ストーリーパラスポーツ

真価を問われる日本パラ陸上 活躍なるか!? 東京パラリンピック

2021-08-17 午前 07:00

パラリンピックの陸上は、1960年の第1回、ローマ大会から実施されている伝統ある競技です。義手や義足、競技用車いす、そして、視覚障害の選手を導く伴走者。

 

さまざまな障害のある選手があらゆる道具を駆使し、工夫を凝らして「走る」「跳ぶ」「投げる」の限界に挑戦するのがパラリンピックの陸上です。


公平に競い合えるよう障害の種類や程度ごとにクラスが分かれているため、種目が多く、東京パラリンピックでは100メートルだけで29人の金メダリストが生まれることになります。陸上は、すべての競技の中で最も多い、167種目が実施される予定です。

道具やパートナーと一体に

 

足のない選手に欠かせないのがカーボンファイバー製の板を使った競技用の義足です。地面を蹴るときの反発力を生かして走ったり、跳躍したりしますが、義足を十分にたわませて大きな反発力を得るためには、選手には義足を体の一部として使いこなせるだけの筋力や技術が求められます。

 

 

車いすの選手は「レーサー」と呼ばれる3輪の競技用車いすに乗って走ります。ギアなどはなく選手は腕力など上半身の力だけでスピードを生み出すため、選手の力が車いすに最も効率よく伝わるよう座席の高さを調節するなど、ミリ単位の調整が欠かせません。

 

 

視覚障害の選手は「絆」と呼ばれるガイドロープで結ばれた伴走者や、走り幅跳びで踏み切りの位置やタイミングを声や手拍子で伝えるコーラーと呼ばれる先導役と二人三脚で競技します。知的障害の選手にとっては、障害の特性を理解してくれる指導者の存在が欠かせません。

 

道具やパートナーと極限まで同化してコンマ1秒のタイム、1センチの距離を削り出す、選手たちの工夫や努力がパラリンピックの陸上の最大の見どころです。

日本代表の顔ぶれは

陸上の日本代表は46人です。

男子は、赤井大樹選手、生馬知季選手、石田駆選手、伊藤智也選手、岩田悠希選手、上与那原寛和選手、大島健吾選手、大矢勇気選手、唐澤剣也選手、久保恒造選手、熊谷豊選手、小久保寛太選手、小須田潤太選手、佐藤友祈選手、白砂匠庸選手、鈴木徹選手、鈴木朋樹選手、十川裕次選手、永田務選手、樋口政幸選手、堀越信司選手、松本武尊選手、山﨑晃裕選手、安野祐平選手、山本篤選手、和田伸也選手の26人。

 

女子は、喜納翼選手、佐々木真菜選手、澤田優蘭選手、髙桑早生選手、高田千明選手、高松佑圭選手、竹村明結美選手、辻沙絵選手、土田和歌子選手、兎澤朋美選手、外山愛美選手、中西麻耶選手、西島美保子選手、藤井由美子選手、古屋杏樹選手、前川楓選手、蒔田沙弥香選手、道下美里選手、村岡桃佳選手、山本萌恵子選手の20人です。

走り幅跳び義足のクラス

山本 篤 選手

 

パラ陸上の第一人者として長年、日本のパラスポーツ界を引っ張ってきた山本篤選手が挑むのが、男子走り幅跳び義足のクラスです。前回大会、銀メダルの山本選手は東京パラリンピックをパラスポーツの普及につなげるためにも、自身初の金メダル獲得に近づく7メートル台の跳躍を目指しています。

 

中西 麻耶 選手

 

女子の走り幅跳びは、おととしの世界選手権で初優勝した中西麻耶選手が世界女王として大会に臨みます。目標はパラリンピック新記録となる6メートル台の跳躍です。
 
2人の共通点は、期待されるほど、より大きな力を発揮する勝負強さです。大一番での2人の跳躍から目が離せません。

オリンピックへの挑戦状、ブレード・ジャンパー

走り幅跳びには世界のスーパースターも出場します。男子走り幅跳び義足のクラスで「ブレード・ジャンパー」の異名をとる、ドイツのマルクス・レーム選手です。

 

マルクス・レーム 選手

 

ことし6月にマークした8メートル62センチの世界新記録は、東京オリンピックの金メダリストの記録を21センチも上回っています。

 

3連覇のかかるパラリンピックだけでなく、東京オリンピックへの出場も目指し、オリンピックとパラリンピックの融合というテーマを世界に投げかけてきたレーム選手。東京パラリンピックでの「オリンピック超え」なるか、世界が固唾をのんで見守っています。

表彰台独占も!?車いすのクラス

佐藤 友祈 選手

 

