特集 新小結 豊昇龍 横綱という夢がまた一歩近くなった 大相撲春場所を前に

元横綱朝青龍のおいの豊昇龍が、3月13日に初日を迎える春場所で、新小結に昇進しました。
叔父と同じ横綱になるという夢にまた一歩近づいた豊昇龍に、大相撲中継でおなじみの吉田賢アナウンサーがインタビューしました。
吉田 賢 アナウンサー
師匠(元旭豊・立浪親方)の番付と並び、信じられない気持ち
春場所の番付表のしこ名を指さす豊昇龍(右)と師匠の立浪親方
Q 春場所は初めての三役に昇進して迎えます。小結に上がるというのはどういう気持ちですか。
信じられないですね。
Q これまでの、十両に上がったときや、幕内に上がったときとは違ううれしさだと思いますがどうでしょうか。
師匠(元小結旭豊の立浪親方)の番付まで来られたのでうれしいですし、これまでなかなか三役に上がれなかったのでうれしいです。
Q 三役というのはどういうイメージですか。
イメージというか、横綱という自分の夢に、また一歩近くなったなという感じです。
豊昇龍(左)が下手投げで碧山を破り11勝目(初場所千秋楽)
Q 初場所の相撲を振り返るとどうですか。
前半でちょっとバタバタしたけれど(6日目までは3勝3敗)、後半は落ち着いて自分の相撲を取り切ったんで、よかったなと思います。
「手を先についたら負け」大関正代戦で顔から土俵に落ちて同体に
Q 私の印象に残っているのは、14日目の正代戦です。投げの打ち合いで顔から土俵に落ちて同体となり、取り直しで勝った相撲です。
先に手をついてしまえば、体が同時に落ちていても、先に落ちたことになってしまうので、手は絶対につかないと思って、顔から落ちました。
大関正代戦で豊昇龍(右)は顔から落ちて同体 取り直しで白星を手にした(初場所14日目)
Q 相撲の世界では「顔から落ちろ」と言われます。それでもなかなかできないのですが、あのときはどうでした。手を出しそうにならなかったですか?
自分で手を上に引き上げましたね。
Q 負けたくないという気持ちが、関取はとても強いんだなと感じましたね。
負けたくないという気持ちもありますし、勝っても勝たなくても、自分がやらなくてはならないことは精いっぱいやるということです。
Q 確かに手をついて負けたら、後悔が残りますものね。
そうですね。
取り直しの一番で豊昇龍が正代を破る。額からは血が流れる(初場所14日目)
Q 投げの打ち合いになって、ぐっと土俵が近づいてくるときに、手を引っ込めて顔からいくというのは、怖さはなかったですか。
怖さはなかったというか、手を使わないで落ちるということはずっと教えられてきました。手をついたら負けだから、絶対についちゃいけないということをです。勝負が終わっていないのに手をつくというのは、気持ちが弱いんじゃないかと思うので。
Q 顔から突っ込んでいって顔を擦りむくというのも久しぶりに見ましたよ。 思っていてもなかなかできないですからね。あそこに関取の強さが出たなと思って。そして千秋楽に碧山関に勝って11勝を挙げました。
前の日の14日目の夜に叔父さん(元横綱朝青龍)から電話があったんですよ。顔から落ちたことを褒めてくれたんですけれど、うれしかったです。そして「あした(千秋楽)も勝ってこの場所をいい成績で終わらせろ」と言われました。
おじの元横綱朝青龍(2021年九州場所12日目)
Q あの厳しい叔父さんが顔からいったことを褒めてくれた。それでは気分よく迎えた千秋楽だったんですね。
どうすれば叔父・朝青龍のようなオーラが出せるのか
Q さて、関取はオフのときなどは何をしているんですか。 気分転換などは。
まあゆっくりしていますよ。映画を見るのが好きなんです。相撲の動画もいつも見ています。
Q 相撲の動画は勉強になりますか。
勉強ではなくて考え方ですね。この取り口は私もできるんじゃないか、とか考えて。
土俵入りする横綱朝青龍(2010年初場所)
Q 叔父さんの相撲は見ますか。
よく見ますね。どうやったらこんなに圧力の強い相撲が取れるのかと思いますね。取組の前からオーラが出ているじゃないですか。どうやってそのオーラを出すのか。私としては、まだまだ全然先の話ですけれどね。
Q 実況していても、負ける気がしなかったですね。実際になかなか負けなかったんだけれども。
私には、まだまだだなあと思うんですよね。
自分の絶対的な形を作りたい
Q 夢に向かっては、もっともっと圧力を出すということですか。
そうですね。負けない相撲。これが私の負けない相撲だっていうのを見つけたいですね。
Q この形になったら絶対負けないという絶対的な形を作るってことでしょうか。
そういう相撲取りになりたいんです。そのために毎日毎日やっているんですけれども、まだまだその絶対という体勢ができていないんで。もっと頑張って。
Q 新三役で迎える春場所の目標を聞かせてください。
この前叔父さんと話をしたんですが「これからだぞ」って言われました。
Q ここからが大変だと。
そうですね。 頑張れと言ってくれました。自分の相撲を取り切って、ケガがないように頑張りたいなと思います。
相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から