ストーリー陸上

菊地弁護士に聞く!「トライアスロン」ってどんな競技?

2019-12-23 午前 10:20

欧米ではマラソンをしのぐほどの人気を誇り、2012年のロンドンオリンピックでは、2日間で120万人もの観客を集めたという「トライアスロン」。2020年の東京オリンピックでも開催が決定していますが、日本国内ではまだまだ定着していないのが現状…。
 
そこで今回は、自らも競技者としてトライアスロンを楽しむ菊地幸夫弁護士に突撃インタビュー!トライアスロンの魅力はもちろん、競技の概要や愛用アイテムからヒモ解く観戦ポイントまで、たっぷりお話を伺いました!

トライアスロンという競技は“全てが非日常”!

――菊地さんご自身も競技者であるトライアスロン。東京オリンピックの正式種目にも採用されていますが、トライアスロンとはどのような競技なのでしょうか?

 

菊地幸夫さん(以下、菊地):一言で説明すると、スイム(=水泳)、バイク(=自転車)、ラン(=長距離走)を連続して行い、最終的な着順を競う競技です。最初にスイム、次にバイク、最後にランという順番は、安全性を考慮してのこと。先にバイクやランを終え、疲労の蓄積したところにスイムをしては、素人目にもわかるほど危険ですよね。地上を走るランが最後であれば、何か起きたときにも対処しやすい。こうした安全上の理由から、トライアスロンの順番は絶対的なルールです。

 

 

トライアスロンって、実は歴史の浅い競技なんです。1974年に米国カリフォルニア州のサンディエゴで誕生して、オリンピックに正式採用されたのは2000年のシドニー大会が最初。特に混合リレーに関しては、2020年の東京オリンピックが初採用です。混合リレーも面白いですよ。混合リレーでは男女各2名、計4名がチームを組み、一人ずつが個人種目より5分の1ほどの短く設定された3種目を連続して行います。つまり、チームの一人ひとりがミニ版のトライアスロンを競技して、女子、男子、女子、男子と交互に次の競技者へとハイタッチをして選手交代。4人目の選手がゴールしたタイムで、チームの総合順位を争う競技です。

 

――そもそも菊地先生がトライアスロンに魅了されたきっかけは、何だったのでしょう?

 

菊地:僕は学生時代からバレーボールをやっていて、そのバレーボール仲間に誘われたのが最初です。トライアスロンって、大会ごとに規定の距離が違うんですよ。短いレースもあれば、途方もなく長いレースもあります。しかし当時の僕には“トライアスロン=長距離”というイメージしかなく、バレーボールに傾倒していた自分には無縁の競技だと思っていました。それが友人から「短い距離もあるから、お前も挑戦してみろよ」と誘われて。

 

それならと挑戦したところ、見事にハマりましたね(笑)。トライアスロンって、非日常を感じられる競技なんですよ。スイム、バイク、ランの3種目を行うには、広大な土地が必要。要はトライアスロンの大会って、風光明美な田舎で行われることが多いんです。青い海を泳ぎ、緑のトンネルを抜け、きつい坂を登り切った後にうしろを振り返ると、美しい景色が広がっている。この環境は、インドアスポーツにはあり得ません。

 

2013年9月開催の「佐渡国際トライアスロン大会」に出場したときの様子

 

さらには沿道からの応援もトライアスロンの魅力ですね。僕は短い距離から徐々に体を慣らして、今では長距離レースが大好きです。その理由は達成感。泳いでいる最中も走っている最中もしんどくて、毎回のように出場したことを後悔するくらいです(笑)。それでもしんどい分だけ、沿道の応援が心に響く。特にレース終盤の応援は励みになります。笑顔を返す力さえ残っていない、ヘロヘロなときほど本当に嬉しいんですよ。その上、ゴールしたときの達成感がたまりません。風光明美な景色も沿道の応援も、ゴールしたときの達成感も、トライアスロンでは全てが非日常なんです。

勝負を分ける!?「トランジション」や「ドラフティング」

――「トライアスロンでは、大会ごとに規定の距離が違う」というお話がありましたが、オリンピックで採用されているのがショートディスタンスですね。

 

菊地:そうですね。「オリンピックディスタンス」とも呼ばれる距離で、スイム1.5km、バイク40km、ラン10km、総距離51.5kmの着順を競います。長距離の戦いで重要なのが持久力とペース配分なのに対し、短距離はスキルとスピードの勝負。同じトライアスロンでありながら世界が違います。特にトップレベルの選手なんて、異次元のスピードですよ(笑)。

 

2010年8月に出場した「沼津千本浜トライアスロン大会」のスイム後の様子。菊地さんは得意のスイムで他の選手とタイムに差をつけているそう

 

種目ごとの距離が短いことから選手の得意・不得意が際立つのも、オリンピックディスタンスの面白さです。しかし最終的に上位に立つのは、3種目が平均して強い選手。多くのスポーツでは、一つの競技に対する突出した強さが求められますよね。ところがトライアスロンでは、平均して強い選手が勝つ傾向にある。短距離のレースでは、このトライアスロンの特徴であり醍醐味が、より色濃く出るんです。

 

――そのトライアスロンを競技するのに欠かせないのが、ウエアや用具の数々。菊地さんが愛用するアイテムをご用意いただきましたが、“トライアスロンならでは”という特徴は、どこにあるのでしょう?

