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特集 市川美余さんが解説!日本代表の中部電力が挑むカーリング女子世界選手権2022

カーリング 2022年3月18日(金) 午後7:15

2022年2月に開催された北京オリンピックで女子日本代表のロコ・ソラーレが銀メダルを獲得し、注目が高まっているカーリング。3月19日からは女子の世界選手権がカナダで開催されます。今回の世界選手権の注目ポイントは、どんなところにあるのか?また、日本代表の中部電力は、どんな戦いを見せてくれそうなのか。元・中部電力の選手として日本選手権を4連覇し、現在は解説者として活躍する市川美余さんに見どころを聞きました。

試験的に導入される新ルールへの対応に注目

2021年2月の日本選手権での中部電力と両角友佑コーチ

 

──世界選手権で注目すべきポイントがあれば教えてください。

 

今回の世界選手権では「ノーティックルール」が試験的に導入されるので、このルールに適応できるかどうかがポイントですね。「ノーティックルール」というのは、各エンドで両チーム合わせて5投目まではセンターラインにある石をずらしてはいけないというルールです。

 

カーリングは基本的に後攻が有利なスポーツですが「ノーティックルール」が適用されることで、先攻と後攻の優劣の差が縮まります。点差が離れていても試合の後半で追いつくチャンスができるようになるので、本当に最後まで勝敗が分からない試合展開となり、視聴者の方は最後まで、よりゲームを楽しめるようになると思います。

 

サードの中嶋選手。以前はスキップも務めていた

 

一方で、選手の立場からすると、そのルールも踏まえて戦略を立てなければいけません。後攻であればセンターガードのダブルテイクアウト(相手のストーン2個を同時にはじき出す)を決めたり、先攻であれば、センターラインの裏にナンバーワンストーン(ハウスの中心に最も近い位置にストーンを置くこと)を先に作っておく必要が出てきたり、ということになります。

 

チームによって戦略はさまざまで、これからいろいろ試すと思いますが、このルール変更にどれだけ柔軟に対応できるかが、今回の大会の重要なポイントになると思います。

 

また、今回の世界選手権はアリーナ会場で行われます。国内大会の会場と比べて規模が大きく、天井が高い上にリンクの周りを囲むように観客席があるため、氷の変化が大きくなります。加えて、視界も広く普段と見える世界が変わるので、その環境に、いち早く順応できるかも重要なポイントになってくると思います。

日本の決勝トーナメント進出の可能性は?

決勝トーナメントに進出できるのは、予選に出場する13チームのうち上位6チームです。トップ争いを繰り広げるであろう、カナダ、スイス、スウェーデン、韓国の4チームに加えてスコットランド、そして、日本という形で上位6チームに入りたいところです。そのためには、チームとして実力があるドイツや、大会出場の常連、デンマークに勝てるかがポイントになりそうです。

 

──日本のライバルは、どんなチーム(メンバー)で挑んでくるのでしょうか?

 

カナダのスキップ、ケリー・エイナーソン選手(一番左)と、サードのバル・スウィーティング選手(左から2番目)

 

カナダは、今シーズンの各大会で何度も優勝していたにも関わらず、北京オリンピックの代表選考では負けてしまった、というチームが出てきます。オリンピックの時とは、違うチームですが、優勝候補の筆頭だと思います。注目は、サードのバル・スウィーティング選手ですね。長年、スキップをやっていましたが、今はサードを担当していて、個人的に興味深いです。プレースタイルも、バシバシ決めてくるタイプなので、現在のスキップのケリー・エイナーソン選手と一緒に注目しておくと、よりカーリングの面白さが感じられるのではないかと思います。

 

スウェーデンは北京オリンピック出場チームがそのまま参戦する

 

スイス、スウェーデン、韓国、デンマークは、北京オリンピックの代表チームで、この4チームは強敵と言えます。イタリア、トルコ、ドイツも実力のあるスキップがいますので、日本にとっては、どの試合も強敵ばかりになると思います。

トルコの戦いぶりに注目

また、去年12月の北京オリンピック最終予選で、上位の3チームだけに勝ったトルコが、今回どのような試合をしてくるかも楽しみにしています(※)。もちろん、氷が変わるので戦い方がまったく同じというわけではないと思いますが、前回のようにトルコがスーパーショットを何度も決めてくるようなことがあれば面白いのではないでしょうか。

 

(※2021年12月に開催された北京オリンピック最終予選で、トルコは3勝5敗で敗退し、北京オリンピックに出場できなかったが、その3勝は最終的にオリンピック出場を決めた上位3チーム、イギリス、韓国、日本からの勝利だった)

 

──日本代表の中部電力には、どんな戦いを期待しますか?

 

中部電力には「日本のチームはロコ・ソラーレだけじゃないよ!」というところを見せてくれることを期待したいです。

 

 

去年12月の代表選考会では、松村千秋選手が北京オリンピックのミックスダブルス世界最終予選に出場するために不在で、代わりに、鈴木みのり選手が出場して優勝しました。いつもとは違う4人での戦いにはなりましたが、その4人でも十分に戦えたという点では、チームの収穫は大きかったと思います。

 

今回の世界選手権でも、松村選手は基本的にリザーブに入り、代表選考会の優勝メンバー中心で大会に臨むので、どこまで進化した戦いぶりを見せてくれるか楽しみにしたいと思います。世界の大舞台での経験が決して多くはない比較的若いチームで、作戦面で少し迷いがあるように感じる場面もありますが、タイムアウトを取るタイミングなどをうまく活用できれば、勝ち進めるのではないでしょうか。

 

また、カーリングは3時間という長い試合が連日続きますし、選手の会話も聞こえてくるので、選手たちのパーソナリティの部分が日を追うごとにだんだん見えてくると思います。試合をご覧になる皆さんも、ロコ・ソラーレとのチームの色の違いが感じられるようになり、魅力も見えてくると思うので、そこにも注目して楽しんでもらえるといいのではないかと思います。

 

市川美余(いちかわ・みよ)

長野県軽井沢町出身、1989年生まれ。

7歳からカーリングをはじめ、2005年の日本ジュニアカーリング選手権で優勝。高校卒業後の2008年に中部電力に入社し、カーリング部に所属。2011〜2014年、日本カーリング選手権4連覇。

日本カーリング界の人気を支えるも2014年に引退し、現在は解説者として活躍中。カーリングのルールを解説した『まんがでわかる カーリングの見方!!』の監修なども行う。

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