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特集 藤澤五月「世界の中で戦いたい」カーリング女子 北京五輪日本代表決定戦

カーリング 2021年9月7日(火) 午後0:00

「そだねー」で日本中を大フィーバーに巻き込んだピョンチャン五輪から3年。あのロコ・ソラーレが再びオリンピックを目指す。その最初の関門が、ライバル・北海道銀行との北京五輪日本代表決定戦(北海道稚内市)。この大会は、2月の日本選手権でロコ・ソラーレが連覇を逃したことで、開催が決まった。スキップ・藤澤五月に、まず半年前の日本選手権にさかのぼって話を聞いた。

藤澤五月、日本選手権決勝での涙のワケ

2月の日本選手権。前年優勝のロコ・ソラーレは、連覇すれば北京五輪を目指す日本代表に決まるはずだった。圧倒的な強さで予選・プレーオフを勝ち上がり、決勝進出。しかし、そこで北海道銀行に敗れてしまう。決勝で、突如ショットの精彩を欠いたスキップ・藤澤。終盤には試合中にも関わらず涙を見せる場面もあった。

 

2021年2月日本選手権での藤澤選手

藤澤 五月 選手

チーム全体としては本当にいい形で全体を通して戦えていたと思うんですけど、個人的な部分を言えば、私がその決勝に対する準備が少し足りてなかった。

試合中のトラブルもあって、少し困惑しながらやってしまっていたという部分があって、なんだろう、絶対勝ってやるっていう気持ちが少しあの試合では持てていなかった。

 

「試合中のトラブル」とは、決勝第4エンドのこと。北海道銀行スキップ・吉村のショットをスイープしていた近江谷が「動いているストーンにブラシを当ててしまった」と申し出、そのストーンが無効とされた。しかし、藤澤がスイープに備えようと後ろから近づいたことで、近江谷のプレーに影響を及ぼした可能性もあった。懸命なプレーの最中のことで実際何が起きたか今となってはわからないが、結局選手同士の話し合いでこのストーンは無効として取り除かれ、ロコ・ソラーレは2点を獲得した。ただ、当事者となった藤澤は、この事態を自分の中で整理しきれなかったという。藤澤はその後ショットの精度が上がらず、最終エンドでの逆転負けを喫した。

藤澤 五月 選手

(トラブルから)気持ちを切り替えることがちょっと私はあのときはできなくて、涙ぐんでしまった。

負けてよかったではないですけど、ああいう機会をもらえてそういう準備も必要なんだっていうのも改めて感じましたし、ああいう場面になってもやっぱりタフに試合を最後まで乗り切るっていう大切さもすごく学ぶいい機会になりました。

代表決定戦は「いい準備をしてきた方が勝つ」

技術、メンタル、試合の中で起こるあらゆることへの「準備」の大切さを痛感したという藤澤。代表決定戦に向けては、カナダで行われた世界最高峰・グランドスラム大会に出場したり、男子を含む国内チームと実戦を増やしたりする一方で、実戦の結果を踏まえた基礎練習に立ち戻る時間をしっかり設けるなど、メリハリをつけた調整を行ってきた。さらに国内での合宿で、今回の代表決定戦の形式「ベストオブファイブ」(最大5戦で先に3勝したチームの勝利)の練習試合を模擬的に行い、大会本番のメンタル状態を想定した取り組みも行ってきた。

 

藤澤 五月 選手

ベストオブファイブというのは、普通の日本選手権や世界選手権、オリンピックとは、本当にまた違う大会の雰囲気。同じチームと連続して戦うという部分で、そのチームの雰囲気、勢いっていうのも絶対関わってくると思いますし、次の試合に向けての準備の仕方や、チームのコンディション、雰囲気が、他の大会よりもすごく影響してくると思うので、そこは自分たちらしく最後まで戦えるように、みんなで話しながらやってきました。

「世界の舞台」への飢え

今回、2度目の五輪を目指す藤澤にそのモチベーションを聞くと、このような答えが返ってきた。

藤澤 五月 選手

やっぱり世界的なカーリングの大会にここ数年出られていないっていう部分もあって。このコロナだったり、日本選手権で負けてしまって(世界選手権に出られなかったりで)、世界の舞台で戦いたいという思いはすごく自分の中である。そういった意味では、やっぱりこの9月の大会(日本代表決定戦)をすごく大事にしています。

 

ロコ・ソラーレは、コロナ禍で最もあおりを受けたチームの一つだ。日本代表として出場予定だった2020年の世界選手権、パシフィックアジア選手権はともに中止。特に世界選手権は開催わずか2日前に中止が決まり、選手たちはやるせない思いを味わった。実に3年近く、日の丸をつけてプレーする機会から遠ざかっている。「世界の舞台で戦いたい」という思いは、日の丸の重みと誇りを知るからこその渇望だろう。だからこそ、日本代表が最も注目されるオリンピックの舞台には、やはり特別な思いを持っている。

 

藤澤 五月 選手

9月の代表決定戦で、ベストなパフォーマンスをできるように。カーリングはオリンピックじゃないとなかなかフィーチャーされないという部分もあると思うので、まずは皆さんにカーリングの面白さだったり、4年前のオリンピックでカーリングを見た方が「またカーリングやっているんだ、何か日本のレベルが上がっているね」というふうに思ってもらえれば、うれしいなと思います。その中でもしっかり自分たちのやりたいパフォーマンスを最後まで、5試合の中でできるようにしていきたいなと思っています。

 

涙も、コロナも乗り越えて。トレードマークの笑顔を取り戻す戦いが、間もなく始まる。

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