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特集 吉村紗也香「3年越しの思いを胸に」カーリング女子 北京五輪日本代表決定戦

カーリング 2021年9月7日(火) 午後0:20

カーリング北京五輪を目指す日本代表の座をかけた大一番・日本代表決定戦が、北海道・稚内で始まる。出場するのは、前回五輪代表で去年の日本王者ロコ・ソラーレと、そのロコ・ソラーレを2月の日本選手権で破り代表決定戦進出を決めた北海道銀行だ。もちろん、五輪を目指すために絶対に負けられない戦いだが、北海道銀行のスキップ・吉村紗也香は、特別な思いを持って大会に臨もうとしている。

カーリング界“黄金世代”の戦い

吉村は、カーリング界では数多くのトップ選手を輩出し“黄金世代”と呼ばれる1991年度の生まれ。ロコ・ソラーレの藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖も同級生。特に、同じ北海道出身の藤澤は、スキップとして幼いころからしのぎを削ってきた長年のライバル。この日本代表決定戦は、“同級生対決”の側面も持っているのだ。もちろん特定のチームばかりを意識しているわけではない、と前置きした上で、吉村は同い年のライバルへの思いを語った。

 

吉村 紗也香 選手

ライバル関係でもありますし、同級生もいるチーム。やっぱりどちらも勝ちたいと思っているので。
(藤澤選手への)ライバル意識はそうですね、なくはないです。あります。負けず嫌いなので私も。藤澤選手はジュニア世代の時も私たち勝てなくて、同い年とはいえスキップとしてしっかり最後に決めてきたり、本当に強いなっていう印象があって。

 

普段は“クール”と評される吉村が「ライバル意識はある」と断言するところに、思いの強さがうかがえる。

ピョンチャンの空の下 同世代への思い

吉村が同級生へのライバル意識を一段と高めたのが、3年前のピョンチャンオリンピック。ロコ・ソラーレが出場し銅メダルを獲得した韓国での大会に、吉村は足を運んでいた。五輪に3度出場した、当時の北海道銀行スキップ・小笠原歩さんの勧めで、一観客として現地観戦に訪れたのだ。ジュニア年代で実績を残し将来を嘱望されながらそれまで五輪には手が届いていなかった吉村。ロコ・ソラーレの同級生たちが夢舞台で世界を相手に躍動する姿を、複雑な思いで見つめた。

 

ピョンチャンオリンピック(2018)で銅メダルをとったロコ・ソラーレ

吉村 紗也香 選手

見ていて、いろんな感情がありました。負けて悔しい思いだったりとか、同級生なので、なんか先を越されてしまったなという思いだったりとか、4年後は絶対に自分が立つんだっていう思いだとか。あとは純粋に日本を応援する気持ちとか、いろんな思いがありながら見ていた記憶があります。

 

その後、ピョンチャンで感じた悔しさもバネに、成長を続けた吉村。今年の日本選手権ではロコ・ソラーレを撃破し、前回は出られなかった五輪代表決定戦に進出。自らの手でオリンピックへの挑戦権をもぎとった。

世界の舞台での挫折を新たな力に

ただ、日本代表として出場した5月の世界選手権では、不安要素も露呈した。スキップとして初めて出場する大舞台。「緊張の中で、いつもと何か違う焦りや少しの不安があった」と言う言葉通り、結果は振るわず11位。特に大会序盤は守りに入るシーンも多く、波に乗れなかった。

吉村 紗也香 選手

ここぞという勝負どころで競り勝てなかったというところは、まだまだ自分たちの伸ばすポイントなのかなと感じました。途中まではすごくいい形が作れていたので、本当にキーとなるショットをしっかりと決めきることができれば、またひとつ勝ち星を重ねられたのかなっていうふうに思います。

 

それでもオリンピック代表をかけた一大決戦を前に、世界相手の真剣勝負という貴重な経験を積むことができたのは大きな収穫だ。世界選手権での宿題「勝負所でのショット精度」「不安な状態でのメンタルコントロール」、そして「大舞台へのピーキング」を4か月でしっかり鍛え直してきた。

 

吉村 紗也香 選手

最初の1試合目から自分たちの持っている力っていうものをしっかり出せるように、チームで力を合わせながら、ピークをしっかり持っていけるようにやっていきたいと思います。あとは本当にチームを信じて、自分を信じることと、成功イメージをいつも持ちながら自信を持って代表選考会に臨めたらなと思っています。

3年前に見たあの光景、オリンピックの光景、そこで自分たちが戦っているというのを想像して帰ってきたので、今度は自分たちがその舞台に立てるように、このチャンスをしっかりと掴みたいなと思っています。

 

ピョンチャンで目に焼き付けた光景と、胸に刻んだ悔しさ。臥薪嘗胆、3年越しの思いを胸に挑むライバル対決。もちろん、もう同級生には負けられない。

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