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特集 鉄人 玉鷲 ~押しを貫き、楽しんで~ 大相撲名古屋場所

相撲 2021年7月17日(土) 午前11:30

幕内最年長の36歳、そんな年齢は、みじんも感じさせない。13日目、玉鷲は宝富士を威力のある突き押しで押し切り、1年ぶりのふた桁白星をあげた。

 

「本当、久しぶりなんで、すごくうれしく思います」

 

そう言って笑う玉鷲だが、実はすばらしい記録を達成した。連続出場1359回、歴代7位の元関脇・寺尾(現・錣山親方)に並んだのだ。

 

 

19歳で入門してから17年余りにわたって1日たりとも休まなかった、まさに「鉄人」。けがはつきものである大相撲を取材していると、それがいかに偉大な記録かを実感できる。

 

 

「超えても超えた気がしないですよ。親方は本当に内容がいいので、自分はそこの圧力がないので」

 

玉鷲はあくまで謙虚だったが、今場所はその「内容」も非常に充実している。勝った10番のうち、「押し出し」が6番。持ち味である押し相撲の圧力が非常にさえていて、引く場面もほとんど見られない。

 

今場所、改めて胸に刻んでいることがある。

 

 

相撲の基本は押しだと、先代親方からよく言われました。何があっても、自分の相撲は押しなので、最後まで貫きたい。

 

先月(6月)、肝臓がんのために亡くなった元関脇・玉ノ富士、先代の片男波親方だ。先代師匠の教えを貫く思いが迷いのない押し相撲につながっている。

 

1979年大相撲秋場所 玉ノ富士(右)-北の湖

 

充実の理由はもうひとつ。相撲を「楽しんでいる」ことだ。11日目、新入幕の一山本に勝って勝ち越しを決めたあとだった。

 

「若手に勝っていかなくちゃ。それが楽しみ。残りもしっかり楽しんでやりたい」と笑顔を見せた。

 

土俵に上がれる喜びを感じながら自分の押し相撲を貫く。連続出場記録はそんな1日1日を積み重ねてきた結果でしかないのだろう。

 

 

「あまり意識していないので、自分の相撲を取って見てくれるお客さんに喜んでもらうことが一番だなと思います」

 

名古屋場所は残り2日。若々しく、相撲を楽しみながら「鉄人」は土俵に上がり続ける。

この記事を書いた人

清水 瑶平 記者

清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

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