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特集 宇良 目標達成のための選択 幕内4年ぶりの勝ち越し 大相撲名古屋場所

相撲 2021年7月16日(金) 午前11:30

執念で勝利をもぎ取った。そんな相撲だった。「がむしゃらに動けるだけ動いて勝機を見いだした」幕内復帰した宇良(前頭13枚目)。たび重なるひざの大けがから再起を目指す中で、ある決意をしていた。「(技だけでなく)しっかり力で対抗できるようにしたい」

 

 

強く当たって前に出る取り口を磨いてきた。体重も入門した6年前より、およそ40キロ増やし143キロ。今場所は四つ相撲や突き押しなど以前の幕内の土俵では、あまり出さなかった攻めを随所に出している。

 

12日目の一番は大関経験者の栃ノ心(前頭12枚目)との対戦だった。

 

身長1メートル91センチ、体重177キロ。身長で15センチ高く、体重では30キロ以上も重い相手は、まわしを許すと一気に勝負を決められかねない実力者だ。

 

 

真っ向勝負を挑むのか、それとも・・・。会場で私はそんな気持ちで取組を見守った。注目の立ち合い、宇良は正面からぶつからず、右に動くことを選択した。そして左腕をがっちりつかみ、持ち味を発揮し、ぐるぐると動き回った。

 

 

そこから体勢を崩し・・・。最後は巨体の栃ノ心を突き落とし、白星をもぎ取った。この一番に限っては意識していた力勝負を捨て、がむしゃらに戦った。

 

 

技を出したときの勢いで、みずからも体が1回転し土俵下に転落。ここでも見せ場を作って、しっかり受け身を取って見せた。

 

 

よほどうれしかったのだろう。顔を上げた際には喜びをかみしめるような、ほっとしたような表情を見せた。

 

幕内後半の審判長を務めた高田川親方(元関脇安芸乃島)も「一番、一番、精いっぱい取っている。きょうも最後まで諦めない宇良らしい相撲だった」と高く評価した。

 

取組からおよそ30分後、宇良は冷静だった。


「どちらかと言うと、“まだ終わってない”という思いのほうが強い。まだ残りの相撲があるから、そっちの方を集中して頑張りたい」

 

 

平成29年夏場所以来、およそ4年ぶりとなる幕内での勝ち越し。場所前から何度も口にしていた目標は12日目に達成した。


残り3日、さらに白星を重ねて番付を上げ、来場所は技と力を融合した相撲で上位陣をきりきり舞いさせる宇良を見たい。

 

 

 

この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者

坂梨 宏和 記者

平成21年NHK入局 福岡県出身

長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。

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