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自転車の特徴がわかれば競技も楽しめる!? 東京オリンピック

2021-07-28 午前 11:50

東京オリンピックの自転車競技では、ロード、トラック、マウンテンバイク、BMXの4つの種目が行われます。

 

これらの種目で使われる自転車は、いずれも特別仕様の自転車ですが、私たちが一般的に使っているシティサイクル、いわゆるママチャリとはどのような違いがあるのでしょうか?

 

公益財団法人日本自転車競技連盟の業務部次長 佐藤勝喜さんに、それぞれの種目の概要と自転車の特徴を聞きました。

<ロードレース>
選手は前傾姿勢 スピード重視

2019年 READY STEADY TOKYO ロード

<ロードレースの概要>
東京オリンピックでは、公道を使用。東京都の武蔵野の森公園をスタートし、神奈川県、山梨県を通過して静岡県の富士スピードウェイまで1都3県を横断してゴールを目指す。男子244Km、女子147Kmのコースで順位を競う。スピードだけでなく、耐久力も求められる。

 

<ロードバイク> 
選手が使用するのは、ロードバイク。速い速度で長時間乗り続けられるように、ペダルをこぐ力を効率よくスピードに変えられる構造になっている。

 

左:ロードバイク 右:シティサイクル

<ロードバイク>
サドルが高く、ハンドルは低い

ロードバイクのサドルの位置は、シティサイクルと比べるとかなり高くなっています。このサドルの位置は非常に重要で、選手の足の長さや股関節の可動域に合わせ、専門家が入念に調節しています。ハンドルの位置が低いと、前傾姿勢になり、足に力が伝わりやすくなります。

ディスクブレーキが主流に

東京オリンピックのコースの下り坂は時速120キロ程度のスピードが出る可能性があります。また、急な雨など天候の変化に対応するためには、より高い制動力のブレーキが必要となります。そのため、ロードバイクでは、シティサイクルで採用されているような、タイヤをはさんで止める「リムブレーキ」に代わり、タイヤの中心にあるディスクを止める「ディスクブレーキ」が増えつつあります。

 

左:リムブレーキ 右:ディスクブレーキ

ギアは前後に チェンジは電動式

ロードレースではコースの高低差や風向きなどの影響を大きく受けるなかでも、一定の力でペダルを踏み続けなければならず、ギアをこまめに調節する必要があります。主流は前2段、後11段というギアですが、最近では前2段、後12段も登場しています。ギアチェンジは電動式で、ボタンひとつでより正確にギアを変えられるようになっています。

 

ロード競技では、選手たちがどのように自転車を操作しているのか意識しながらレースを観戦すれば、より楽しめるのではないでしょうか。

<トラック>
選手は止まらない!突き進む!

2021年 READY STEADY TOKYO 自転車競技 トラック

トラックの概要>
東京オリンピックでは、1周250メートル(長円形)、最大斜度45度のトラックを周回。個人、団体、短距離、長距離合わせて6種目が行われる。速さはもちろんのこと、団体でのレースではチームワークも求められる。東京オリンピックの会場は、伊豆ベロドローム。

<トラック用自転車>

東京2020プレビュー 自転車 トラック オーストラリア代表

ブレーキがない!

トラックでは、止まったり急にスピードを落としたりする必要がないので、ブレーキがありません!

チェーンが空回りせず丈夫で幅広

シティサイクルは、ペダルをこいでいないときも、チェーンが空回りして、前に進みますが、トラックの自転車は、空回りしないので、前進するためには常にペダルをこぐ必要があります。


スピード重視の構造であるロードバイクよりも、さらに前に進む感じがすると思いますよ。選手のかけた力が直接チェーンやギアに伝わるので、その負荷に耐えられるよう、チェーンは丈夫で幅が広く、ギアも厚くなっています。

 

サドルにパットがないものも

 

サドルには、パットがない自転車もあり、乗り心地は悪いです(笑)。

 

選手の快適さを犠牲にしてもスピードを追求するという、ストイックな構造といえるでしょう。

 

この自転車で、選手たちはどのくらいのスピードで走っているのでしょうか?

 


選手たちは、時速約70キロで周回しています。斜めになっても遠心力で落ちてこないと思われるかもしれませんが、実際には、時速30キロくらいでも、タイヤのグリップ力と前に進もうとする推進力があれば落ちずに進むことができます。

 

ただ、急な斜度の場合、こいでいるペダルがトラック面を引っかいてしまうおそれがあります。

 

そのため、ペダルとサドルの位置はトラック用の自転車はロードよりもさらに高くなっていて、選手によってはかなり前傾姿勢を取ることになります。終盤までは交互に先頭にたちながら競技は進みます。

 

