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特集 34歳、涙の初優勝 関脇・玉鷲が語る!

相撲 2019年1月28日(月) 午後6:06

大相撲初場所を制した、34歳の関脇・玉鷲。横綱・稀勢の里の引退や上位陣の相次ぐ休場や不調の中、同じく関脇の貴景勝と千秋楽まで優勝争いを繰り広げ、見事初優勝。その玉鷲が千秋楽当日にサンデースポーツ2020に生出演。涙の優勝の喜びの声に加え、意外な人柄も明らかになりました。その全文を公開します!

涙の初優勝・玉鷲

玉鷲は、12勝の単独トップで千秋楽を迎えました。千秋楽の相手は平幕の遠藤。この一番に勝てば、星ひとつの差で追う関脇・貴景勝の結果にかかわらず、玉鷲の優勝が決まります。仕切りを重ねていくとともに、国技館の雰囲気は最高潮に。初土俵から土俵に立ち続けて休みなく15年、優勝をかけた大一番に臨みました。立ち合い、玉鷲は持ち味の鋭い突き押しで遠藤を攻め、突き落として玉鷲の勝利。34歳2か月、史上2番目の年長記録での初優勝となりました。

 

千秋楽、遠藤を突き落としで下した玉鷲

賜杯を手にした後の優勝インタビュー。涙を流しての初優勝の喜びに加え、この日の未明、第2子が誕生したことを問われると、「最高です!」という答えた玉鷲。幕内最高優勝に加え、殊勲賞と敢闘賞も受賞。3横綱1大関不在の場所で、34歳のベテランが国技館を沸かせた15日間でした。

早く子供の顔が見たい!

千秋楽の夜にスタジオに生出演!

 

副島萌生キャスター(以下、副島) 見事優勝を果たしました、関脇・玉鷲関に来ていただきました。優勝おめでとうございます。

大越健介キャスター(以下、大越) モンゴルから日本に来て15年ですね。34歳で初めての優勝、今どんなお気持ちですか。

 

関脇・玉鷲 関(以下、玉鷲) はい、ずっと我慢してやり続けてよかったなと思います。

 

大越 そして第2子となるお子さんも今日お生まれになったということで、本当にめでたい日ですね。

 

玉鷲 本当に、最高の日です。

 

大越 お子さんの顔は見られましたか。

 

玉鷲 ちらっと見ただけですね。早く顔見たいですね。

 

大越 きのう玉鷲関は、貴景勝関と玉鷲関との優勝争いが、まさにつばぜり合いになった状況で、「頭が真っ白になった」とおっしゃってましたよね。

 

玉鷲 きのうは本当に、最初立ち合いで手をつく前に、頭がパンクした感じでした。だから呼吸も合わず、相撲の内容を考えていたのもおかしくなった感じで、もう一回手をつく前に一から考えました。自分はまず左はずで右を押して、のど輪で攻めるんだ。あっそうだそうだって、手をつくところで思い直して。もう頭がパンクしたような、本当におかしくなってました。

大越 そして今日の土俵はどうだったんでしょうか?

 

玉鷲 今日はですね、なんかあの…、やっぱり奥さんが子供を生んでくれたので、相撲の緊張が少しはとれました…。

 

副島 私は今日国技館に取材に伺っていたんですけど、今日の国技館の空気感はすごかったですよね。玉鷲関への歓声がすごかったんです。いかがでしたか、土俵の上に立ってあの歓声を受けた時は。

 

玉鷲 最高ですね。あの感じはやっぱり、何とも言えない場所ですね。

 

大越 賜杯は重かったですか。

 

 

玉鷲 重かったですね。

 

大越 師匠の片男波親方にはどんな言葉をかけられていたんですか。

 

玉鷲 「相手の相撲より、自分の相撲をしっかりとりなさい」と言われました。いつも言われていることなんです。自分は相手のことを考えすぎて、はたきを食らって負けたりすることが多いので。

ホテルマンになりたかった?

 

副島 そんな玉鷲関がどのような力士なのかご紹介しましょう。プロフィールから見てみます。玉鷲関は年齢が34歳。モンゴルのウランバートルのご出身です。日本に来たのは19歳の時。そして初土俵を踏むわけですが、そのときのことは覚えてらっしゃいますか?

