特集 横綱 白鵬 “白星”は良薬 大相撲名古屋場所

「白星が一番の薬」。取組後のオンライン取材。今場所に進退をかける意向を示している白鵬は時折、明るい表情を見せながら心境を口にした。3日目から途中休場した春場所は、1回も取材場所に姿を見せなかっただけに初日からの連勝で好感触をつかんだようにさえ映る。
今場所2日目の相手は遠藤。13勝2敗と大きく勝ち越している。ただ、先場所は優勝した照ノ富士を破るなどして、前頭筆頭まで再び番付を上げてきた。侮れない。立ち合いはもろ手気味の形。
遠藤に前まわしを取られたかと思われたが、素早く体を入れ替え、前傾姿勢になった遠藤を上手出し投げで土俵の外に追いやった。勝負を決めたあとの表情は厳しい顔つきだった初日とは違い、どこか涼しげだった。
取組後は「勢いというか判断のスピードもあったのではないか。(相手を)見ていく。そこから流れに任すという形だった」と余裕すら感じられた。
日本相撲協会の八角理事長も「集中してやっている。勝ち方、パターンが多い。(この2連勝で)精神的にも楽になると思う」と評価する内容だった。一方で「まあ、きのうよりきょう。またあしたって感じじゃないかなと思う」とも語り、裏を返せば、まだ本調子でないとも受け取れる。
しばらく本場所の土俵から離れていた白鵬にとって、今は白星が一番の良薬だろう。ただ“良薬は口に苦し”ということばもある。
残り13日間の取組では土俵際に追い込まれ、危ない相撲もあるだろう。ただ、いろいろな種類と味の良薬も、飲み続ければ士気も状態も上がってくるはずだ。
横綱が苦みも我慢し良薬を口にしていけば、結果として本来の横綱の姿を取り戻すことにつながるのかもしれない。
この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者
平成21年NHK入局 福岡県出身
長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。