ストーリーゴルフ

ゴルフの勝負を左右するコースの管理者"グリーンキーパー"ってどんな仕事?

2020-03-19 午後 11:56

わずかな差が勝負を分けるプロスポーツの世界では、プレーヤーの技術力だけでなく、そのコンディションがカギを握ります。

 

ただ、大自然に囲まれてプレーするゴルフでは、気象条件や芝の状態などといったコースのコンディションも勝負を決めるポイントのひとつ。

 

そんなゴルフコースを管理しているのがグリーンキーパーと呼ばれる人たちです。裏方ではありますが、ゴルフの結果を左右する重要な役割を担っています。

 

では、いったいグリーンキーパーはどんな仕事をしているのでしょうか。今回は東京オリンピックの会場となる霞ヶ関カンツリー俱楽部(以下:霞ヶ関CC)で統轄グリーンキーパーを務める東海林 護(しょうじ・まもる)さんにお話を聞いてきました。

東海林 護さん

霞ヶ関カンツリー俱楽部の統轄グリーンキーパー。大学卒業後、北海道にあるスキーリゾートでバイト中、夏場にゴルフ場の管理を任されるように。その後、国内のゴルフ場でグリーンキーパーの下積みを重ね、現在に至る。

365日、早朝からコースを見守っている!

ひとえにグリーンキーパーといっても、管理するのは芝生だけではありません。ゴルフコースにはティー、フェアウェイ、ラフなど芝にもいくつかの種類があり、さらにバンカー(砂場)や池、さらに樹木などの障害物も設けられています。そのすべてを管理するのがグリーンキーパーの仕事だそうです。

 

東海林さん

ゴルフコースは、温度管理がされるような温室ではなく、屋根もない自然のなかで育まれています。四季折々の気候だったり、日々の温度や湿度といった微妙な変化によってもコンディションが異なります。
 
そのため、基本的にグリーンキーパーの仕事に休みはありません。もちろん交代制などにして休日を設けてはいますし、年末年始はコース自体が休みになります。ただ、それでも大雪が降ったりすれば、芝の状態を確認しにコースを見回ったりすることもあります。
 
仕事の開始時間はお客様の予約状況によっても変わってきますが、だいたい8時ごろからコースを回られるお客様が多いので、その約2時間半前から仕事が始まります。
 
おおまかに作業を分けると、芝刈り、清掃、バンカーの整備、樹木の枝が落ちてないかなどの安全点検、散水。これを1番ホールから始めて18番ホールまで順々に進めていきます。

最も経験が必要な作業は散水!

東海林さん

いろいろな作業のなかで専門性が高いのが散水です。この作業はそれなりに経験を積んでいなくては任せられません。というのも、芝の状態を見極めて手作業で散水量を調節しなくてはならないからです。
 
たとえば、夏季は高温多湿によって、芝が熱中症のような状態になることもあります。冬季より朝のうちに多めに水をまいておかなくてはなりません。逆に冬季は保湿するイメージで散水をしたりもします。ところが、同じ季節であったとしても、雨が降ったりするとコンディションは変わってしまうので、そのコースの芝の特徴をよく知っておく必要があるんです。
 
さらに、散水の作業は原則的に手作業で、おもに使用するのはホースやジョウロ。スプリンクラーを使用することもありますが、それだけでは芝が柔らかくなりすぎてしまったりして、ゴルファーたちのプレーコンディションが低下しかねません。さらに土壌水分計という器具を用いて芝の水分量を測るのですが、この水分量にも決められた基準値というものがありません。
 
ゴルフコースによって芝だけでなく、その下にある土、さらには暗渠排水がめぐらされているかなど、システムがすべて異なっています。ですから、世界中どのコースも同じシステムは存在しないんです。担当するコースがどんなシステムで成り立ち、どんな特徴があるのか。それを見極めるのはグリーンキーパーの大切な仕事です。

グリーンキーパーは会社でいえば「部長」

東海林さん

実は、グリーンキーパーという呼び名は、日本と欧米で微妙にニュアンスが異なります。欧米でグリーンキーパーといえば、コースを管理するスタッフすべてを指しますが、日本ではこうしたスタッフを統括する立場の人を指します。
 
日本では、その下にサブキーパーが1人ほど、アシスタントキーパーが4人ほどいて、さらにその下に作業スタッフとピラミッド状に連なっています。会社組織でいえば、グリーンキーパーは部長、サブキーパーが課長、アシスタントキーパーが係長、作業スタッフが一般社員といったところでしょうか。
 
また、機械の整備なども各ゴルフコースが独自に行っているので、独立した整備部門がグリーンキーパーと連携しています。

仕事の評価はフィギュアスケートと似ている?

東海林さん

インタビューなどでよく「理想の芝の状態とは?」という質問をいただくことがありますが、芝は植物ですから、日々変化しているものなので、一概に決めることができません。その日の最高の状態にもっていけるかがグリーンキーパーの役割なのです。
 
これは、芝だけでなくコースを形成するあらゆるものに同じことがいえます。基本的にゴルフコースの評価は芸術点のようなもの。あるプレーヤーに「100点満点のコース」だと評価していただいても、あるプレーヤーが「20点」だと評価することもあります。
 
つまり、いくらグリーンキーパーが最高だと思える状態をつくっていたとしても受け取り方は十人十色。どんなに経験を重ねていたとしても、答えが見つかることは一生ありません。グリーンキーパーはどんなにいい仕事をしたとしても「これでいい」という安心感をもってしまってはいけないんです。常にコースに対するチャレンジャーなんです。

オリンピックコースの見どころは?

東海林さん

個人的には、世界中の人々に日本のゴルフコースを見てもらいたいと思っています。日本は世界で3番目にゴルフ場が多い国で、ゴルフプレーヤーの数も多く、歴史も深い。私は海外のコースを見ていますが、日本はメンテナンス面でも引けをとりません。
 
それなのに、どうも過小評価されているようにも思います。某ゴルフ雑誌のゴルフ場の世界100選でも、日本はわずか5コースしか選ばれていないんです。
 
日本のゴルフ場には独特の景観があります。ここ霞ヶ関CCでいえば赤松が特徴的です。こうした日本庭園的な美観をいかすためにも、私は東京や京都のせん定師などから学んでもいます。ティーやラフには、日本古来の「日本芝」を使っていたりもします。
 
霞ヶ関CCのゴルフコースを世界中で見てもらって、外国人たちに「日本に来てプレーしてみたい」と思ってもらいたいですね。日本には霞ヶ関CC以外にもいいゴルフコースはたくさんあります。日本のゴルフコースの素晴らしさを知ってもらうためにも、大会中は主催者だけでなく、プレーヤーの要望に応えられるように全力を尽くしていきます。

 

ゴルフはグリーンキーパーの技術と思いによっても支えられていることがわかりました。そうした人たちの影の支えにも思いをはせながら観戦するとまた違った見方ができるかもしれませんね。

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