特集 新関脇の若隆景と幕内2場所目の若元春 大相撲春場所に兄弟で挑む

荒汐部屋に所属する大波3兄弟のうち、3男の若隆景(大波渥)が春場所新関脇に昇進し、初場所に新入幕で9勝を挙げた2男の若元春(大波港)は番付を6つ上げて西前頭9枚目となりました。
吉田 賢 アナウンサー
春場所注目の2人に大相撲中継でおなじみの吉田アナウンサーがインタビューしました。
若隆景 体を大きくして当たり負けしないように
2月28日 新関脇に昇進し会見する若隆景(左)と荒汐親方
Q 初めて関脇に昇進しましたが、新小結のとき(去年名古屋場所)とは違いますか。
再び三役に戻って、ここで勝ち越せるようにという意識ですね。
Q 関脇というと、この上は大関です。
そういう意識は特にないですね。前回小結に上がったときに大負けしちゃって(5勝10敗)、今は春場所でしっかりやろうと思っています。
2021年九州場所千秋楽 若隆景(左)が押し出しで翔猿を破り8勝目
Q 去年1年は、負け越したのが新小結だった名古屋場所だけで、ほかの場所は全部勝ち越しています。やはり力をつけてきていますね。
三役から落ちてからも幕内上位で勝ち越しを続けて、三役に戻ったということは、徐々に力もついているのかなと思います。
Q 初場所は、いきなり4連敗のスタートでした。上位との対戦が続いたせいですが、このあたりはどうでしたか。
横綱大関戦が続いたので、思い切っていい相撲を取ろうと思ったんですけれども、4連敗という結果でした。けれど気を落とすことはなく、一日一番しっかり相撲に集中してやった結果として勝ち越せたのかなと思います。
初場所2日目 若隆景(奥)は照ノ富士に小手投げで敗れる
Q 今後は上位戦が課題ですね。
そうですね、そこで、1つでも2つでも星が挙げられたら、また結果ももう少し変わってくるかなと自分でも思います。
Q そのためには何が必要なのでしょうか。
まだまだ体が小さいので、もう一回り体を大きくして、当たり負けしないようにしていきたいと思います。
Q 体は強くなってきているでしょう。
強くなってるかは分からないですけれど、少しずつ大きくなってきてはいると思います。
兄の活躍は刺激になる
Q お兄さんの若元春関が初場所に新入幕を果たして9勝しましたね。
刺激になりますし、また自分も頑張ろうという気持ちになりましたね。
幼稚園時代の2人 若元春(左:大波港<年長>)と若隆景(右:大波渥<年中>)
Q 子どものころの若元春関は、どんなお兄さんだったんですか。
どんな……。難しいですね。よくけんかをしていたと思います。
Q そうですよね。いちばん上のお兄さん(西幕下13枚目若隆元(大波渡))とはちょっと年が離れているので(三歳違い)、いちばんけんかをしたのが若元春関(一歳違い)ということですね。
けんかばっかりです。
Q 相撲は子どものころはどうだったのですか。
若元春関は小さいころから体が大きくて、相撲の成績もよかったですね。
Q 関取は大きくはなかったんですね。
かなりちっちゃかったと思います。
Q それでは、けんかをしてもかなわなかったでしょう。
まあまあ、そうですかね。
Q その言い方はそうでもないな(笑)。 相撲は分からないけども、けんかとしては互角だったと。
いやいやいや、そんなことはないですよ(笑)。
目標だった祖父の小結を超えて
Q 新関脇になると、おじいさん(元若葉山)の小結を抜くわけですけれどもどうですか。
祖父の小結を一つの目標にやってきたので、超えられるというのはうれしい気持ちですね。
三兄弟の祖父 若葉山(1947年6月6日撮影)
Q おじいさんはどんな存在なんですか。
物心がついたときから、祖父はお相撲さんで、小結までいって、親方になった、と聞いていたので、目標と言うかそういう感じでしたね。
Q 地元福島には大波三兄弟の後援会もできたと聞きました。
はい。励みになりますね。
Q あらためて春場所の抱負を聞かせてください。
勝ち越しを目指してしっかりと体の準備をして、いつもどおりの相撲が取れるように頑張りたいと思います。
