ストーリー野球

"大谷翔平選手 入団の舞台裏" 決定の瞬間 GMがずっこけたワケとは

2018-03-26 午後 0:00

大谷翔平選手の入団が決まった大リーグ・エンジェルス。全30球団のうち20余りもの球団が獲得に乗り出すほどの激しい競争を見事、勝ち抜きました。

 

最終的に入団が決まるまでの交渉の内容については、これまで、ほとんど明らかにされてきませんでした。あの時、何があったのか?取材を進めるうちに少しずつ明らかになってきました。(アメリカ総局 雁田紘司記者)

“ザ・ラッキーセブン”に選ばれたエンジェルス

 

アメリカではテレビ・ネット・新聞で「Ohtani」の文字を見ない日がないぐらい、契約交渉の行方に注目が集まりました。

そんな中、大谷選手側はまず、面談する球団を絞りました。ヤンキースやレッドソックスといった伝統と資金力のあるアメリカ東部の球団は選ばれず、早々に獲得競争から脱落。

パドレスやマリナーズ、レンジャーズ、カブス、ジャイアンツ、ドジャースに加え、エンジェルスも面談に進むことができました。この7球団について、アメリカのメディアが名付けたのは“ザ・ラッキーセブン”(The lucky seven)でした。

極秘のうちに始まった大谷選手と各球団の面談

(大谷選手の代理人 ネズ・バレロ氏)

 

12月4日 ロサンゼルス

この日から、大谷選手と事前に絞られたエンジェルスを含む7球団の面談が秘密裏に始まっていました。

場所は、大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏の会社が入るビルの中でした。

 

バレロ代理人の事務所が入ったビル

 

12月5日 ロサンゼルス市内のホテル

面談が始まって2日目。NHKの取材班はロサンゼルス市内の代理人の事務所が入ったビル近くのホテルでマリナーズやパドレスなどの球団関係者の姿を確認し、取材を始めました。

このホテルは、各球団の控え場所となっていました。取材では、断片的な話を聞くことはできましたが、交渉がどのように進んでいるのか、当時は、ほとんど明らかにされませんでした。

面談は突然に! 焦ったGM

(ビリー・エプラーGM 右から2人目)

 

12月3日 午前11時15分

 

実はその2日前。エンジェルスのビリー・エプラー ゼネラルマネージャー(GM)にバレロ代理人から電話がありました。

バレロ代理人

明日、夜に面談を行いたい。

 

エプラーGMは、この時初めて、大谷選手と直接、面談できると知りました。指定された日時は、翌日の午後7時でした。

エンジェルスの球団スタッフは、この時までに面談で行うプレゼンテーションの準備をしてきましたが、この電話を受けてからは、まさに寝食を忘れて最終準備を行うことになりました。

大谷選手とエンジェルスの面談 寝てないGM

12月4日 午後7時過ぎ

 

ロサンゼルスの空が暗くなってから始まった大谷選手とエンジェルスの面談。エプラーGMは、入念に準備を行ったため、3時間あまりの睡眠で臨みました。

作成したVTRで球団を紹介したほか、資料を使ってどのようなチームであるかを説明しました。大谷選手は球団側の説明を聞き入っていました。

 

 

さらに大谷選手はもっとチームのことを知ろうと、質問を行い、その答えを熱心に聞いていました。大谷選手の自己紹介も行われ、自分の好きなこととして、読書、トレーニング、野球のことを考えること、野球について学ぶこと、それに家族と過ごすことだと説明しました。

 

この面談はおよそ2時間行われました。

大谷選手の入団を待ち望むスター選手からの連絡

(エンジェルスのスーパースター マイク・トラウト選手)

 

12月4日 午後10時ごろ

 

面談からおよそ1時間後。エプラーGMのスマートフォンに電話がありました。相手はマイク・トラウト選手。26歳の若さでアメリカンリーグの最優秀選手に2回輝いているエンジェルスのスター選手です。大谷選手へのプレゼンテーションがうまくいったかどうかを聞くために、連絡をとりたがっていたのです。

トラウト選手

“What’s he like?  What’s he like?  what’s he like?”

彼はどんな感じでした? どんな様子でした?

エプラーGM

“He’s like you, he’s simple, humble and he wants to be great.”

君と似ているよ。考えていることはシンプル。偉大な選手になりたがっている。

 

この日から、エプラーGMはなかなか寝つけず、眠りも浅い日が続きました。真夜中に目が覚めては“エンジェルスが選ばれるのか?それとも他の球団か?”考えを巡らす日々が続きました。

果報も突然に! ずっこけた!GM

 

12月8日 朝

面談かバレロ代理人ら4日後の朝。エプラーGMにバレロ代理人から電話があり、今後のスケジュールについての説明がありました。

バレロ代理

ショウヘイの契約先が決まるのは、今日かもしれないし、明日かもしれない。もしかしたら10日後かもしれないが、交渉自体について連絡するのは、これが最後になる。

エプラーGM

OK。

 

エプラーGMは、今後、連絡がなければ、エンジェルスは移籍先としては選ばれなかったということになると理解していました。

電話からおよそ1時間後。エプラーGMが部下の部屋に入って、ドアを閉めたとき、スマートフォンに再び、バレロ代理人から着信がありました。

バレロ代理人

そうだ、ひとつ言い忘れたことがある。

エプラーGM

何ですか?。

 

スケジュールについての補足説明があるのかと思った瞬間でした。

バレロ代理人

ショウヘイ・オータニが、エンジェルスに入団したいそうだ。

 

エプラーGMは、バレロ氏の言葉の意味を理解しようとしていました。この短い会話は、音量が大きかったため、やりとりが電話からもれていました。近くで聞いていた部下は、頭を手で覆い「信じられない」とジェスチャーで、喜びをいち早く表していました。

それを見ながら、ソファーに座ろうとしたエプラーGM。しかし、座り損ねて、ずっこけました。見かねた部下がすぐに駆け寄って、エプラーGMを起こしました。

選手のトレードや解雇。常に冷静さを求められる球団のチーム編成トップが、驚きのあまり部下に見せてしまった滑稽な姿でした。なぜ、こんなことが起きたのか。理由は “アドレナリンが出過ぎていたから”このあと、エプラーGMは、オーナーにすぐに電話しています。

エプラーGM

“We got him, we got him, he’s ours”

やりました! やりました! うちの選手になります!

 

これ以上は、何を言ったのかを覚えていないほど、興奮していたといいます。

球団の総力を上げて獲得できたからこそ!

 

エプラーGM、自らが ”テレビに出てくるシーンとしては最高だった” と語った、この状況。

球団スタッフの中には、アメリカで最も重要な休日の1つ、感謝祭の休日を返上して準備を行った人や、エプラー氏のもとに、朝5時に作成中の資料を2回も提出してきた人もいました。

総力をあげた結果、大谷選手を獲得した唯一の球団。成果が大きかったからこそ生まれたエピソードでした。

雁田紘司

アメリカ総局記者

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