ストーリーパラスポーツ

パラリンピックで“人間の可能性”が見える! レジェンド河合純一さんが語る

2021-08-25 午後 03:20

新たな可能性を切り開く選手たちが、世界中からやってくる!

いよいよ始まった東京パラリンピック。史上最多4400人のパラリンピアンたちが、22の競技で躍動します。

大会を前にサンデースポーツでは、日本選手団で団長を務める、元パラ競泳選手の河合純一さんにインタビュー。「パラリンピックは可能性の祭典」だという河合さんに、コロナ禍の異例の大会、競技を通じて、どんなことを伝えたいか、語ってもらいました。

“人間の可能性の祭典”とは?

去年、日本パラリンピック委員会の委員長に就任した河合さんは、「パラ競泳のレジェンド」として知られています。

 

2008年北京大会で銅メダルを獲得した河合さん

 

河合さんは、中学3年生の時、病気で視力を失い、17歳でパラリンピック初出場。その後、6大会で金メダル5個を含む、21個のメダルを獲得しました。

大切にしてきた理念があります。

「オリンピックは“平和の祭典”。ならば、パラリンピックは“人間の可能性の祭典”である」

 

この言葉にどのような思いを込めているのでしょうか。

 

 

選手団結団式での河合さん

河合さん

「パラリンピックは、パラリンピアンたちが持つ可能性に触れて、感じていただけるイベントです。パラリンピアンたちは、みなさんが『これはちょっと難しいんじゃないか』と思う状況を越えていきます。そして、彼らの姿を見たみなさんおひとりおひとりが、『自分にもまだ秘められた可能性があるんじゃないか』ということに気づける。そんな機会をパラリンピックは提供できるんじゃないか。そのように常々思っていることを、その言葉に込めています」

障がいがあるからこそ 研ぎ澄まされる感覚

河合さんが語る「人間の可能性」はさまざまな競技で見ることができます。

 

 

たとえば今大会、日本が初めて出場するブラインドサッカー。フィールドプレイヤー4人は、全員が視覚に障がいがある選手です。使うのは、転がると音の鳴るボール。加えて、相手ゴール裏から指示を出すガイドの声を聞き、「音」を頼りにゴールを目指します。

まさに感覚を極限まで研ぎ澄ませることで、細かいボールタッチや、華麗なドリブルからのシュートなど、見るものを驚かせるプレーが連発します。

 

 

ブラインドサッカーの選手たちのプレーについて、自身も視覚に障がいがある河合さんは、人間の脳が持つ「可能性」があらわれているのではないかと言います。

 

河合さん

「私も現役時代に水泳をやっていた時、(自分の泳いでいる姿を)イメージしながら泳いでいました。あるときMRIで脳を撮影したところ、“視覚野”という、目が見えている人が働く部分の脳の働きが活発になっているということがわかったんです。まさにそれは、『見えてはいないけれども見ている』というような状態です。おそらくブラインドサッカーでも、足の感覚や、周囲の音を聞くことによって、脳の中の「視覚野」などをフル活用して、自分の能力を最大限発揮していると思います。科学的には、まだまだこれから解明されいてく部分も大きいですが、目が見えないことで開かれる人間の可能性が、競技から見えるのではないでしょうか」

用具の発展は試行錯誤の賜物

パラリンピックを語る上で欠かせないのが、選手たちが使う義足や車いすなどの用具。選手のパフォーマンスを最大限発揮するために、試行錯誤しながら発展してきました。

選手たちもそれぞれで障がいが異なるため、用具の使い方もさまざまです。

 

リオ大会でのスタッツマン選手

 

例えばアーチェリーでは、通常の弓を使用する「リカーブ」に加えて、より小さい力でも引くことができる弓を使った「コンパウンド」のクラスが行われます。この種目に出場するのが、ロンドン大会の銀メダリスト、アメリカのマット・スタッツマン選手。生まれたときから、両腕が肩の先までしかなく、右足と肩を使って弓を引きます。

選手たちそれぞれが、自ら編み出したフォームでパフォーマンスする。それがパラの魅力のひとつだと河合さんは言います。

 

河合さん自身、競泳のタイムを伸ばすために、日本で初めて取り入れた用具があったと言います。

 

棒でタッチしターンのタイミングを教える

 

河合さん

「私が初めて出たバルセロナ大会で、ターンのタイミングをタッチして合図してもらう『タッピング棒』を取り入れました。それによって、クイックターンができるようになったり、ゴールのタッチのタイミングを合わせることができるようになったり、今では一般的になっていますね。それまでは、ストロークの回数を自分で数えながら泳いでいたので、時には壁にぶつかって痛い思いをしながら泳いでいました。気付いて、学んで、またチャレンジして工夫していく。それもスポーツの面白さ、学びの部分だったのかなと思いますね」

障がいをこえて 多様な選手が結束

そして、パラリンピックのテーマである「多様性」。それが最も表れている競技として、河合さんが注目しているのが車いすラグビーです。

 

河合さん

「障がいの重い選手から軽い選手まで、与えられたポイントに応じて一緒にプレーできる、さらには女性も含めてプレーできる。その多様性が魅力ですね。同時に、そうしたイメージと相反するかもしれない激しさ。選手同士がぶつかり合うときの衝撃や音は、見ている方々を興奮させる面白さがあると思います」

 

 

車いす同士の激しい接触が許され、別名「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれる車いすラグビー。特徴は、障がいの程度や性別を超えてさまざまな選手が同じチームでプレーできることです。

 

チームは男女を問わずに構成。各選手は障がいの程度に応じてポイントが与えられ、出場する4人の合計ポイントが決められています。障がいの比較的軽い選手は、機敏に動き回りスピードを生かして得点を狙う、障がいの比較的重い選手は、ディフェンス役として相手の動きを止めたり、味方の動くスペースを作ったりしてサポートするといった、それぞれの特性に応じた役割が与えられています。

 

相手の動きを止める倉橋選手(中央)

 

現在世界ランキング3位の日本チームでは、倉橋香衣選手が女子選手として初めて日本代表入り。障がいが重い倉橋選手が、巧みに車いすを操り相手をブロックし、障がいが軽いキャプテンの池透暢選手池崎大輔選手などが、得点源のトライを支えています。

前を向き、立ち上がる姿を見てほしい

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で迎えたパラリンピック。開催に否定的な声も寄せられる中、河合さんは日本選手団の団長として大会に臨みます。このパラリンピックを通して、伝えたいメッセージを最後に聞きました。

 

 

河合純一さん

「今も苦しい状況の方々や、医療関係の方々、本当に多くの皆さんに支えていただいて、この大会の準備が進んできたと思っています。われわれとしては感染しない、そして感染させない、ということを徹底する。同時に、いただいた機会を最大限に生かして、自分たちの積み上げてきたパフォーマンスを発揮する、力を出し切る。それに尽きると思っています」

 

 

河合さん

「コロナによって、日常や当たり前にあったものを失った人もいるかと思います。パラリンピアンたちの多くは、これまでの人生で、事故や病気、ケガなどで自分の日常や当たり前を失った経験があります。彼らがスポーツを通じて立ち上がる、そして前を向いて今進んでいる姿を見てほしいです。そこに至るまでのきっかけやヒントが、パラリンピックを見ているみなさんと共有できるのではないか、そう思っています」

 

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