特集 平幕 豊昇龍 偉大な元横綱の背中を追いかけて 大相撲名古屋場所

取組後、はじけるような笑顔で語った。「うれしいです。これまでとは違いますね」。
前頭5枚目・豊昇龍(モンゴル出身、22歳)。11日目に大関・正代を破っての勝ち越しだ。初めて知った人でもプロフィールと顔写真を見れば、ある人物を思い浮かべるのではないだろうか。
25回の優勝を果たした元横綱・朝青龍のおいだ。
豊昇龍が似ているのは顔だけではない。高い身体能力を生かした多彩な取り口とあふれんばかりの闘争心。土俵上の姿も元横綱をほうふつとさせる。
正代との一番もまさにそんな相撲だった。「しっかり当たって、前に攻めたいと思っていた」
立ち合いで圧力をかけられ土俵際に追い込まれたが、グッと下半身の強さで両足に力を込めてふんばる。
そこから一気に前に出ただけでなく、さらに足を絡ませる粘り。最後は寄り倒しで大関を破った。
「子どものころからテレビで(朝青龍の)相撲を見て、本当にすごい人だと思ってきた。おじに褒めてもらえるように頑張りたい」
偉大なおじに認めてもらいたい。土俵上で豊昇龍が勝利への執念を見せる原動力の1つだ。
その元横綱も本場所中はおいの相撲が気になっているようだ。頻繁にツイッターを更新。
勝ったときには「今相撲見ました。いいんじゃない?がんばれ」。一方、負けた日には「立ち合い全然、まず立ち合い覚えること!」。歯にきぬ着せぬつぶやきが続く。
昨夜(14日夜)も更新。今場所の相撲内容に触れたのは初めてだ。「勝ち越し!まずおめでたい。あと勝て!」残り4日間を全勝という熱い激励だ。
(記者) 「次の目標は2けた白星か?」
(豊昇龍)「口には出さないですけど、思っていることはあるので、頑張りたい」
はっきりと示さなかった心の内には、何があるのかはわからない。ただ尊敬し背中を追いかけるおじを感心させることだとしたら、そう簡単なことではないのだろう。真意は何なのか、迫ってみたい。
この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者
平成21年NHK入局 福岡県出身
長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。