どこでスパートをかけるのか、などの駆け引きが繰り広げられるのです。このような駆け引きや、選手たちが全力を尽くすスピード感が魅力です。

<マウンテンバイク>
耐久力がポイント 悪路に対応

2020 UCI マウンテンバイク W杯 ダウンヒル

<マウンテンバイクの概要>
自然の中に作られた全長2500m、高低差85mの専用コースをテクニックを駆使し駆け抜ける。クロスカントリーの1種目のみ。コースには岩場などもあり、レース中はパンクや故障などのハプニングがつきもの。東京オリンピックの会場は、オフロードコース「伊豆MTBコース」

頑丈さとしなやかさ 悪路を走破

マウンテンバイク(以下、MTB)の特徴は、なんといっても頑丈なところです。さらに激しいコースを登り降りしたり、岩を越えたりしなくてはいけないので、しなやかさも求められます。

 

 

例えば東京オリンピックのコースの場合、3mくらいの高さからジャンプしたあとスムーズに着地し、車体も車輪も異常なく、タイヤもパンクすることなく、続けて悪路を走っていかなければなりません。それが「頑丈さとしなやかさ」が求められるという意味です。

サスペンションがついている

サスペンションとは路面からの衝撃を吸収して、車体がダメージを受けるのを防ぐ役割をもちます。サスペンションがあることによって高低差のあるコースもしなやかに走ることができるのです。サスペンションの存在が、シティサイクルとのもっとも大きな違いですね。

 

サスペンション

パンクしにくいタイヤを使っている

MTBの場合、極端な高速よりも、悪路をいかに効率よく短時間で走れるかが重要になります。重視されるのは走行安定性です。グリップ力が強く、パンクしにくいタイヤになっています。

 

自然の悪条件にも耐えられる工夫

ほかにも、変速機が草に絡むのを防ぐため外を向かないようにしたり、水や泥をかぶっても影響が少なくなるようチェーンをコーティングするなど、MTBには自然を舞台にしたレースならではの工夫がなされています。

 

マウンテンバイク(左)の変速機は内側を、ロードバイク(右)の変速機は外側を向いている

<BMX>
小さな車体が飛んで跳ねる 

左:フリースタイル 右:レーシング

<BMXの概要>
BMXは、大きな起伏のある約400mのコースを走る「レーシング」と、曲面やジャンプ台のあるコースで、自転車を使ったアクロバティックなテクニックを競う「フリースタイル」の2種類。東京オリンピックの会場は、有明アーバンスポーツパーク。

テクニックとパワー

BMXは、そもそも「乗る」ことがあまり目的になっていません。でも、ふだんからシティサイクルに乗っている方であれば、サドルの位置が低いこと以外は、競技で使われる自転車の中では一番乗りやすいのではないかと思います。実際、サドルに座らず立ったままペダルをこぐという方法で、BMXを街乗りに使っている人もいます。

前ブレーキがない

レーシングの場合、8mの高さからスタートして全速力で坂を下り、とにかく前へ進むことが肝心です。そのため「止まる」ということは基本的に考えになく、ブレーキの目的はあくまでスピードの調整です。

 

レーシングのスタート  8mの高さから一気に下る

 

また、MTB同様、車体には頑丈さと走行安定性が求められます。スタート時には、トラック競技並みに選手が力をかけてペダルを踏むので、やわなホイールではしなってしまいますし、さらにスタート後にジャンプしてすぐに次の体勢を整える必要があります。そのためには安定して走れる性能が必要になるのです。

車体が小さい

2019年READY STEADY TOKYO - 自転車競技 BMXレーシング 長迫吉拓選手

 

車体が小さいのも特徴です。トリッキーな技を繰り広げる「フリースタイル」の場合、車体が小さくないと演技ができないですし、また「レーシング」の場合も、選手は狭い走路を密集した状態で400mくらい走ることになるので、大きな車体ではかえって取り扱いにくいでししょう。

サドルの位置が低い

赤枠がサドルの位置

 

競技中、選手は立ったまま。サドルに座ることがほぼないので、サドルは低い位置にあります。

シティサイクルでも、スポーツ感覚は、味わえる!

オリンピックで採用されている自転車競技と、それぞれの自転車の特徴を紹介してきました。どの競技に使う自転車も、目的に沿って作られていることがわかると思います。

 

一方で、シティサイクルには汎用性が求められるので、それぞれの競技に使うことは構造上難しいですが、コストパフォーマンスがよく耐久性も高い、非常にすぐれた乗り物です。

 

しかも、少しサドルを上げる、ハンドルを下げる、空気圧を高めにするなどの小技で、普段乗っているシティサイクルをスポーツテイストにすることもできるのです。一工夫をしてシティサイクルを乗りこなせば、自転車競技を身近に感じることができるかもしれません。

公益財団法人日本自転車競技連盟
業務部次長 佐藤勝喜

日本国内で開催されるさまざまな自転車競技大会に広く関わり、オリンピックや世界選手権などの遠征では日本代表選手を陰で支えている。

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