ストーリー野球

プロ野球 ソフトバンク モイネロ投手の信念「深く考えない」

2021-07-16 午後 02:00

彼がマウンドに上がるとソフトバンクのファンは安心感に包まれる。一方、相手のファンからは「やっぱりきたか」とため息まじりの声が聞こえる。彼の名は「モイネロ」。8回という重要な場面で敵を圧倒し、ねじ伏せる彼の信念は、「深く考えない」ことだった。

相手を“絶望させる”投球

試合の終盤、8回がモイネロの持ち場。僅差でしびれる展開の時も多い。振り下ろされる腕から繰り出されるのは150キロ台後半の「ストレート」。そして打者がのけぞるほど大きく曲がる「カーブ」。彼が好調なときはヒットはおろか、バットに当てることすら難しいように見える。敵の絶望感は、想像に難くない。

 

(2020年11月3日 通算100ホールドを達成したモイネロ投手)

 

その“絶望感”を如実に示すデータがある。最優秀中継ぎのタイトルを獲得した昨シーズン、モイネロは48イニングを投げ、奪った三振は「77」。1イニングあたりの奪三振の数は平均1.6個と驚異的な成績だ。そんな左腕を1イニングで攻略するのは至難の業だ。

モイネロ投手

どんな展開でも8回を0点に抑えて帰ってくることで、8回ウラや9回の攻撃につながったりすると思う。責任重大な役割をやらせてもらっているという実感もあるし、それに対しての責任も感じている。

モイネロが生む「厚み」

(7月9日に1軍合流したモイネロ投手)

 

モイネロはことし、母国キューバの代表として、オリンピックの予選に出場するために一時チームを離れた。この間、8回は若い投手が務めて何とかしのいできた。しかしモイネロがいると、この若い投手は7回などにまわすことができ、継投に厚みが生まれる。工藤監督も、7月にモイネロがチームに帰ってくると安心感を口にした。

工藤監督

彼がいてくれるのと、いてくれないのとでは全然違う。彼がいてくれるだけで、先発投手が6回まで投げてくれれば、7回は多少ピッチャーをつぎ込んで抑えることもできる。そうすると、チーム全体として『よし、きょうはいける』という空気になる。

キャッチャーとの会話

モイネロがピッチングをする上で大切にしているのが「キャッチャーとの会話」だ。7月11日の首位・オリックスとの試合。4対4と同点の8回にマウンドに上がったモイネロは、ワンアウトからヒットとフォアボールで満塁のピンチを背負う。

 

(7月11日 甲斐と肩を組むモイネロ投手)

 

それでも5番のジョーンズを打ちとってツーアウトとし、続くTー岡田を打席に迎えたとき、モイネロはキャッチャーを呼んだ。肩を組む様子はまるで友達のよう。キャッチャーとの親密感が大切なのだという。

モイネロ投手

このバッターはこうだから、こういうボールで攻めていこうとか、そういうのを日本語で話す。「高め」とか「低め」といった単語は自分も分かるし、拓也(甲斐選手)も繰り返してくれるので。

 

Tー岡田から三振を奪い、ワンアウト満塁のピンチを切り抜けた。打線はこの直後、3点を奪って、モイネロは今シーズン初勝利を手にした。

「深く考えない」という信念

「どうして大一番で力を発揮できるのですか?」この問いに対するモイネロの答えはいたってシンプルだった。

 

モイネロ投手

深く考えないというのが大事。

 

野球選手の中で、深く考えない人がいるのだろうか。モイネロは続けた。

野球は自分にとっては『仕事』だが、自分自身が好きな『スポーツ』でもある。スポーツをしっかり楽しむという思いで8回の場面に立っている。もちろん責任感はあるが、その中でプレッシャーを自分にかけすぎてもいい仕事はできない。

 

ピッチャーの中には、自分が登板した際の映像を見て次回に生かそうとする選手もいる。モイネロは、内容が悪かった登板の映像は見ないようにしているという。

 

登板したときになぜ悪いのかは分かるし、改めてビデオを見る必要はない。いい登板のビデオを見て、次もそういうピッチングができるようにというのを考えればいい。とにかく精神状態をポジティブに保つのがキーになっている。

家族のためにも

モイネロが力を発揮できる要因がもう一つある。1万2000キロ離れたキューバで暮らす家族の存在だ。

 

モイネロ投手

キューバには妻と2人の子どもがいる。ふだんから電話で子どもたちが何をしてるとか、『きょうは走ったよ』といったささいな会話をする。家族にエネルギーをもらうことも多いので、自分にとってはすごく大事な存在。

 

(ちゃめっ気を見せるモイネロ投手)


インタビューの中で、通訳にマイクを向けるそぶりを見せるなど、ちゃめっ気を見せてくれたモイネロだが、マウンドに上がるとその目は変わる。4年連続日本一のチームは想像以上の苦戦を強いられているが、シーズンはまだ前半戦を終えたばかり。相手に「あぁ、モイネロか・・・」と言わせるピッチングで、チームを上昇気流に乗せる。そのために、キューバから来た5年目は腕を振り続ける。

モイネロ投手

後半戦が始まれば、より重要な試合が増えてくると思う。そのためにもオリンピックで中断する1か月を有意義に過ごしたい。

この記事を書いた人

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福原 健 記者

平成30年NHK入局。ソフトバンク担当2年目。

スマートフォンの野球ゲームでも終盤はモイネロ投手に頼っています。

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