ストーリー相撲

北の富士勝昭が斬る 大相撲九州場所を前に

2021-11-09 午後 02:50

白鵬が引退 45回も優勝する力士はもう出てこないだろう

引退会見で心境を明らかにする元白鵬の間垣親方(10月1日、国技館大広間)

 

白鵬が引退した。彼の思い描いた横綱相撲とはとにかく勝つことだったようだ。若いころは理想の横綱像として双葉山関や大鵬関を目標としていたようだが、あるときから方向転換してしまった。みんなに愛される横綱になりたいとも語っていたが、45回も優勝する力士はもう出てこないだろう。

 

7月の名古屋場所で土俵入り

 

今の力士はそもそも稽古場からこの横綱に気持ちで向かっていく者がほとんどいなかった。

 

功罪いろいろと語られているが、白鵬がいなければ相撲界そのものが大変なことになっていたかもしれない時期は確かにあったと思う。

 

2010年の「第1回白鵬杯」

 

白鵬杯と冠した大会を毎年開催して、子供たちへの相撲普及という点では貢献度は高かったであろう。物議を醸した言動も少なくなかったが、公平に見たら功績の方が多かったのではないだろうか。

白鵬は指導者としてはいい腕を持っているのではないか

相撲の取り口も20代のころと晩年では随分と違う。いいときの立ち合いは左足から大きく踏み込んで絶好の位置の上手まわしを取っていた。あれは本当にすばらしかった。

 

白鵬が正代に張り手(名古屋場所14日目)

 

何だか大鵬さんが亡くなったあたりから相撲が乱れてきたような気がする。別に怖い存在がいなくなったからということではないだろうが、あの張り手やかち上げはいただけない。

 

昔は旭道山や貴闘力みたいに横綱にも平気で張りにいく気持ちの強い力士はいたが、今は横綱に張り手を見舞う力士はめったにいない。横綱も明らかに力量が上なのだから、あそこまでむきになって張ることはなかった。

 

2012年 角界入りを目指す石浦と握手する白鵬

 

白鵬はこれから間垣親方として後進の指導に当たるわけだが、指導者としてはいい腕を持っているのではないか。すでに自身がスカウトした石浦や炎鵬、北青鵬が関取として育っている。“軍資金”もたっぷり持っていることだし、この先、5年は名前が通じるので、いい人材もたくさん集まることだろう。

照ノ富士は立派 対抗できる存在が見当たらない

照ノ富士が引き締まった表情で賜盃を持つ(秋場所千秋楽)

 

照ノ富士の新横綱優勝は立派だった。ただ、終盤は若干、立ち合いに鋭さを欠いた。膝に“爆弾”を抱えていることだし、後半は疲れもあったのだろう。15日間を通して盤石な相撲を取るのは難しいが、この一人横綱に対抗できる存在が見当たらない。

 

照ノ富士の攻めを受ける正代(秋場所千秋楽)

 

正代、貴景勝の両大関は勝ち越すのすら大変なくらいだ。今のままでは優勝戦線に絡むこともかなわないだろう。正代は前に出るときも後ろに下がるときも爪先立って走り回っている。もっとかかとをつけてどっしりした相撲を取らないと。自分の流れになれば強いのだろうが、相撲取りは横綱、大関でなくてもみんなそうだ。

 

貴景勝が押し出しで宝富士を下す(秋場所12日目)

 

貴景勝も以前のような強い当たりができないでいる。首を負傷した影響があるのだろうが、だいぶ引く場面も目立ってきた。角番場所で3連敗から勝ち越した精神力は大したものだが、上を望めるかというと現状は厳しいと言わざるを得ない。

 

8勝がせいぜいで、大関同士の対戦もなく、横綱が東西にそろっていたら2人とも“討ち死に”していたかもしれない。そう考えると次の横綱は当分出そうにない。下手したら大関もいなくなってしまうかもしれない。

御嶽海は盛りを過ぎたかも 朝乃山の出場停止が痛い

御嶽海の幕内土俵入り(秋場所6日目)

 

御嶽海もあんなものだろう。もう盛りが過ぎたかもしれない。稽古をしなければ、力が落ちていくのも早い。

 

千秋楽のテレビ中継では支度部屋で優勝した照ノ富士と握手していた場面がたまたま映ってしまった。たまたま居合わせたから“大人の対応”を取っただけかもしれないが、妙にうれしそうな表情をしていた。直接対決で負けているし2桁白星を挙げることができなかったのだから、クソーと思うくらいでないと。この力士は本当に波が多すぎて、もう期待するのはやぼだ。

 

そうなると朝乃山の出場停止がつくづく痛い。復帰するのが来年の名古屋場所か。番付も三段目まで落ちるそうだ。

 

御嶽海を攻める朝乃山(夏場所10日目)

 

次に横綱になるとしたら朝乃山しかいないと思っていただけに残念で仕方がない。確かに飲みに行ってはいけない時期に飲みに行って虚偽の報告をしたのはよくないが、出場停止6場所はあまりにも厳しくはないだろうか。

 

酒の失敗は多かれ少なかれ、誰もがやっている。「今度、やったらだめだぞ」と大目に見るくらいの懐の深いところを見せても、世間がやいのやいのと騒ぐこともないだろう。現に私の周りからも「ちょっと厳しすぎるんじゃないの」という声をたくさんもらっている。朝乃山の早期復帰を望みたい。

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media 大相撲中継」から

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