特集 ”新横綱 照ノ富士の初日・・・” 大相撲秋場所

「不動心を心がけ、横綱の品格、力量の向上に努めます」伝達式の口上に自身の思いを込め、第73代横綱に昇進した照ノ富士。秋場所初日は、新横綱の一挙手一投足に注目が集まった。先月(8月)行われた明治神宮での奉納土俵入りは感染対策として一般の人に披露することはできず、秋場所初日のきょうが観客の前で行う初の土俵入り。
過去、大けがをした両ひざには保護をするための装具の上から、サポーターを身につけていた。それでも力強くしこを踏み、「不知火型(しらぬいがた)」独特の両手を左右に開いてのせり上がりを見せると館内からは大きな拍手が送られた。
秋場所前にNHKの取材を受けた照ノ富士は、様式美の観点からサポーターをつけての土俵入りに批判的な声があることを意識して次のように答えていた。
「膝に装具をつけての土俵入りを厳しく言う人もいたが、できたら自分も外してやりたい。少しでも理解してもらえたらありがたい」
そして、横綱昇進の口上で「品格」という言葉を含めた意味についても説明している。
「”品格”は人それぞれ考え方が違うと思うし、自分の生き方で証明していきたい」
サポーターをつけての横綱土俵入りに送られたおよそ5000人のひときわ大きな拍手は、両ひざの大けがや病気で苦しんだ日々を乗り越えて頂点に上り詰めた新横綱の姿を受け止め、たたえるものだったに違いない。
この土俵入りからおよそ2時間後。照ノ富士は今度は一人横綱として結びの土俵に立った。目の前で2人の大関が敗れ、国技館内は、なんとも言えないざわめきに包まれていたが、新横綱が土俵に上がると万雷の拍手で迎えられた。
まわしをがっちりとつかみ、相手の逸ノ城にまったく相撲を取らせない完勝で、横綱として初勝利をあげた。土俵下で見守った藤島審判長は「まさに横綱相撲」と絶賛した。
新横綱として土俵入りから、結びの一番を締める役割までまずは、初日の務めを果たした照ノ富士はこう話している。
「責任を持って土俵に上がらないといけないと思って。できることをやって頑張るしかないので、頑張ります」
相撲協会の看板である最高位の横綱は常に優勝を争うことが求められるだけでなく、横綱として現役を終えるまでその姿は注目され続ける。照ノ富士が伝達式で誓った思いを持ち続ければ、“ファンに愛される横綱になる”。そう実感できた初日だった。
この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者
平成14年NHK入局
さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目