ストーリーフィギュアスケート

男子フィギュアスケートの飛躍的進化 どこまで続く?

2018-02-13 午後 0:00

 

フィギュアスケートの大会で「世界最高得点更新!!」というニュースをよく聞きますよね。昨シーズンまで、毎回のように最高得点が更新されているような気がするのでちょっと調べてみると…。

2008-2009年のシーズンベストと2017年10月現在の世界最高得点の差がなんと“81.24点”もあることが分かりました!

「これはただごとじゃない!!」と、いうことで、フィギュアスケートの飛躍的進化のギモンに迫りました。

2010年代だけで男子フィギュアスケートには3度の大きなステップアップがあった!

 

上のグラフをご覧ください。男子フィギュアスケートのシーズンベストはたった10年もしない間に、こんなに点数が上がっているのです!そのポイントは3つ。

① 2009-2010シーズン257.70点 → 翌シーズン280.98点 23.28点UP!

② 2012-2013シーズン274.87点 → 翌シーズン295.27点 20.4点UP!

③ 2014-2015シーズン289.46点 → 翌シーズン330.43点 40.97点UP!!

とくに2015年、羽生結弦選手が300点という大台をいきなり大きく超える得点を出したことで、世界は驚愕!まさに、「超右肩上がり」です!

 

この進化の裏に、いったい何が?

理由1:ルール変更による得点のインフレ!?

まず理由のひとつめは採点ルールの変更。

 

技ひとつひとつの基礎点がアップしたことや、ジャンプの回転不足に対してそれまでは回り切れていないとすべて一律に1回転少ないジャンプとみなされていた(ダウングレード判定)のが半分以上回っていれば、基礎点の7割が与えられるようになった(アンダーローテーション判定)こと、体力が消耗している演技後半は点数が1.1倍されるようになったこと、などなど。

得点が上昇するようなルール変更が近年でされています。

つまり、難しいことに対してちゃんと高い評価をしよう!という変更がされてきたんですね。

 

例えば4回転ジャンプの基礎点も2008/2009シーズンと2017/2018シーズンでは以下のようにアップしているんです。

4回転トゥループ:9.8 → 10.3

4回転ループ:10.8 → 12.0

理由2:勝つためには4回転ジャンプが不可欠に!?

このルール変更により、演技構成にも様々な変化が起きました。その中で大きいのはやはり「4回転ジャンプ」。4回転ジャンプを跳ぶことで獲得できる点数が増えたので、挑戦することのメリットが大きくなりました。

4回転ジャンプを跳べる選手は以前からいましたが、2010年のバンクーバー五輪ではエヴァン・ライサチェク選手が4回転ジャンプを跳ばずに優勝しています。

しかし翌2011年には、世界選手権でパトリック・チャン選手がショートプログラム(SP)で1度、フリースケーティング(FS)で2度、計3度の4回転ジャンプを跳んで280.98点を記録し、歴代最高記録を塗り替えました。

 

これが先ほどのグラフの1番目のポイントですね。

 

 

さらに、チャン選手はその2年後、3度の4回転ジャンプを跳んで、295.27点を記録し自身の記録を塗り替えました。そう、飛躍の2番目のポイントもチャン選手の4回転ジャンプだったのです!

この頃から4回転ジャンプは、勝つために不可欠なものに。基本的に、良い技・演技に加点していく今の採点法では、常に新しいことへ挑戦することで、さらなる高得点を追っていくことができるんです。

技の難易度が低いものを確実にやるよりも、難易度が高いものに挑戦した方が高い点数をもらえる可能性が高い!ということですね。

新時代を切り開いた羽生選手

優勝者が4回転ジャンプを跳ばなかったバンクーバー五輪から4年後、ソチ五輪ではフリーの上位7人までが4回転をプログラムに組み込む時代に。

そして、優勝者は2種類の4回転ジャンプに挑みました。その金メダリストが、そう、羽生結弦選手です!

 

 

羽生選手は、フィギュア界を新たな次元に引き上げました。2015年のNHK杯ではSPで2本、FSでは3本の4回転ジャンプを披露。

それまでは2年ごとに6-7点ずつ更新されていた歴代最多得点を、一気に27.13点も引き上げて300点の大台を突破、322.40点という世界新記録を樹立したのです!これが飛躍ポイントの3番目です。

4回転ジャンプが開拓されたのはたった数年だった!

