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特集 横綱・白鵬 春場所優勝の裏にあった「平成への思い」

相撲 2019年3月26日(火) 午後7:16

平成最後となった大相撲春場所。横綱・白鵬が全勝優勝で42回目の幕内最高優勝を果たしました。平成後半を代表する横綱として、「平成最後の本場所」を締めた白鵬関がサンデースポーツ2020に生出演。大越健介キャスターにその思いを語りました。

全勝で平成最後の本場所を制す

鶴竜との結びの一番は激しい攻防に

春場所千秋楽。勝てば優勝が決まる横綱・白鵬は、結びの一番で横綱・鶴竜と対戦。1分を超える長い攻防の末、右からの下手投げで鶴竜を下し、見事優勝を果たしました。

下手投げで鶴竜を下した白鵬

取組中、右上腕を痛めながらもその右からの投げで勝つ強さ。数々の記録を打ち立てた横綱が、平成最後の本場所を締めました。

 

 

 

大越健介キャスター(以下、大越) 全勝優勝を果たしました。横綱・白鵬関においでいただきました。横綱、おめでとうございました。やはり平成最後の本場所という事で、この場所は自分が優勝して締めるんだという思いは当初からお持ちだったんでしょうか。

 

横綱・白鵬(以下、白鵬) そういう目標を掲げるというのはありましたが、相撲はふたを開けてみないとわかりませんからね。

 

大越 横綱は以前番組のインタビューで「自分は平成に育ててもらいました」と答えられていましたよね。それだけに特別な思い入れがある場所だったんじゃないですか。

白鵬 平成もそうですし、特にこの大阪に思い入れがあるんですよね。初めてモンゴルから日本に来たのが大阪なんです。入門が平成13年の大阪。十両優勝も大阪。大関昇進も大阪。横綱昇進決めたのも大阪。そして平成最後が大阪でしょ。やっぱり大阪は何か、縁起がいいんでしょうね。

 

大越 大阪のファンは喜ぶと思いますね、それを聞くと。

 

白鵬 やっぱり大阪は、ファンの方もアツいといいますか、相撲を知ってますよね。

 

大越 結びの一番のあと、右腕をちょっと痛そうにしていらっしゃって心配なんですが、いかがですか、痛みの方は。

白鵬 ちょっと、(筋肉が)多少切れたみたいですね。でも最後で、千秋楽で良かったです。

相手の動きがスローに見える

大越 今場所の横綱の相撲を見ていますと、力強さ、うまさ、そしてしなやかさ。横綱・白鵬の全ての要素が見えたような気がしたんですけど、どうでしょうか。

 

白鵬 うーん、速さと言われてますけど、自分の中では実はゆっくりの感覚なんです。

 

八日目 栃煌山戦は不利な体勢から逆転

大越 ゆっくり?例えば今場所、栃煌山関との取組や玉鷲関との取組では、相手の攻めに横向き、後ろ向きにされても白星をつかんで、何か余裕があるように見えるんですけど。

 

白鵬 自分の中ではゆっくりなんですよ。普通の目で見ると動きが速く感じるんでしょうけど、自分の中ではスローモーションなんですよね。

 

大越 それはつまり、自分の中ではしっかり全部見えているので、決して慌てていないということでもあると。

「ちょっと邪魔してやろうかな」

大越 今場所はですね、千秋楽まで関脇・貴景勝関の大関昇進というものがひとつの注目になっていました。そこで横綱・白鵬関は場所前にこんな発言をされていました。

 

(貴景勝の昇進を)多少邪魔してやろうかという気持ちがありますけど。

 

大越 この「邪魔してやろうかな」という発言なんですが、実はこの方を意識した言葉だったんですね。

 

「まだもう少し、邪魔をしてやろうかなって言う気持ちでね」。

 

大越 昭和の大横綱・千代の富士です。平成3年、当時18歳の貴花田との対戦を前に語った言葉でした。千代の富士はこのあと、貴花田に敗れて引退を決断したわけですが、今場所の白鵬関は貴景勝関に勝利をしました。世代交代を許さなかったですね。

 

大関昇進がかかった貴景勝も下した

白鵬 そうですね、たまたま春場所で大阪に入った時にテレビでサンデースポーツを見ていたら、平成の大相撲特集をやっていて、千代の富士関の言葉を見て「かっこいいな」と思ってね。それでああ言ってしまったんだけど、今日ここで取り上げられるとは思わなかったです(笑)。

 

大越 しかし邪魔をするどころか、本当に大きく立ちはだかって、その存在の大きさを改めて見せる事ができたんじゃないでしょうか。

 

白鵬 貴景勝が今場所後半苦しんでいて千秋楽、心のうちはわかりませんけど、勝利して大きな物をつかんだと思いますよ。これは今後、彼も大関として壁にならなければいけないしね、その経験が生きていくのかなと思いますね。

平成の終わり 苦しかった時期を乗り越え

大越 今場所で平成の大相撲の本場所が幕を閉じたわけですけれども、これまで横綱が成し遂げた記録を並べてみました。もう目がくらくらするくらいですね。42回の幕内総合優勝。そして通算1120勝。この数字、まさに平成後半は白鵬の時代だったといえるのではないかと思います。とはいえ横綱としてこの平成の時代を振り返ってですね、苦しい事もあったと思います。

白鵬 
土俵下での優勝インタビューでも言いましたけど、大相撲界は平成の時代、僕が横綱になる前も、なってからもそうですが様々な不祥事がありました。それに日本にとってもね、震災や災害が何度もありました。その中で振り返ってみれば9年前の名古屋場所、天皇陛下からのお手紙を頂いたこと。それがやっぱり、平成での僕の思い出になりますね。

 

大越 一人横綱だった時代もあり、長い間一人で角界を支えてこられた。その苦労が報われたなという思いはしますか。

 

白鵬 まあ当時は本当に本場所が地方巡業みたいな感じでした。サインを書きたくても書けないような時期もありました。今の若い力士たちはね、いつも満員御礼の中で相撲を取ってるから、うらやましいなとも思いますよ。けどいつまでこれが続くかまだ分かりませんしね。ちゃんとしていかなければいけないと思いますね。

 

大越 屋台骨を苦しいときも支えてきて、そしてさあ次の場所は新しい元号での場所になりますよね。けがをまず治してからということでしょうが、平成をご自身の優勝で幕を閉じられて、新しい時代にまた新しい白鵬関を見せて頂けるのではないかと期待をしていますがいかがでしょうか。

 

白鵬 やっぱりまず頭で考えて、また心で描いていけば、そういうものがまた広がっていくんじゃないかと思いますけどね。

 

大越 気持ちは全く若い頃、20代の頃と変わらない気持ちでしょうか。

 

白鵬 この間聞いたらね、血管年齢は25歳らしいですから。

 

大越 若いですね!これからもぜひご活躍を期待しております。今日はおめでとうございました。ありがとうございました。

 

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