特集 前頭2枚目 琴ノ若 祖父の教えを胸に 大相撲夏場所から

夏場所、注目力士の1人が24歳の琴ノ若だ。ことしの初場所から2場所続けて11勝をあげ、優勝争いに絡んだ。今場所は番付を自己最高位の前頭2枚目まで上げた。
父は元関脇・琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方、母方の祖父は元横綱・琴櫻と親子3代の力士。
琴ノ若 “親子三代”関取に 琴ノ若と佐渡ケ嶽親方 中央は祖父の元横綱琴櫻の優勝額のレプリカ(2019年5月撮影)
おととしの春場所で新入幕してから2年、ここまで順調なときばかりではなかった。
去年の秋場所では2回目の左ひざのけがで休場し、苦しい時間を過ごした。ただ、この期間で思い起こした言葉があった。
“けがは稽古で治せ”
先代の師匠で祖父の元横綱・琴櫻が伝えてきた部屋の教えだ。その言葉の意味は“けがをしないための強さは稽古でしか身につかない”。
子どもの頃、定位置だった祖父の横に座り何度も耳にした言葉。けがをしてから、その言葉の意味を考え抜いた。
琴ノ若は体づくりを一から見直した。稽古が終わったあともひとりで土俵に降りて、しこを踏み、けがをする前よりも強い足腰を身につけようと努めた。
その成果が表れたのが先場所だった。持ち味の四つ相撲だけでなく、前に出る馬力のある相撲で白星を重ねた。
春場所14日目 大関御嶽海を押し出した琴ノ若(2022年3月撮影)
琴ノ若
「すべてにおいて全部、なおせた期間だった。けがの功名じゃないけれど、けががきっかけで相撲内容が少しずつ変わってきた。自分には必要だったというか、足りていないものを気づかさせてもらった」
父で師匠の佐渡ヶ嶽親方も成長を感じている。
佐渡ヶ嶽親方
「腰が安定しているので、下半身がぶれることがなかった。本人の中で分かってきたのではと思う」
この夏場所に向けて磨きをかけたのは、立ち合いから一気に前に出る攻め。激しい出足と当たりの強さから「猛牛」の異名をとった祖父の相撲を研究し、自分の相撲に生かそうと考えている。
夏場所、初日の相手は大関・貴景勝。過去2回戦っていずれも敗れている。
立ち合い、大関の当たりを受け止めて、突き放し、さらに磨いてきた前に出る相撲で押し出し。白星スタートを切った。
琴ノ若
「どんどん前に出るつもりで。中途半端にならないよう思い切って攻めることを意識しました」
目指す先は、亡き祖父との約束。大関以上の番付となって、祖父のしこ名「琴櫻」を継承することだ。
琴ノ若
「祖父に約束して頂いたので、それを果たせるようにしたい。どんどん前に攻める相撲を取って、いい成績を残せるように精進していきたい」
この記事を書いた人

今野 朋寿 記者
平成23年 NHK入局
岡山局、大阪局を経てスポーツニュース部。二児の父として、子育てにも奮闘中