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特集 北京オリンピック フィギュアスケート アイスダンス日本代表 小松原カップルの魅力は? 振付師の宮本賢二さんが解説!

フィギュアスケート オリンピック 2022年1月28日(金) 午前11:00

北京オリンピックのフィギュアスケート、アイスダンスの日本代表は、去年12月の全日本選手権で優勝した小松原美里選手とアメリカ出身で夫の尊選手のカップルです。

 

フリーダンスでは、映画「SAYURI」の楽曲にのせて運命に翻弄されながらも力強く生きる主人公の女性の姿や、映画の中で象徴的に登場する日本の美しい水の情景を表現していきます。

 

初出場となるオリンピックで、どんな演技を見せてくれるのか?元アイスダンス選手で、現在は振付師として活躍する宮本賢二さんに、北京オリンピック・アイスダンスの見どころを聞きました。

ミスを修正し、五輪の舞台では最高の演技を期待

去年12月の全日本選手権、フリーダンスでの小松原美里・尊組

 

──去年12月の全日本選手権では、小松原美里選手と尊選手のカップルが4連覇。演技をご覧になって、どんなことを感じましたか?

 

練習の時から緊張感がありましたが、それ以上に強い意志が感じられた素晴らしい試合でした。ただ、100%の演技ではなかったように思います。リズムダンスをはじめ、小さなミスが少しあったので、北京オリンピックまでにミスを修正するのはもちろん、つなぎの部分や表現などをより繊細に仕上げて、オリンピックの舞台では最高の演技をしてくれると思っています。オリンピック初出場の喜びは、ひとしおでしょう。演技はもちろんですが、終わった後なども喜びが体全身から溢れ出る、見ている人みんなが感動するような演技をしてくれると確信しています。

オリンピック歴代最高順位を更新する可能性も

──小松原美里・尊組は世界の強豪を相手にどこまで戦えそうでしょうか?

 

最近は新型コロナウイルスの影響で、世界の強豪と同じ場所で試合が出来ない状態が続いていました。世界の中での、自分たちの立ち位置を確認できませんでしたが、去年11月のNHK杯で海外のトップ選手と同じ大会で滑ることによって、今どのくらいの位置にいるのかを確かめられ、手応えも感じていると思います。

 

去年11月のNHK杯では9組中7位という結果だった

 

一方で、同時に、自分たちが足りない部分も実感したでしょう。日本は世界と比べると、スピード感やダイナミックさなどが、まだ足りないように感じます。特にトップスケーターとの差を感じるのは、クリアなターンと足さばきです。その差を、選手たちは試合を通して肌で感じたと思います。

 

とはいえ、近年の日本のアイスダンスはレベルが上がってきています。点数を見ても、以前は世界と日本は大きな開きがありましたが、10点満点のうち、世界のトップが9点、10点のところを、6点、7点を取っているので、どんどんその差は縮まっています。

 

NHK杯や全日本選手権で気づいた課題を克服できれば、日本のオリンピック最高順位である15位(2006年トリノ大会での渡辺心、木戸章之組、18年ピョンチャン大会での村元哉中、クリス・リード組)を更新する可能性は十分あるのではないかと思っています。

世界のライバルたちの表現に注目

──北京オリンピックで注目のカップルを挙げてください。

 

まずはアメリカの2組、マディソン・ハベル選手とザカリー・ダナヒュー選手、そしてマディソン・チョーク選手とエバン・ベイツ選手のカップルです。マディソン・チョーク選手とエバン・ベイツ選手のカップルは、11月のNHK杯では少し失敗があり点数が伸び悩みましたが、それを修正し、世界感を完成した形で見られることを楽しみにしています。

 

アメリカのマディソン・チョーク、エバン・ベイツ組

 

そして、NHK杯でマディソン・チョーク、エバン・ベイツ組を上回って優勝した、ROC(ロシアオリンピック委員会)のビクトリヤ・シニツィナ選手とニキータ・カツァラポフ選手のカップルも見逃せません。

