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特集 北京オリンピック フィギュアスケート日本代表 羽生結弦、宇野昌磨、鍵山優真の3選手の魅力は?メダル争いのカギは?本田武史さんが語る

フィギュアスケート オリンピック 2022年1月28日(金) 午前11:15

北京オリンピックのフィギュアスケート男子シングルに出場する日本代表の羽生結弦、宇野昌磨、鍵山優真の3選手の魅力は、どんなところにあるのか?また、北京大会での注目ポイント、日本の3選手のライバルについて、解説者の本田武史さんに聞きました!

 

オリンピック3連覇がかかる王者 羽生結弦選手

2021年の全日本選手権フリー 演技する羽生選手

 

――ソチ大会、ピョンチャン大会とオリンピック2連覇中の羽生結弦選手。“絶対王者”は、どんな選手なのでしょうか?

 

羽生選手は、トータルバランスに優れた選手ですね。技術や表現力はもちろん、大舞台で実力を発揮できる精神力をはじめとするメンタルの強さ、大事な試合の日に合わせる能力などが誰よりも高いと思います。

 

2021年の全日本選手権 演技後に拳を突き上げる羽生選手

 

――総合力が高い羽生選手ですが、魅力を1つあげるとしたらどこになるでしょうか?

 

あえて魅力を1つあげるならば「完璧に滑り切る力」です。ベテラン選手でも、試合になると緊張などから音よりも早くなったり、失敗して逆に遅れてしまったりすることが多いのですが、彼は音にピタリと当てた滑りができるのでプログラムを完璧に滑り切ることができる力があります。だからこそ、オリンピック2連覇も実現できたと思いますね。

“魅せる”滑りが魅力 宇野昌磨選手

2021年の全日本選手権フリー 演技する宇野選手

 

――宇野昌磨選手はピョンチャンオリンピックで銀メダル。どんなところが特徴でしょうか?

 

宇野選手は、曲に対する音や間の取り方が抜群にうまく「魅せる滑り」をするのが特長です。例えば、ワンテンポ遅れて動き出したり、彼独自のタイミングでの手の出し方があったりと、見ている人をひきつける表現力は素晴らしいものがあります。

 

宇野選手のクリムキンイーグル

 

また、彼の得意技として知られているのが「クリムキンイーグル」です。上半身を大きく倒してつま先を外側に向けた状態で滑る高難易度の技で、披露すると会場が沸く、宇野選手の代名詞的な技になっています。さらに、表現力が高いジャンプの技術力も加わっているのが、彼のすごいところ。今シーズンは4回転ジャンプを5本入れるという高難度のプログラムにも挑戦しています。

恐怖心を感じさせない勢いのある技 鍵山優真選手

2021年の全日本選手権フリー 演技する鍵山選手

 

――オリンピック初出場となる鍵山優真選手について教えてください。

 

鍵山選手は2020年にシニアデビューしたばかりですが、1年目から早くも世界選手権の表彰台に上がり、銀メダルを獲得。さらに世界で唯一、今シーズンのグランプリシリーズで2戦連続優勝、世界からの評価も、注目度も高い選手ですね。

 

鍵山選手のジャンプ

 

持ち味はスピードを生かした高さのあるジャンプです。4回転は恐怖心から、スピードを抑えながら跳ぶ選手が多いですが、トップスピードのまま、跳びあがって、高さも出せるのが彼の強み。回転の際もスピードを落とすことなく、美しい放物線を描くことができるので、しっかり回転を止めて着氷できます。ジャッジからも高評価で、そういった技の部分での加点を多くもらえる選手だと思います。

3連覇に挑む羽生、金を狙う宇野、成長著しい鍵山で挑む

2021年の全日本選手権の表彰式 北京オリンピックの日本代表に選ばれた3人

 

――それぞれに強みや魅力をもっている3選手。メダル獲得の可能性も気になります。当日の試合を左右する3選手の現在の調子についてはどのように見られていますか?

