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わずか2年でメダリストを破った新星 視覚障害者柔道・瀬戸勇次郎

2019-11-26 午後 04:43

視覚障害者柔道の新星として活躍を期待されている、66kg級の瀬戸勇次郎選手。2018年に開催された全日本視覚障害者柔道大会で、パラリンピック3連覇の藤本聰選手を破って初優勝し、一躍注目を集めました。

 

福岡県糸島市出身で、現在19歳。瀬戸選手の視力は、両目とも矯正視力でも0.1にとどきません。強いまぶしさを感じるだけでなく、色覚障害もあるそうです。

 

そんな瀬戸選手に、柔道を始めたきっかけや、ベテラン選手や世界の強豪選手たちとの戦い、東京パラリンピックへの思いを語っていただきました。聞き手は古屋和雄アナウンサーです。

 

 

瀬戸選手が柔道を始めたのは4歳のころ。2つ違いのお兄さんが柔道を始めることになり、一緒に連れられて始めたのだそう。視覚に障害がない人たちに混じっての柔道初挑戦でした。

 

「やっぱり人を投げるのが本当に楽しかったですね。試合で投げて勝つのが大きい相手だったら、本当に気持ちいいものでした。」

 

中学、高校に進学してからも部活動で柔道をしていた瀬戸選手。高校では柔道の名門・福岡県立修猷館高校に進学しました。

 

「晴眼者のルールで柔道をしていました。もともと柔道部に入るつもりはなかったんですけど、伝統のある部活だったので一生懸命練習はしました。中学のころも高校のころもほとんど勝ちはなかったですね。」

 


視覚障害者柔道に転向したのは、高校3年生のとき。大会に出場した際、瀬戸選手のことを知った新聞社の記者が取材し、その記事を見た視覚障害者柔道連盟の方に誘われたそうです。

それまで瀬戸選手がやっていた柔道と視覚障害者柔道の大きな違いは、組んだところから試合が始まるところ。転向後の競技の違いや当時のとまどいについて、次のように話してくれました。

 

「力を込めてずっと組んでいなきゃいけないのがとてもきつくて。途中で力抜いたりすることもあるんですけど、やっぱり最初始めたころは抜き方がよくわからなかったので、ずーっと力が入ってました。はじめてすぐのころは、試合を1回するだけで腕がパンパンになってました。いきなり組んで始めるスタイルは、対戦相手が目の前にいる状況から始まるのでいつ投げられるかわからないという怖さもありました。」

 

視覚障害者柔道の練習を続け、2017年11月の全日本視覚障害者柔道大会に出場した瀬戸選手。パラリンピック3連覇の藤本聰選手と準決勝で対戦し、このときは敗退しました。

 

「本当に格の違いを見せつけられた感じで、何もすることができずに投げられてしまって。悔しいというより本当に遠い存在だと思いました。」

 

 

藤本選手を倒すことが目標になった瀬戸選手は、その後、福岡教育大学に進学。柔道部で腕を磨き、2018年12月の全日本視覚障害者柔道大会の決勝戦で、ふたたび藤本選手と対戦。横四方固めの一本勝ちで破り、はじめて日本一に。

 

2019年3月におこなわれた国際視覚障害者柔道選手権大会でも、再び藤本選手に勝って優勝を飾りました。

 

「藤本さんに2つ勝ったことで、またパラリンピックというものが少し近づいたようにも感じました。その試合で海外の選手とも2つ試合をして、それも勝つことができたんで、これから海外でどれだけ通用するか分からないんですけど、少し弾みになったと思います。」

 

しかし、国際ランキングではまだ藤本選手の方が上。国際大会で良い成績を収めなければランキングを上げることはできません。2019年5月におこなわれた国際大会では、残念ながら2回戦敗退に終わった瀬戸選手。

 

「試合の時も海外の選手の変則的な組み方だったり、技だったりにかなり翻弄されて対処できなかったです。始まった瞬間に襟と袖でなくて背中を持ってきたり、脇をすくってきたり、そこから横へ振り回すように投げたりとか、引き込むように投げたりという、そういう捨て身技だったりも上手い選手が多くて。技術よりも力で押し切る選手は多いですね。次はそれにしっかりと対応していきたいと思います。」

 

 

パラリンピックに出られる選手は、各階級1人だけという厳しい争いです。国際ランキングで藤本選手を上回るポイントを上げていかなければ、東京パラリンピックの出場権を獲得することはできません。瀬戸選手は、これからどんな強化をしていこうと考えているのでしょうか。

 

「しっかり海外の選手を研究します。もちろん相手も研究してくると思うので、得意な大内刈りと背負い投げを中心に自分の技をもっと磨いて、読まれない技や読まれてもかかる技をしっかり練習していきたいと思ってます。」

 

瀬戸選手は放送前に開催された視覚障害者学生柔道大会で3連覇も果たしましたが、「学生の大会なので、これで満足できるものではない」とさらに高みを目指します。

 

「東京だったら友人たちも応援に来てもらえると思ってるんで、東京パラリンピックにぜひ出たいです。まずはしっかり出場できるようにというところと、出場したからには、金メダルを取るということを目標に頑張りたいなと思ってます。」

その後の将来については「盲学校の教員になって柔道を教えたい」と話してくれました。

 

※この記事は以下の番組から作成しています。
2019年9月1日 視覚障害ナビラジオ「2020の星になれ」
内容は放送時のものとなります。

 

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