東京パラリンピックの日本代表で「金メダルに最も近い男」との呼び声が高いのが、車いすのクラスの佐藤友祈選手です。

 

おととしの世界選手権は、リオデジャネイロパラリンピックで敗れたアメリカのライバル、レイモンド・マーティン選手に完勝し、男子400メートルで3連覇、1500メートルで2連覇。この2種目の世界記録も保持し続けています。2種目での金メダル獲得を公言するパラ陸上のエースは、いまのところ向かうところ敵なしです。

 

伊藤 智也 選手


その佐藤選手に迫るスピードの持ち主が、北京パラリンピックで2つの金メダルを獲得した「車いすの鉄人」こと、伊藤智也選手です。

 

免疫の難病で、コロナの感染を避けるため在宅トレーニングを徹底してきましたが、ことし5月、1年半ぶりの復帰レースで400メートルで佐藤選手に肉薄し、健在ぶりを証明しました。

 

2019年 世界選手権1500メートルで日本選手が表彰台を独占

 

おととしの世界選手権は、1500メートルで佐藤選手、上与那原寛和選手、伊藤選手の3人で表彰台を独占していて、東京パラリンピックで、その再現の期待が高まります。

メダル期待の若手が続々!知的障害のクラス

男子1500メートルで今シーズン1位の赤井大樹選手をはじめ、日本選手が世界ランキング上位にひしめくのが知的障害のクラスです。

 

(左から)赤井 大樹 選手、古屋 杏樹 選手

 

22歳の赤井選手や女子1500メートルで今シーズン、世界ランキング2位相当の記録を出している26歳の古屋杏樹選手など、初出場の若手選手が実力を伸ばしています。

 

決められた目標に向かって日々の練習をこなすことが心の安定につながる知的障害の選手にとって、東京パラリンピックの1年延期や、去年相次いだ大会の中止は、とりわけ大きな試練でした。パラリンピックでのメダル獲得という目標を失わず、努力することをやめなかった選手たちが、知的障害のクラスの陸上選手として日本初となるメダルを手にできるか注目です。

総合力が問われる新種目 ユニバーサルリレー

東京パラリンピックの新種目として注目されるのが、さまざまな障害のある選手による「ユニバーサルリレー」です。

 

5月 パラ陸上でのユニバーサルリレー

 

1走・視覚障害、2走・腕や足の障害、3走・脳性まひなど、4走・車いすの選手が100メートルずつ走り、バトンではなく「タッチ」でリレーします。必ず男女2人ずつで編成するというルールも加わり、まさに各国・地域の総合力が試される種目になっています。

 

前回も別のリレー種目で銅メダルを獲得した日本にとって、リレーはオリンピック同様、パラリンピックでもお家芸。磨き上げた「バトンワーク」ならぬ「タッチワーク」で、個々の走力で上回る強豪を制することができるか、期待されます。

 

(左から)大島 健吾 選手、松本 武尊 選手

 

義足のクラスの21歳、大島健吾選手や脳性まひなどのクラスの19歳、松本武尊選手など、メンバーには次世代を担う若手も多く、個人で出場が見込まれる100メートルとともに注目です。

最終日もメダルラッシュ!?

東京パラリンピックの最終日を飾るのが、マラソンです。猛暑対策としてコースが札幌に変更されたオリンピックとは異なり、選手たちは東京都心をめぐるコースを走り抜け、国立競技場でフィニッシュします。

 

道下 美里 選手

 

3つのクラスで争われ、ガイドロープで結ばれた伴走者のガイドで走る視覚障害のクラスでは前回大会以降、世界記録を3回更新している女子の道下美里選手が他を寄せつけない圧倒的な速さを誇り、金メダルの最有力候補です。

 

永田 務 選手

 

さらに去年、パラ陸上の世界に飛び込んだ腕に障害のあるクラスの永田務選手は世界ランキング2位。

 

鈴木 朋樹 選手

 

このほか車いすのクラスには、世界選手権3位の鈴木朋樹選手が世界トップクラスの実力を備え、3つのクラスすべてでの日本のメダル獲得も期待されています。

真価問われる日本パラ陸上

夏の大会では初めて日本がすべての競技で金メダルなしに終わった前回、リオデジャネイロ大会から5年。日本選手団は全体で金メダル20個という目標を掲げています。その達成には、1964年の東京大会でパラリンピックに初参加して以降、最多の58個の金メダルを獲得してきた陸上での活躍が大切です。パラスポーツの認知度の向上と普及拡大の道筋をつけることができるのか、パラ陸上の真価が問われるときです。

 

 

東京2020パラリンピック パラ陸上の競技予定、最新情報はこちら

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!