特集 炎鵬「自分のけがなんて、大したことない」 大相撲名古屋場所

「心配されている中で、どういう気持ちで取組に臨んだ?」「もう(体は)特に変わんないですね」3日目の取組後、十両の炎鵬は何事もなかったように淡々と話した。
その前日の2日目、予期せぬ事態に見舞われた。貴源治との激しい相撲で頭から土俵下に激しく落ちた。同体となったが、取り直しの一番は行われなかった。
“目の焦点が定まっていなかった”(審判)と炎鵬が脳しんとうの疑いで不戦敗となったのだ。力士の安全を守ろうと、ことし1月に変更された審判規則が、十両以上では初めて適用されたケースだった。
その後、炎鵬は病院で診察を受けたという。
“頭は大丈夫なのか”
多くの相撲ファンや周囲が心配する中での3日目。
「名古屋場所にかける思いは今まで以上に強い。迷わなかった」
いつものように土俵に上がった炎鵬は、貴健斗と対戦。持ち味の動き回る相撲で脳しんとうの影響を、まったく感じさせず、持ち味を存分に発揮した。
敗れはしたが、館内のファンからは温かい拍手が送られた。
兄弟子の横綱 白鵬とともに
炎鵬には今場所の土俵に上がり続けなければならない特別な理由がある。6場所連続の休場から復帰した兄弟子、横綱・白鵬が進退をかける意向を示して場所に臨んでいるからだ。
「横綱の背中を見て自分はここまできた。横綱を信じてついて行くだけだ」
さらに今場所は、志願して横綱の付け人を務めている。理由は「ないしょ」としているが、そばに居続けて一緒に戦いたいという強い思いがあるのかもしれない。
「横綱も自分のことで大変。心配かけないように。横綱に比べたら自分のけがなんて全然、大したことない。(連勝の横綱は)やっぱり『改めてすごいな』というひと言です」
その横綱は初日から3連勝。立ち合いの厳しさも戻りつつあるように見える。
白鵬は相撲を取った炎鵬について「『お帰り』と言った。(前日の)怖さがあったのかなと思うが、またあすから良くなっていくんじゃないかな」。
ことし初場所から十両での相撲が続く炎鵬だが「まずは1日、一番。(横綱と)一緒に強くなっていけたら」。
ここまで1勝2敗も、まだ序盤戦。偉大な兄弟子の背中を追いかけながら巻き返しを図る。
この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者
平成21年NHK入局 福岡県出身
長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。