ストーリーフィギュアスケート

フィギュアスケート女子シングル 世界との差はどこに?

2018-02-23 午後 0:00

フィギュアスケートの女子シングルで、日本勢は、宮原知子選手が4位、坂本花織選手が6位と健闘しましたが、2大会連続でメダルを逃しました。

4大会ぶりに出場枠が1つ減って、2人の出場となった今回の女子シングル。世界との差はどこにあるのか。フィギュアスケート担当の吉本有里記者がお伝えします。

【エース宮原知子選手 けが乗り越えつかんだ五輪】

「絶対跳べへん気がする」。

去年7月、京都出身の宮原選手が関西弁でつぶやきました。取材を続ける中で私が初めて聞いた弱音。このことばがオリンピックへの道のりの険しさを物語っていました。

去年1月に左股関節の疲労骨折が判明。一度は練習を再開しましたが、7月下旬に股関節に痛みが出て、再び氷上練習ができなくなりました。ジャンプの練習を再開できたのはシーズン開幕後の10月。

オリンピックの代表を争う年下の選手が次々と国際大会で結果を残す中、11月上旬まで試合にすら出場できない日々が続きました。それでも宮原選手はいらだつ様子も見せず、できることを黙々とこなしました。
6歳から指導する濱田美栄コーチは当時の様子をこう話します。

「泣き言ひとつ言わなかったし、ジャンプが跳べなかったらステップ、それも痛い時期があったら本当にまっすぐ滑るだけでもリンクに降りていた。ただひたむきに練習するあの子の気持ちに私も引っ張られた」。

 

全日本選手権4連覇で初の五輪へ

 

実戦復帰後は短期間で調子をあげ、12月の全日本選手権で見事4連覇を果たしてオリンピック出場を決めました。

「途中で心が折れることはなかったか」という私の質問に「なかった」と即答した宮原選手。そしてこう続けました。

「絶対にオリンピックに行きたいという気持ちと、けがで休んだ期間に経験したことを糧にまた違った自分を見せたい気持ちが強かった」。

まっすぐ前を見つめて話す宮原選手の意思の強さに驚かされたことを覚えています。そして、けがをしてからの日々をこう振り返りました。

 

「スケート人生で一番中身の詰まった重要な一年だった」。

大きなけがを乗り越えてたどりついた夢の舞台でした。

【急成長の坂本花織選手 快進撃で五輪へ】

今シーズンの途中から急成長を遂げて、オリンピックの切符をつかんだ坂本選手。持ち味は高く、そして遠くに跳べるダイナミックなジャンプです。

指導する中野園子コーチは、「なかなかあそこまで跳べる選手はいないし、男子並み。芸術的な要素もあるフィギュアスケートをスポーツだと思わせる演技ができる」と太鼓判を押します。

シニア1年目の今シーズンは、その持ち味を存分に生かしたプログラムで勝負に出ました。ショートプログラムで3つのジャンプすべてを演技後半に入れて高得点を狙うことにしたのです。

 

全日本選手権2位で初の五輪へ

 

後半は基礎点が高くなる反面、体力を消耗するため失敗のリスクが高まります。坂本選手はシーズン序盤、この後半のジャンプでミスを連発し、代表争いから遅れをとりました。

それでも「練習あるのみ」と、曲をかけて最初から最後まで演技を通す本番さながらの練習を繰り返しました。失敗すると曲が止まって最初からやり直し。ミスなく滑りきれるまで練習を続けることで、自信と体力をつけました。

 

そして11月下旬から始まった快進撃。グランプリシリーズアメリカ大会で2位に入ると、その勢いのまま全日本選手権でも2位に入って、オリンピック代表に選ばれました。さらに、大会前最後の実戦となった先月の四大陸選手権では宮原選手をおさえて初優勝。

 

「この勢いのまま突っ走りたい」と、最高の形でオリンピック本番を迎えました。

【メダルの壁①技の完成度】

日本の2人は、ショートプログラムでともに自己ベストを更新し、メダル圏内で後半のフリーを迎えました。

宮原選手は、フリーでも7つのジャンプすべてを決めて自己ベストを更新。演技直後には両手を力強く突き上げ、「自分のベストを出し切った」と会心の演技を見せました。

 

 

ではなぜ、メダルに届かなかったのか。

難度の高い4回転ジャンプを何種類、何本決めるかが勝敗を左右する男子と違い、女子シングルはほとんどの選手が同じようなジャンプ構成です。

フリーの演技で見てみると、ジャンプの難度などを示す基礎点は、宮原選手が62点84、銀メダルを獲得した個人資格で出場したロシア出身のエフゲニア・メドべージェワ選手が62点33。銅メダルを獲得したカナダのケイトリン・オズモンド選手が62点12と、わずかですが宮原選手が2人を上回っています。

 

 

しかし、できばえの加点も含めた完成度を示す技術点では、宮原選手が75点20、メドベージェワ選手が79点18、オズモンド選手が76点50と一気に差を広げられました。

 

ジャンプを成功させるだけでなく、高さや軸のぶれ、それにスムーズな着氷などのできばえでより多くの加点をもらう「技の完成度」がメダル獲得の明暗を分けた要因のひとつとなりました。

【メダルの壁②表現力】

 

さらに、表現力などを評価する演技構成点でもメダリストの3人に差をつけられました。

 

 

3人が5つの項目すべてで9点台を出して、75点以上を出しているのに対し、日本の2人は、宮原選手が71点台、坂本選手が68点台。

演技構成点は調子によって左右されにくいため、この点数の底上げがコンスタントに高得点を出す秘訣となります。

 

 

手足が長く見栄えがする海外の選手に対抗することは簡単ではありませんが、体全体を使って動きを大きく見せる工夫や、滑りのスピードの向上など演技構成点をあげることも、世界のトップ選手と互角に戦うためには欠かせません。

 

【4年後に向けて】

オリンピックは終わりましたが、世界と戦う舞台がすぐにやってきます。

来月イタリアで開かれる世界選手権です。オリンピックと同じ2人しか出場できないため、今回好成績を残し、来年の出場枠を「3」に増やすことが日本女子に課された使命です。

 

 

1人でも多くの選手が世界のトップ選手と同じ舞台で競い、レベルの高さを肌で感じることが、4年後の北京オリンピックに向けた強化のひとつになるからです。

次のオリンピック出場を目指すジュニアの世代では、女子でもロシアには4回転ジャンプを跳ぶ選手が現れ、日本にも難度の高い大技のトリプルアクセルを成功させ、4回転ジャンプも練習しているという15歳の紀平梨花選手がいますし、4年後はさらにレベルの高い争いになると予想されます。

今回の大会で見つかった「技の完成度」という技術面と「演技構成点」という表現面の両方を向上させ、3大会ぶりのメダルを狙うには、4年という年月は意外と短いかもしれません。

吉本有里 記者

ピョンチャン五輪 現地取材班
フィギュアスケート担当

 

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