特集 パラ馬術 人馬一体の美しさに注目!

オリンピック・パラリンピック競技の中で、唯一動物と共に戦う競技・馬術。
人と馬の信頼関係が垣間見える、他の競技にはない魅力があります。
今回は、パラリンピックの馬術を紹介します。
人馬一体の「馬場馬術」とは?
パラリンピックで行われるのは馬場馬術(ばば ばじゅつ)と呼ばれる競技です。
“アリーナ”と呼ばれる長方形の馬場で馬を歩かせたり、音楽に合わせてステップを踏ませたりして、美しさや正確性を競います。
馬場馬術には、個人戦と団体戦がありますが、今回は個人戦について説明します。
馬場馬術の個人戦は男女の区別なく行われ、身体障害や視覚障害を持つ選手が参加します。障害の程度によって5つのクラスに分類されます。
視覚障害を持つ選手は、障害が視覚のみの場合、最も障害が軽いクラス「クラス V」に分類されることが多いんです。視覚障害がなぜ軽いクラス?
「馬には目があるから大きなハンデとされない」というのがその理由です。まさに馬術は人馬一体の競技!
障害に合わせた独自の工夫で馬を操る
馬を操るには、選手の的確な指示が必要不可欠。ここでは、石井直美選手と共にパラ馬術の馬の操作方法を詳しく見ていきましょう!
10歳の時に事故で右手に障害を負った石井直美選手は、義手をつけて競技を行います。
馬術は手綱を引いて馬を操ります。
本来、手綱は右に曲がりたいときは右手を、左に曲がりたい時には左手を引きます。
しかし、石井選手の場合は、手綱にバーをつけることで片手で馬を操ります。右に曲がるには、バーの右側を引く。左に行くにはバーの左側を引く。
他にも、腕にゴムを巻いて握る力を補助する選手がいるなど、選手は障害に合わせてそれぞれ工夫をしています。
的確さと美しさを競う
個人戦には、インディビジュアルテストとフリースタイルテストの2つの種目があります。
まずは、インディビジュアルテストから。
選手はあらかじめ、動きの種類と順番が書かれた表を渡され、それに従い1組ずつ演技します。
会場には、アルファベットの文字が振られています。
これは、コースの指示なんです。例えば、事前に配られた表に「A・K・B」の順番に歩くと書かれていたら、その通りに馬を操り移動します。
しかし、視覚に障害のある選手の場合、AやBなどの地点をどのように把握するのでしょうか?
視覚障害の選手の場合、ポイント付近に「コーラー」と呼ばれるガイドを置くことが認められています。
コーラーは、自身のいる場所を「H、H、H(エイチ、エイチ、エイチ)」などと声に出し教えることで、選手がどのポジションに向かうべきかを誘導します。
審判たちは、その様子を厳しくチェック!
一つ一つの動きに点数が割り振られており、様々な観点から採点されます。
「馬の姿勢」も重要項目です。頭が地面と垂直に垂れているのがよい姿勢とされています。
馬の姿勢をきれいに見せるために、たてがみを編んで首元をすっきりさせるのが常識!
おしゃれですね!
このインディビジュアルテストで順位が決定し、8位までに入った人馬が次に進みます。
それが「フリースタイルテスト」です。
選ばれし8頭の晴れ舞台!フリースタイルテスト
フリースタイルテストは動きの要素は決められていますが、構成は自由で音楽に合わせて披露されます。
では、石井直美選手の演技で見ていきましょう!
フリーでは、技術点に加え芸術点があります。芸術点では、音楽との親和性も審査対象です。
まずは、ゆったりとした曲調に合わせて、ゆったりと歩く「なみ足」。
音楽がテンポアップするのに合わせて、足で馬に合図を送ります。
すると、ジョギングのような「はや足」に!
このように、音楽に合わせて軽快な走りや滑らかなステップを披露していきます。
ちなみに、高得点を出すためには、選手から馬への指示は極力最小限の動きで!
文字通り、人馬一体が大切なんですね。
時には、予定していたポイントよりも馬が早く曲がってしまうことも…!そうなると大幅な減点になってしまいます。
障害に合わせて選手がそれぞれ工夫して馬に意思を伝えることで、人馬一体の美しい演技が魅力的なパラリンピックの馬術。
繊細そして時にはダイナミックな表現に注目です!