特集 宇良 “業師” が力も加えて新境地を見せる! 大相撲秋場所

「技のレパートリーが1個、増えましたかね。うれしい」5日目の宇良の言葉だ。
相撲ファンにとって、宇良と言えば俊敏な身のこなしから繰り出す「居反り」に「たすき反り」、そして「足取り」。相撲の技術が必要な決まり手で土俵をわかせる“業師”として知られている。
2020年11月場所5日目 宇良が居反りで旭秀鵬を破る
ところが5日目に見せたのは、力強い大技だった。相手は前頭4枚目の大栄翔、強烈な突き押しが持ち味で三役経験もあり、ことし初場所を制した実力者だ。
宇良は立ち合い直後、大栄翔の突き押しを何度も受けたが、持ち味の体の柔らかさを生かしてしっかり残す。さらに大栄翔の体がのけぞった一瞬、背後を取って形勢逆転。
そして最後は何と体重が162キロある大栄翔を持ち上げ「送りつり出し」で白星を挙げた。幕内では、平成17年九州場所の横綱・朝青龍以来、およそ16年ぶりとなる決まり手だった。
再起目指す中、新しい宇良を
「力でも対抗できるようにしたい」
度重なるひざのケガから再起を目指す中、宇良が理想に掲げた相撲だ。幕内で番付を上げ、相手のレベルが上がる中、立ち合いの圧力も増し力強い相撲も随所に見せている。今場所は自己最高位(前頭4枚目)に迫る前頭6枚目にまで戻してきた。
その力はどこからくるのか。日々の稽古や筋力トレーニングに加えて、みずからに課した強化プランが「食トレ」だ。その方法も宇良らしく独自のアイデアにあふれている。
中でも個性的なのは、ファストフード店のハンバーガーとチキンナゲットを口にすることだ。たんぱく質を多く取るために食べていたチキンナゲット、8月は15個入りが期間限定で割り引きされて販売されていたということで
「何かあったらナゲットを食べていた」と力説。ふだんの食事から取れるタンパク質の量も毎日グラム単位で計算しているという。
体重も増量中
ことし3月の春場所前の体重は、入門した6年前よりおよそ40キロ重い、143キロに増やしていたが、今場所前はさらに体が大きくなり、147キロとなった。今後の体重の目標は「クオリティの高い150キロに持って行く」という。
場所前には「自信を持って、かつての立ち位置に戻ってきたと言っていい」と力強く語っていた宇良。今場所の序盤戦は2勝3敗とまずまずの結果。力強さを身につけた“業師”が中盤戦以降の土俵で力と技術を見せて大暴れしてくれることを期待している。
この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者
平成21年NHK入局 福岡県出身
長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。