 

菊地:大きな特徴は、ウエアの速乾性ですね。3種目を連続して行うトライアスロンでは、「トランジション」と呼ばれる種目の切り替えも勝負のポイント。トランジションにかける時間を削減するため、多くの選手がトライアスロン専用のウエア一枚で、3種目を競技します。市民レベルの大会ではスイムのときにウエットスーツの着用が義務づけられていて、ほとんどの人はスーツの下にウエアを重ねているんです。ただし濡れたウエアが苦手な僕は、着替えますけどね(笑)。

 

菊地さんが着用しているトライアスロンウェア一式。レースナンバーの記載されたピンク色のスイムキャップは試合先で配られたもの

 

分かりやすいところでは、お尻に縫い込まれたパッドも特徴的です。自転車競技専用のウエアの場合、このパッドがもっと分厚い。サドルとお尻の摩擦を押さえるための工夫ですが、これがトライアスロンとなるとランの妨げになります。走るときにお尻がもたつかないよう、厚すぎず、薄すぎないパッドが仕込まれているんです。

 

愛用のトライアスロン用ショーツ

 

――ちなみに自転車も、トライアスロン専用のバイクなのですか?

 

菊地:バイクそのものは自転車競技と同じ、ロードタイプと呼ばれる自転車です。このロードタイプの自転車に、トライアスロンの競技者たちは思い思いの工夫を施します。特に長距離の場合、レース中に何が起こるか分かりません。小型の空気入れを装備したり、ちょっとしたバイクの故障にも対応できるよう、小さな工具入れを装備したり。僕は自転車のシフトレバーに、むき出しの栄養補助スナックを貼り付けることもありますよ。あらかじめ袋から出しておけば、走行中にペロッと食べられますから(笑)。そして、しんどいときの活力源はハンドルのステム部分やキャップのつば裏に貼ってある写真です。これを見ると尻を叩かれるというか…背中を押してもらえるんです。

 

ステム部分とキャップのつば裏には家族写真を貼っているそう

 

さらにトランジションの観点から、スイムを終えた裸足のままバイクにまたがれるよう、自転車のペダルにバイク用シューズを取り付けておく選手も多くいます。ペダルにシューズを固定して、自転車をこぎながらシューズを履くんです。そして、多くの大会で禁止されているバイクの「ドラフティング」がオリンピックでは許可されています。ドラフティングというのは、他の選手の後方に入り、風除けとして利用する行為。これが解禁されているため、走行集団をどのように利用して、どのタイミングで抜け出すのか、選手ごとの駆け引きも見どころですね。

 

こちらはトライアスロンをはじめて2代目となるバイク。試合中にパンクが起きても修理して完走出来るようにサドルバッグには予備のチューブも収納されている

トライアスロンとは“選手の人生”がにじむ競技!

――「ドラフティングが許可されているオリンピックでは、バイクの駆け引きも見どころ」。ぜひ、“東京開催ならでは”の見どころについても教えてください。

 

菊地:美しい景色が田舎を走る魅力である一方、都会を走るのも楽しいんです。僕は横浜で開催された大会に出場したことがありますが、都市部こその洗練された景色をバックに走るのも、田舎町とは違った非日常感があります。この都会の景色がレース会場と化す非日常感は、観戦する方でも感じられるはずです。しかも都市部開催の場合には、周回コースが組まれることがほとんど。すると沿道のギャラリーが分散されず、一人ひとりの声援がより大きな声となって選手に届くんです。

 

東京オリンピック観戦が楽しみだと語る笑顔の菊地さん

 

僕は一人の競技者として声援が持つエネルギーの大きさを知っていますし、2020年の東京オリンピックでは、ギャラリーとして観戦する気満々でいます。東京オリンピックは周回コースが組まれ、レース会場全体が非常にコンパクト。沿道から応援するにしても、スイムもバイクもランも、3種目全てを観戦できるスポットがあるはずなんです。僕は今から虎視たんたんとその場所に狙いを定めています(笑)。

 

――最後にあらためてトライアスロン観戦の極意を教えてください!

 

菊地:トライアスロンというスポーツは、選手ごとのバックグランドが光る競技だと思っています。東京オリンピックにしても、出場する代表選手が決まったら、まずは選手のことを調べてみてください。トライアスロンのトップ選手には、ほかの競技から転向してきた人が少なくありません。水泳をやっていた人、自転車をやっていた人、陸上をやっていた人。この3種目に限らず、それぞれが得意なスポーツに打ち込み、それでもなかなか芽が出ない挫折を味わいながらもスポーツの経験を強みに変えて、トライアスロンで活躍する選手が多くいます。

 

 

挫折を力に変えて競技するアスリートの姿には胸を打たれますよね。しかもトライアスロンには3種目を連続して行うからこその駆け引きがあり、どの種目が得意で、どの種目でスパートをかけるかは、選手ごとのバックグラウンドが大きく関係しているはずです。要はトライアスロンという競技に選手それぞれの人生がにじむんです。スキルやスピードを競い合うスポーツの観点から見るのはもちろん、そこに選手の人生を重ねて観戦してみるとよりトライアスロンという競技を楽しめるはずです。

 

 

トライアスロンはチケットを持っていなくても観戦できるオリンピック競技の一つ。菊地さんの熱いお話からトライアスロンに興味を持った方は、ぜひ一度その魅力を体感してみてください。きっと、その奥深さに魅了されるはずですよ!


菊地幸夫(きくち・ゆきお)

1957年生まれ、東京都出身の弁護士。
分かりやすく軽妙な法律解説が人気を呼び、テレビ番組にも多数出演。弁護士業務のかたわら体力作りにも勤しみ、各地のトライアスロン大会にも出場。学生時代にはバレーボールに熱中し、その経験から地元小学校のバレーボールチーム監督も務める。

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