 

玉鷲 あまり覚えてないですね。

 

大越 当時の貴重な映像を見てみると、やはりまだ体は今よりも小さいですし、四つに組んでらっしゃるんですね、今の得意の突き押しではなくて。しかしこの取組は負けてしまった。

 

玉鷲 たしか相手も外国出身の力士で、強かったのは覚えてますね。

 

平成20年に十両に昇進

大越 相撲の世界で、19歳で来日して初土俵というのは、割と遅い方じゃないかと思うんですが、それまでモンゴルでは何をしてらっしゃったんですか。

 

玉鷲 大学に行ってました。

 

大越 そこでは何を主に勉強してたんですか。

 

玉鷲 あの…、ホテルマンになりたかったんです。ホテルマンになったら、いろんな人と会えるなと思って、それが楽しそうだなって。人を見てるだけでも楽しそうでしたし。あとは昔から、物を畳むのが好きだったんですよね。ホテルだと、布団とかベッドのシーツとかきれいに畳むじゃないですか。あとテーブルのセッティングとか、きれいにやるのがすごいなと思って。

 

大越 ちょっと意外な一面ですね。

 

玉鷲 だから今も、巡業中のホテルでは、いろいろ見て「あっ、このホテルここが駄目だな、ここはいいな」とか、思いながらやってます(笑)

 

副島 でも相撲をやりたいということで日本にいらっしゃったわけですけど、ホテルマン志望から、どうして力士になろうと思われたんですか。

 

玉鷲 自分のお姉さんが、当時日本の大学に留学していまして、自分もちょっと考えてみたんです。日本に行ってみようか、せっかくこんな大きな体があるんだからと。でもそんなに深く考えていなくて、まず4年間頑張って、ダメだったら次の人生を歩もうかと思ってましたね。

 

大越 それなら今日の優勝をお姉さまも絶対喜んでらっしゃいますよね。

 

玉鷲 そうですね。喜んでくれました。

休まない、そして女子力が高い関取

大越 実は玉鷲関は、34歳のこの年齢まで、初土俵から15年間で一度も休んだことがないんですよね。初土俵から番付を上げて、幕内になってからずいぶん長いですよね。時には十両に落ちたり行ったり来たりがありましたけれども、その中で一度も休まなかったのは、ほんとうにすごい事ですよね。つまり、それほどの長い間、けがをしないっていう事にもなりますよね。

 

玉鷲 それはやっぱり師匠(片男波親方)が教えてくれたことですね。師匠が一番おっしゃることは、常に同じ事をやることです。毎日毎日同じことをやる。それは厳しいし、きついけど、毎日やればケガする事がないと言われています。

 

大越 実は、これまでのNHKの取材映像の中には玉鷲関の意外な一面が映っていて、これも相撲にひょっとしたらつながってるかもしれないんですが。

 

副島 先程、ものを畳んだりお部屋の整理整頓も好きだということをおっしゃってましたけれども、玉鷲関、すごく手先も器用なんですよね。編み物、裁縫、飾り物の細工を作ったり…。

 

実は裁縫が得意

副島 なんというか、「女子力が高い」ですよね。さらに時にはクッキーも作られたり。これは周りの方々に配られたんですか。

 

自作のクッキーをふるまうことも

玉鷲 いや、これは奥さんと子供に食べてもらいました。

 

大越 それはいいお父さんですね!本当に玉鷲関は、話しているとすごく優しくてチャーミングです。

横綱・白鵬からの初勝利

大越 遅咲きと言われてきた玉鷲関の今場所を振り返った時に、一番のハイライトといえば、横綱・白鵬関との一番でしょう。相手に責められながら土俵際でこらえ、逆転しました。この一番が、横綱・白鵬関に初めて勝った一番だったんですよね。

 

玉鷲 はい、ここまで長かったですね。

 

大越 玉鷲関からしたら、相手はいつもその背中を追いかけていた大横綱ですよね。そうしたこともあったのか、支度部屋にあるカメラには、玉鷲関の付け人の方が、この取組を見て泣いている姿が映像に残っていましたよ。きょう支度部屋に帰ったあとも、涙涙で、やはり付け人の方々も涙を流していらっしゃいましたね。

 

玉鷲 そうですね、みんなすぐ泣くんですよ(笑)。

 

副島 どれだけ周りの方からも玉鷲関が愛されているか分かりますよね。そして、誰よりも優勝を喜んでいるであろう、こちらの方たちからメッセージを頂いています。玉鷲関のご両親です。

 

お父さん 言葉に表せないくらい気持ちが高まりました。

お母さん とてもうれしくて、気持ちが高まって心臓がバクバクしました。あと、子供が多いことはいいことですね。家族を大事にして健康でいてくださいね。

 

 

大越 お父様お母様のメッセージをご覧になって、どう思いましたか。

 

玉鷲 いやあ、うれしいです。いいですね。

大関取りの声にも、楽しく相撲を

大越 今場所は関脇で13番勝ちましたから、次は当然「大関取り」ということが、周りからも期待されると思います。ご自身はどう感じてらっしゃいますか。

 

 

玉鷲 まあ若干はその気持ちはありますけど、それよりも楽しく相撲を取りたいですね。やっぱり楽しむことが結果的に、勝ちにつながっていくと思います。うん、楽しんで。土俵に上がったら、どうせ負けか勝ちかのどっちかなのでね。だったら楽しんでやったほうがいいです。

 

大越 そのお言葉、とても深いですよね。ここまで優勝した玉鷲関にお話を伺いました。お疲れのところ、そして生まれたばかりのお子様に早く会いたいところ、お越しいただきありがとうございました!

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