若元春 初場所は自分の力が発揮できた
2021年12月 初場所での新入幕が発表され、会見で笑顔を見せる若元春
Q 初場所前に話を聞いたとき、「今は8割が不安だ」と言っていましたが、9勝しましたね。
よく勝たせていただいて。
Q 勝たせて「いただいた」わけではないでしょう(笑)。
15日間は厳しい戦いだったですね。自分の力が最大限発揮できたから成績を残せたのかなと思います。春場所は番付が上がって上の人とも当たるので、まだ不安ですけれどもね。
初場所初日 若元春(左)が寄り切りで一山本を破る
Q 力を出し切れば通用するわけですよね。
出し切ってギリギリですよね。そうでなければまるで相手にならないと思います。
Q 出し切れたというのは気持ちの面が大きいのでしょうか。
多分そうなんだと思います。あまり大きなこと言うと、春場所でこけたときに恥ずかしいですね。
弟・若隆景には負けたくない
若元春は祖父の化粧まわしを再現した獅子舞をつけて土俵入り
Q 初場所では、おじいさんのものを再現したという化粧まわしを土俵入りでつけていましたね。実家のちゃんこ屋さんに飾ってあるおじいさんの化粧まわしへの思いを、聞かせてもらえますか。
あこがれなんだろうな、やっぱり。関取衆というのはすごい、というイメージがあるのですが、それは化粧まわしのイメージだったんです。我が家では本物を間近で見られたので、これを将来締めて、と想像していた。子どもが父親の背広がかっこいい、と思うような気持ちなんでしょうかね。
Q 若隆景関にまた近づいてきましたね。どうですか。
そんな大層なことはないですけれども、負けたくないです。
幼稚園時代の2人 若元春(左:大波港<年長>)と若隆景(右:大波渥<年中>)
Q 子どものころの三兄弟はどうだったんですか。
皆お相撲が好きだったんで、基本的に相撲を中心に動いてきました。
Q 小学校時代の若隆景関は、どんな弟だったんですか。
よくけんかしましたね。
Q どんなことでけんかするのですか。
いや、しょうもないことですよ。 大した内容はないです。
Q 若隆景関に聞くと、子どものころから若元春関は体が大きかったというのですが、けんかすると若元春関が勝ったんですか。
勝つ負けるはなかったですよ。最後までけんかするということはなかったですからね。
Q 相手にならなかった。
そんなこと言ったら渥(若隆景)が何て言うか(笑)。 まあ当たり障りなくいきましょう。
3兄弟で切磋琢磨してきた
(左から)若隆元、若隆景、若元春(2021年)
Q 改めて聞きますが、同じ部屋に三兄弟がいるというのはどうですか。
何だろう。まあお互いに、切磋琢磨(せっさたくま)じゃないですけれども、負けたくないいちばんの相手が近くにいるので、稽古場でもやっぱり力が入りますよね。そういう意味では、でかい存在なのかなと思います。
Q 毛利三兄弟の名前を四股名にもらっていますが、元春は2男の吉川元春から来ていますね。吉川元春というのは大変な猛将として知られているんです。「鬼吉川」と言われて。その名前はどうですか。
どうなんですかね。あんまり似てるとは思わないですけれど。私は鬼じゃないですね。でもあやかれたらいいなと思いますね。
Q ことし1年の目標を聞かせてください。
あまり目標を立てるのは得意じゃなくて。 なるべくいい成績を残す、ということは思っていますけれどもね。
Q そういう意味では春場所は大事ですね。
やはり春場所が勝負になってくると思います。 ここで負けなければ、もう負けることはないと思いますので。
Q ポイントはどこでしょうかね。立ち合いとかまわしを引くとか。
やはり前に出ていかないと、まわしを引いても勝てないんだなと、初場所で思ったので、前に出ることじゃないですかね。
Q 前に出さえすれば、左四つといういい形を持っているわけだから、そこをいかに磨いていくかでしょうね。
出足はやはり磨きたいですね。
Q まさに鬼吉川に。
あやかりたいです。はい。
相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から