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特集 貴景勝 大関昇進へ! 突き押し極める22歳

相撲 2019年3月26日(火) 午後6:44

3月24日に千秋楽を迎えた大相撲春場所。関脇・貴景勝は10勝をあげ大関昇進を確実にしました。幕内最年少の22歳は得意の突き押しで1横綱2大関を破る活躍。サンデースポーツ2020への生出演で、今場所にかけていた強い思いを語りました!

自分と向き合った15日間

貴景勝は兵庫県芦屋市出身の22歳。去年の九州場所、13勝2敗で初優勝。そこから今場所までの3場所で大関昇進の目安といわれる33勝を上回る34勝をあげ、昇進を確実なものにしました。「大関昇進がかかる場所」と明確にいわれる重圧の中、15日間相撲を取り切った貴景勝。時折、額に汗をにじませながら大越健介キャスターの質問にまっすぐ前を見据えて答えてくれました。

 

大越健介キャスター(以下、大越) 大関昇進を確実にされました、貴景勝関に来ていただきました。お疲れさまでした。今の気持ちはいかがですか。

 

関脇・貴景勝(以下、貴景勝) 自分との戦いの15日間でした。

 

大越 自分との戦い、プレッシャーはいつになく大きかったんじゃないですか。

 

貴景勝 まあプレッシャーというか、この期待に応えたい、ものにしたいという気持ち。それも全部受け止めて、ありがたいことなんだと思ってやりました。やっぱり場所の間は自分と向き合う時間の方が長いです。夜寝る前とかですね。その時間が大事だったと思います。

 

大越 自分に打ち勝つために、どのように自分と向き合ってきたんででしょう。

貴景勝 小さいころから、小学3年生から相撲をやってますけど、その時の純粋な気持ち、強いお相撲さんになりたいという気持ち、自分はどういうお相撲さんになりたかったのか、思い出しながらやっていました。

 

大越 まさに原点を振り返ったというわけですね。

得意の突き押しでつかんだ昇進

今場所、貴景勝の大関昇進には、取組の内容に加えて「10勝以上が必要」という声があがっていました。9勝5敗で迎えた千秋楽、大関・栃ノ心戦。まさに大関昇進がかかる一番でした。対する栃ノ心もカド番で迎えた場所で14日目まで7勝7敗。敗れれば大関から陥落する崖っぷちという状況。

 

春場所千秋楽 栃ノ心を押し出しで破り10勝目

大きな注目が集まる一番で、貴景勝は持ち味の「突き押し」の強さを見せつけました。鋭い立ち合いから、前へ。力強い突き押しを見せ、栃ノ心を押し出しで破りました。

 

そして土俵下に下がった貴景勝。まだ息が上がり汗が滴るその顔は、感極まった表情にも見えました。

 

大越 きょうの千秋楽、大関・栃ノ心関との一番でした。大変いい立ち合い、いい攻めでしたね。

 

貴景勝 そうですね。あまり考えず、自分が勝ってるものは何もないと思ったし、経験もないし、もう胸を借りる気持ちで生きました。

 

大越 貴景勝関といえば、常に淡々としている姿が印象的でしたが、その関取がですね、取組の後ほんのちょっと感極まったような表情に僕は見えたんですけれども、初めて表情がちょっと緩みましたよね。

 

貴景勝 そうですね。ホッとした気持ち、よかったなという気持ちでした。

 

大越 振り返ると先場所も同じような試練の場がありました。千秋楽に大関・豪栄道関との一番。この時点で「3場所33勝」という成績はクリアしていて、ここで大関に勝てばほぼ昇進は間違いないだろう、とも言われた一番でした。そこで、豪栄道関に完敗しましたね。振り返っても心が痛い一番かもしれません。この完敗から、何を教訓として学びましたか。

 

初場所千秋楽、大関・豪栄道に完敗

 

貴景勝 この日の夜から、「大阪場所に早くなってほしい」と思った一番でした。本当に自分の中では悔しくて、大阪場所の千秋楽は絶対こういう相撲は取らない。絶対こういう終わり方はしないと思いました。もう勝ち負け関係なく、力出し切って、負けたらしょうがないといった気持ちで行きました。

序盤の2敗で、もう「終わった」

大越 今場所の貴景勝関の成績を見ていきたいんですが、3日目に御嶽海に、5日目に玉鷲に敗れ、序盤5日目までに2敗を喫するという展開になりました。そこから踏ん張って勝ち星を積み上げましたが、後半には横綱大関戦が控えている。大関昇進には10勝は欲しいと言われていた中で、この序盤の2敗の時、どんな事を考えてらっしゃいました。

 

貴景勝 もう「終わった」と思いました。悪い意味で投げやりになったわけではなくて、ただ単に自分の実力がまだまだ足りないんだと。もっと強くなって上を目指そうと。でも、昇進のチャンスなんて何度も来るものではないし、巡ってきたチャンスを捨てていいのか、それは違うだろうと。じゃあもう、自分が思う100点の相撲、そこだけやり切ろうと思いました。それがよかったのかもしれませんね。前半で2敗して無心に変えられた、変な「スケベ根性」を出さないでやれたっていうのも、よかったのかなと思います。

 

大越 突き押しに迷いがなかったですね。まわしは取りに行かない。とにかく突き押し1本。そこも本当に一貫してましたね。

 

貴景勝 僕の場合は、まわしは取れないんで。もう徹底した押し相撲しかないんです。それでしか勝負できないので、もっと磨かないといけないと思ってます。

「別格の存在」の横綱・大関を目指す

番組では、初場所前に副島萌生キャスターが貴景勝にインタビューしていました。その副島キャスターからも、ぜひ聞いてみたいことがありました。

 

副島萌生キャスター(以下、副島) 以前インタビューさせていただいたときにですね、「横綱大関はもう別格なんだ、かっこいい存在なんだ」とお話をされていましたけれども、貴景勝関はそんな存在になれそうですか。

 

貴景勝 いやまだ実感はないです。まだまだ相撲が終わったばかりで、想像もあまり出てこないですけど、もしそういう事になれば、もっと更に上を目指したいなって気持ちです。

 

副島 絶対的な突き押しの強さも磨いていきたいというお話もされていましたけれども、今場所その自信というのは高まりましたか。

 

貴景勝 そうですね。悪くはなかったんじゃないかなと思います。この相撲を現役中はずっと伸ばしていきたいです。自分は長所を伸ばすしかできないので、ますます突き押しになったら負けない、そういう強さを手に入れるように頑張っていきたいです。

 

大越 あえてお聞きしますが、これから強い大関になる事、そしてその先には横綱という地位もあります。そのためにご自分に課す課題、これからさらに克服しなきゃならないのはどこだと思いますか。

 

貴景勝 自分は体も大きくないですし、幅の広い相撲を取ることもできません。突き押しという強みもありますが、自分にとっては精神面を強くしたいですね。どういう風に向き合って相手と戦っていくか、精神力という大きな武器を手に入れたいなと思ってます。

 

大越 ありがとうございました。大関昇進を確実にした貴景勝関においでいただきました。お疲れ様でした!

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