 

今回の3選手は全く違う色の個性を持っていますが、全員調子が良く、北京オリンピックに向けて準備が整っていると感じています。全員にメダル獲得のチャンスがあるのではないでしょうか。

 

2021年の全日本選手権にて演技する鍵山選手

 

鍵山選手は、ジュニアの頃は大きな大会になるとジャンプの失敗が多かったのですが、現在はジャンプの成功の確率も上がっており、海外試合での成績を残すことによって安定した演技ができるようになってきた印象です。とくに今シーズン、元世界女王の浅田真央さんを担当した振り付け師のローリー・ニコルさんに師事してからのプログラムが彼にぴったりなんです。明るさと力強さのある彼らしいプログラムで、演技力にも磨きがかかっています。

 

練習中の宇野選手

 

宇野選手は、4回転を5本入れるというかなり体力を使うプログラムに挑戦していますが、それをこなすための毎日の練習量や内容、また本番での力の発揮具合を見ると今シーズンのプログラムを「完璧に滑り切る」という気持ちを強く感じます。精神面でも強くなっているようで、最近は「トップを目指したい」とはっきり言葉にするようになっており、その覚悟の現れとして4回転を5本入れるというプログラムにたどり着いたのではないかと思います。

 

2021年の全日本選手権の表彰式   笑顔の羽生選手

 

羽生選手は、去年11月のNHK杯の前に、右足関節じん帯の損傷で欠場し、12月末の全日本選手権が今シーズンの初戦となりました。怪我の回復具合や調子が心配でしたが、見事に優勝し、貫禄を見せつけてくれました。さらに、フリーのプログラムでは、4回転アクセルという前人未踏のジャンプまで。結果、成功はしなかったのですが「4回転アクセルを入れて北京オリンピックで3連覇を目指したい」とインタビューでも言っていたので、このジャンプが彼にとってのオリンピックのモチベーションであることは間違いありません。

最大のライバルは世界選手権3連覇中のネイサン・チェン

――ライバルになりそうな選手はいますか?

 

一番のライバルは、アメリカのネイサン・チェン選手です。僕たちスケートの先生(指導者)は「動画ではなく、静止画で撮影して綺麗なポジションでいなさい」とよく言います。これは、どの動きでも「静止画で撮ったときに美しいポジション=動いていても綺麗に見せられている」ということですが、チェン選手は、まさに静止画でも美しいポジションができている選手。技術も表現力も優れていて、ひとつひとつのポジションに無駄がありません。

 

2021年GPシリーズカナダにて チェン選手の演技

 

そして、さらに優れているのが、ジャンプ力とスケーティングです。質の高い4回転を複数跳べるということは、彼の持ち味でもありますし、安定感も抜群。長年バレエをやっていたということもあって、手の爪の先から足の先まで意識したポジションの美しさも素晴らしいです。

 

あとは同じくアメリカのビンセント・ジョウ選手。しっかりとジャンプを決められれば300点近い点数を出せる選手だと思います。

 

2021年GPシリーズNHK杯のエキシビションにて演技するジョウ選手

メダル争いの鍵を握るのは、4回転ジャンプの回数と個性

過去に例のない「4回転ジャンプの回数の勝負」になってくると思います。ショートプログラムからも2種類の4回転を入れてくる選手たちが多くいますし、フリーでは最低でも2本、多くて5本の4回転を跳ぶ選手が何人も出てきています。だからこそ4回転をしっかりと決めることがとても大事なのですが、そうなってくるとプログラムの個性や音の表現でオリジナル性を出し、存在をアピールできる選手が頭ひとつ抜き出る形になると思います。

 

個人戦に関しては、どの選手も4年に一度の大舞台ということで、練習してきたことやオリンピックに懸ける想いをすべて出し切ってほしいですね。そうすれば結果もついてくると思うので、まずは「自分の演技に集中する」ということが一番大事だと思います。

 

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