の2つの球種で70%以上を占めました。得意の球を投げたいところに投げるのが「攻めのピッチング」です。

 

藤本監督は「まっすぐ、シンカーがすごくよかった。ボールも低くて、西武打線もタイミングが合わなかったと思います」と称えました。

試合後の会見であふれたのは・・・

東浜投手は快挙を達成し、試合後、急きょ、会見が開かれました。そこであふれたのは、ファンヘの感謝のことばでした。

 

東浜 巨 投手

特に終盤は1球1球、歓声があったり、拍手があったり、どよめきがあったり、その反応を楽しみながらプレーできました。今まであまり経験したことないような興奮、高揚感を持って投げることができました。それはファンのみなさんのおかげだと思います。

開幕から1か月半ほどで、早くも昨シーズンの自身の勝利数「4勝」に並びました。「きょうはきょうで終わったこと」と気持ちを切り替えていた東浜投手。日本一奪還を目指すチームにあって、シーズンを通してフル稼働してほしい戦力です。

この記事を書いた人

中村 成吾 記者

中村 成吾 記者

令和2年NHK入局。福岡局で警察担当を経て、プロ野球・ソフトバンクを取材。趣味はクラシック音楽をきくこと。

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