 

4回転ジャンプはいまや、トップの選手たちにとってスタンダードとなりましたが、4回転ジャンプが“開拓”されたのは、ここ数年のことだったんですね。

FSでは、回転数と種類が同じジャンプは2度までしか跳べません。つまり、4回転を1度の演技で複数回跳ぶためには、「ジャンプの種類を増やす」必要があります。

4回転ジャンプでまだ成功者がいないのは、全6種類ある跳び方の中で唯一前を向いた体勢から跳ぶ「アクセル」だけ。しかし、「ループ」や「フリップ」が公式大会で成功を認められたのは、つい最近の2016年4月のことなのです。この偉業を達成した宇野昌磨選手は、「公認大会で初めて4回転フリップを跳んだ選手」として、ギネス世界記録にも認定されたほどです!

 

ネイサン・チェン選手

 

2017年のロシア杯では、ネイサン・チェン選手がFSで4種類の4回転ジャンプを跳んで優勝しています。ほんの数年前まで想像もしなかった世界に、フィギュア界は突入していると言えますね 。

ジャンプだけじゃない!美しさが求められるのがフィギュアスケート

4回転ジャンプが注目を集める一方、美しさもフィギュアスケートの大事な一面。それがわかるのが、2015年12月のグランプリファイナルでの羽生選手の演技。

世界初の300点越えを果たしてから、わずか3週間後、羽生選手は330.43点と、すぐに世界記録を塗り替えました。前回の記録更新時と、4回転ジャンプの回数に変わりはありませんでしたが、違いを生み出したのはその他の部分。

 

2015年グランプリファイナル ショートプログラム 羽生選手の演技

 

SPでのスピンは、すべてがレベル4という最高ランク。ジャンプなどの要素の合間をつなぐ「トランジション」という項目でも高得点をマークし、高い演技構成点が世界最高記録をさらに跳ね上げました。

競争が激化する中で、「音楽の解釈」といった演技点の重要性もさらに高くなります。大技による負担と優雅さ、細部へのこだわりなどを、非常に繊細なバランスの上で美しく組み合わせていく演技。練りに練り上げられたプログラムは、非常に高いレベルを選手に要求します。

フィギュアはさらなる高得点時代に突入するのか!?

4回転ジャンプが当たり前になる中、技を採点する際の「出来栄え点(GOE=Grade of Execution)」の物差しが足りなくなりました。これまで上限だった「+3」点が当然のように連発されるようになったため、高レベルの争いでの差を明確にするため、ピョンチャンオリンピック後からGOEを現行の7段階から11段階へと拡大することが決まりました。

このことも得点を引き上げていく要因にきっとなるでしょう。選手の進化が、ルールをも押し上げていくのですね。

難しいものを高く評価するようなルール変更、4回転ジャンプに挑戦することのメリット、GOEの拡大…とフィギュアの高得点化が止まりませんが、このまま最高得点が更新されていくのでしょうか!?

日本人初の4回転ジャンパーであり、現在はプロスケーターとして活躍する本田武史さんに聞いてみました。

本田武史さん

ピョンチャンオリンピック後に大幅にルールが改正される予定です。ジャンプで怪我をする選手が増えてきているので、ジャンプの回数が減る可能性がありますし、男子のFSの演技時間を短くするという議論も出ているようです。


ルールの変更内容しだいでは、この330点という最高得点を超えるのは難しくなってくるかもしれませんね。

 
また、4回転ジャンプの必要性については以下のように話してくれました。

4回転ジャンプを跳ばないと勝てない時代になっているのは確かですが、その4回転を4回、5回と跳んでも羽生選手の最高得点を超える選手が出てきていないのも事実。そこがフィギュアスケートの面白いところでもあります。

 

完成度が低くても、たくさんの4回転ジャンプを入れて高得点を狙うのか、4回転の数は絞って、他のジャンプとの組み合わせも含め、完成度を上げて勝負するのか。

 

ピョンチャンオリンピックではどのような戦いが見られるのでしょうか?
期待が高まります!

本田武史

1981年3月23日生まれ
史上最年少の14歳で全日本選手権初優勝を飾るとともに、長野オリンピックへも史上最年少の16歳で出場を果たす。2002年ソルトレイクシティオリンピックで4位入賞。2002年、2003年の世界選手権では2年連続となる銅メダルを獲得。日本人として初めて競技会で4回転ジャンプを成功させたスケーターでもあり、2003年の四大陸選手権では、フリースケーティングで2種類の4回転ジャンプを3回成功という偉業を成し遂げた。
現在はプロスケーターとして華麗な演技を披露しつつ、コーチや解説としても活躍している。

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