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特集 中日新打撃コーチ 中村紀洋の独自バッティング理論

野球 2021年12月16日(木) 午後8:30

今シーズン、セ・リーグで5位に終わった中日。今秋からは立浪新監督の下、新たなスタートを切った。チームの課題として、いの一番にあげたのは打率がリーグ最下位に沈んだ攻撃面だ。

 

その鍵を握るのが中村紀洋新打撃コーチ。いま独自のバッティング理論でチームを変えようとしている。

打撃コーチに中村コーチ

「1年間、打てないと言われましたけど必ずなんとかします」

 

 

立浪監督の就任会見で発したことばだ。

 

中日は今シーズン、投手陣はリーグトップの防御率を誇りながら、攻撃陣は安打数と打率でリーグ最下位、得点にいたっては12球団で最低と振るわなかった。誰が見ても明白なチームの弱点をどう克服するか、立浪監督がそのキーマンとして招へいしたのが中村紀洋コーチだ。

 

 

近鉄や中日で長距離打者として活躍し、中日では立浪監督とともに日本一に輝いた。海を渡って大リーグでもプレーした豊富な経験と、そのバッティング理論を立浪監督が高く評価しての起用だった。

中村紀洋コーチへの指令

中村紀洋打撃コーチの就任会見


立浪監督の要請に対し「ありがとうございます」と二つ返事で就任を快諾した中村コーチ。立浪監督からは、さっそくある指令が出されていた。

 

「石川昂弥を育ててほしい」

 

石川昂弥選手は、愛知・東邦高校から3球団競合の末ドラフト1位で中日に入団した2年目の有望株。

 

2019年12月 入団記者会見でポーズをとる石川昂弥選手

 

打球のスピードと飛距離が魅力で将来の4番候補と期待される逸材だ。1年目は14試合に出場し、ステップアップを期待された2年目の今シーズン、けがに苦しんだ。1軍出場はゼロ。打力向上が最大の課題のチームにとって、なんとしても育てたい選手だ。

指導法①『下半身2』で『腕8』!?

秋季練習で、中村コーチは自分が現役時代使っていたバットを手渡した。ふだん石川選手が使っているものより長く、簡単には使いこなせない代物だ。石川選手がバットを替えることはなかったが、中村コーチの狙いはバットを使わせることではなかった。石川選手の意識を変えさせたかったこと、そして期待の表れでもあった。

 

11月の秋季練習で言葉を交わす石川選手、立浪監督、中村コーチ(左から)

 

中村コーチがまず教えたのは『下半身2』で『腕8』の意識で打つということだった。石川選手も驚いたという。それもそのはず、野球経験者はだいたい、指導者から「バッティングは下半身が基本。下半身で打て」と教え込まれてきたからだ。

 

そしてその理論について、中村コーチに聞くと下半身の意識をしすぎることである弊害につながるという話を語ってくれた。

中村 紀洋 コーチ

下半身を意識すると手がおろそかになる。なかなかバットが出てこない。手を意識して速くバットを出せるように。

 

「手が出なかった」という失敗をさせたくない。そんな思いがにじみ出ていた。

②右手で打て!

中村コーチの理論は「腕の意識」だけにとどまらない。どっちの手でバットを操作するよう意識するのか。これも、セオリーでは右バッターはピッチャーに近い左手を意識するよう指導されるが、中村コーチの指示は逆の手なのだ。

 

 

右手だけで打つティーバッティングをさせる。ボールを捉えるまで最短距離でバットを振る感覚を身につけることが狙いだ。

中村 紀洋 コーチ

昔、若いときによく教えられたのは『左手で打て』と。僕は右手重視で打てば操作しやすいなというふうに思っていたのでそれを実践でやってもらってます。

 

これらの指導法には私も初めは耳を疑ったが、たしかに中村コーチの現役時代の映像を見返すと「そうだよね」とふに落ちた。

 

 

中村紀洋コーチの現役時代と言えば、構えたときにバットをぐるぐる動かし、腕をこねくり回したような豪快なスイングが特徴だ。「いかにも腕を使うことを重視している」ように見えるのだ。

 

何より23年の現役生活と、NPBで通算404号ホームランという「数字」が独自の打撃理論の証拠。もちろん、意識の問題で下半身を使わなくていいということではないと勝手に解釈をしているが、それにしてもこのセオリーとは真逆の指導法は、独特だが自身でこの理論を確立してきたのだ。

中日の打撃革命を!

効果はさっそく現れ始めている。

 

実際、石川選手も手応えを感じていて、その打球はナゴヤ球場のフェンスはおろか、その3倍ほどの防球ネットを越すなど、長距離バッターらしさが出てきている。

 

石川 昂弥 選手

ノリさんに教えてもらった形が身についてきているとは思っています。充実してやれていると思うのでいい練習ができていると思います。

 

中村 コーチ

ケガさえなければ、日本を代表する選手になれると思っているので、責任感を強く思いながら、指導させてもらっている。


期待の若手に、大きな期待を寄せ、白い歯をキラリと輝かせた。

 

このほかにも、選手会長の京田陽太選手など「中村紀洋塾」にはたくさんの選手が新しい理論を吸収しようとしている。中村コーチのメソッドが、石川選手を含めてすべての選手に当てはまり、来シーズン、打撃革命が起きることを心待ちにしている。

この記事を書いた人

竹内 啓貴 記者

竹内 啓貴 記者

平成27年NHK入局

横浜局ー沖縄局を経て、名古屋局で中日ドラゴンズを担当。小学校から大学まで野球を続けるも、社会人となって体重30キロ増で見る影もない。ちなみにポジションは投手でした・・・。

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