 

ROCのビクトリヤ・シニツィナ、ニキータ・カツァラポフ組

 

そして、もう1組、カナダのパイパー・ギレス選手とポール・ポワリエ選手のカップルで、独特の雰囲気の表現力に注目しています。

 

カナダのパイパー・ギレス、ポール・ポワリエ組

 

あとは、フランスのガブリエラ・パパダキス選手とギヨーム・シゼロン選手。もともと力があり表現力も高く、高得点を出すカップルですが、個人的には見ている人を「今のは何だったんだろう」と思わせて、後で「あの演技はああいう意味だったんだ!」と思わせる表現をする、特徴的なカップルだと感じています。また、スケーティング技術が非常に高いのもポイント。ギヨーム・シゼロン選手は膝と足首の動きがとてもやわらかく、スピードがあるので、彼の肩や首の動き、足の柔らかさに注目すると、アイスダンスのすごさが感じられると思います。たとえば、腕を伸ばす動作ひとつを見ても、少しトルネードしたりと動き方にも一工夫がある選手なので、その点もぜひ注目してみてください。

 

フランスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組

 

名前を挙げたカップルは、世界でも特にトップクラスの選手たちで、点差が1点、2点といった僅差で競り合っています。ほんの少しのミスで点数が変わってしまうので、本当に誰が優勝してもおかしくない。彼らがオリンピックに合わせてどのように仕上げてくるのか、非常に興味深いです。

リンクに上がって演技が始まる前の選手に注目

──視聴者が演技を見る時に楽しめるポイントがあれば教えてください。

 

日本代表の小松原カップルには大いに注目していただきたいです。小松原組の強みは、何と言っても「高難易度のリフトやスピン、息のあったステップ」。小松原美里選手を高く持ち上げる、大きくて大胆なリフトが魅力で、安定した演技を見せてくれます。また、後半のスピードが全然落ちないので、最後までスピード感があるのも特徴です。スピードの緩急のつけ具合も素晴らしいので、ぜひその点に注目して見てほしいです。

 

小松原美里・尊組はリフトに注目

 

また、オリンピックは世界のトップ選手の素晴らしい演技が見られる貴重な場でもあります。世界各国の様々な選手が緻密な計画を立てて演技をしますが、そのカップルたちが表現するストーリーを感じていただければと思います。そういうと少し難しく聞こえてしまうかもしれませんが、競技や勝敗などの先入観をあまり持たずに、演技の舞台のような気持ちで見ていただくと、アイスダンスがより豊かに感じられると思います。

 

もうひとつ、ぜひ注目していただきたいのが“演技が始まる前”。アイスダンスは氷に乗って名前が呼ばれる時から演技が始まっています。名前を呼ばれてリンクの中央に立つ時からストーリーに入り込んでおり、曲が流れる前の手の取り方からすでに雰囲気が出来上がっています。そんなところにも目を向けてみると、アイスダンスの演技の完成度の高さをより楽しめるのではないでしょうか。

 

──最後に、北京オリンピックのフィギュアスケート全体を通して注目しているポイントがあれば教えてください。

 

シングル、ペア、アイスダンスとフィギュアスケートには各種目がありますが、今回は団体戦にも、ぜひ注目してほしいです。日本のシングルはレベルが高く世界トップクラスなのは皆さんご存知かと思いますが、ペアの三浦璃来選手と木原龍一選手もグランプリシリーズのアメリカ大会で銀メダルを獲得しています。それに加えて、アイスダンスもレベルが上がっているので、それらの総合ポイントで競う団体戦もメダルをとれる位置にいるのではないかと思っています。ぜひ注目してみてください!

 

宮本賢二

フィギュアスケート振付師。元アイスダンス選手。
2010年バンクーバーオリンピックで銅メダルを獲得した髙橋大輔選手の振付けの他、羽生結弦選手や荒川静香さんのエキシビション、浅田舞・真央姉妹のペアプログラムの振付けなどを担当。

 

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