ストーリーバレーボール

バレー日本代表の新エース 黒後愛 覚醒なるか

2019-07-03 午後 0:30

1年後の東京オリンピックで金メダル獲得を目指す、バレーボール女子日本代表。今、一人の若手がエース候補として急成長を遂げています。21歳の黒後愛選手。チーム首脳陣や専門家からも「大器」と評価され、日本が世界のトップに立つための日本の切り札とも言える存在です。その素顔と可能性に迫りました。

エースの条件を満たす大器

黒後選手のトレードマークは「笑顔」。チームメイトにも、メディアに対してもいつでも自然体の21歳は、まさに天真爛漫な「愛されキャラ」です。

 

 

その雰囲気はコートに入ると一変。持ち味であるパワフルなスパイクでチームに勢いを与える存在となります。

 

 

黒後選手の身長は1m80cmと世界基準で見ればそれほど大柄ではありませんが、スパイクの破壊力は「ワールドクラス」。かつて日本のエースとして活躍した大林素子さんも、黒後選手の持つポテンシャルを高く評価しています。

大林素子さん

「彼女はプレースタイル、表情やたたずまいも『骨太』ですよね。それは全日本でエースの称号を与えられるための、ある意味条件だと思います。黒後選手はそれを持っている。今いるエース候補の中でも、チームの一番大きな柱になる可能性はすごく高いと思いますね。」

 

そして、チームを率いる中田久美監督。若い黒後選手に対し「我慢しながらでも起用する」と高い期待をかけ続けています。

 

中田久美監督

「集中力が高まり、気持ちが入った時の彼女のスパイクは、本当に世界に通用すると思います。(黒後)愛の出来次第で、チームは違ってくると思います。」

世界の壁の前に

高校ではチームで日本一、Vリーグでは最優秀新人賞を獲得と順調に日本代表に駆け上がってきた黒後選手。しかし、去年初めて挑んだ世界との戦いで壁にぶつかりました。立ちはだかったのは外国選手の高いブロック。

 

 

アジア大会の中国戦。高さに勝る相手に早く体勢を作られ、スパイクをはじき返されます。さらに、相手のブロックを気にするあまりコントロールを失う場面も。その後行われた世界選手権でも持ち味のスパイクを「完封」され、エースとしての役割を果たすことができませんでした。

「勝ちたい。もっと強くなりたい」。

この体験が、黒後選手の心境に変化を与えました。

持ち味のスパイクを改良

どうすれば世界の壁を越えられるのか。所属チームに戻っても日本代表での映像を繰り返し見直しました。

 

 

取り組んだのは、持ち味であるスパイクの新たな打ち方。そのイメージは、「ためずに、ポンポンって打つ」。

これまでの黒後選手のスパイクは、思いきり振りかぶり空中で「ため」を作ることで、パワーをボールに伝えていました。しかし世界では「ため」の時間の間に相手に高いブロックを作られてしまう。新しいスパイクではよりコンパクトなスイングにする事で、ブロックが整う前に打ち込みます。

全日本の合宿では、高さのある男子選手を相手に練習し、目指すコンパクトなスパイクの感覚を身につけようと取り組みました。

 

黒後愛選手

「できる事を自分の中で探して、ひとつずつ積み上げていけたらいいなと思います。自分たちが劣勢の場面で流れを変えられる一本を決める、そんなプレーができる選手でありたいです。」

大声でトスを呼び込み…

そして今月、日本で行われた今シーズン初めての国際大会。試合前、その胸中を語りました。

「勝ちたいです。チームが勝つためにできることをしていきたいです。」

黒後選手は3連戦の最終戦で初めて先発出場します。相手は去年のアジア大会でストレート負けを喫したタイ。この大事な試合のためにあえて温存されての起用でした。高い期待に応えようと、序盤から磨いてきたコンパクトなスパイクを決めます。合宿での取り組みの成果を見せ、日本は第1セットを奪いました。

 

 

しかし第2セット、タイに押し込まれます。18対22とリードを許した終盤。エースとしての真価が試される場面で、黒後選手が躍動します。

黒後選手のスパイクで19対22。タイの流れを食い止めます。コートには、黒後選手の叫びが響きます。

「持ってこい!持ってこい!」

大声でトスを呼びこみ、強烈なスパイク。チームを引っ張る連続ポイントで20対22。これで試合の雰囲気が変わります。そしてここからでした。

「無心に近い感じでした。」

黒後選手のスパイクが次々と決まり、同点、そして逆転。なんと黒後選手の6連続ポイントでこのセットも連取。エースとしての覚醒を予感させる瞬間でした。この試合をストレート勝ちし、アジア大会の雪辱を果たした全日本。チームをけん引したのは間違いなく黒後選手でした。オリンピックへ、まだまだ成長を続けます。

 

黒後愛選手

「オリンピックまで限られた時間しかないんですけど、できる事はたくさんあると思います。自分の中でしっかりそれを見つけて整理して、パワーアップした自分を見せられる年にしたいです。」

 

 

 
 

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