ストーリー野球

電撃トレードの裏側

2020-06-30 午後 03:11

プロ野球開幕直後の6月25日、ファンを驚かせる“電撃トレード”が発表されました。楽天のムードメーカーで、勝負強いバッティングでチームを引っ張ってきたゼラス ウィーラー選手が、巨人に移籍することになったのです。

 

なぜ…と取材をしてみると、球団には確かな計算と配慮がありました。

チームの人気者

ウィーラー選手

 

平成27年に楽天に加入したウィーラー選手。大リーグ時代、ヤンキースでイチロー選手と一緒にプレーした実績があり、1年目から打線を引っ張りました。特に3年目の平成29年には、自己最多となる31本のホームランを打ち、ベストナインにも輝く活躍で、チームの4年ぶりとなるクライマックスシリーズ進出に大きく貢献。

チームが得点した時には誰よりも早くベンチ前に飛び出して喜ぶ明るいキャラクターで多くのファンの心をつかみ、“楽天の顔”の1人でした。

プロとしての計算と“親心”

その一方で、32歳で迎えた昨シーズンは打率2割4分3厘、ホームラン19本にとどまり、チームは補強に動きました。

 

鈴木大地選手

 
フリーエージェントを行使した同じサードを守る鈴木大地選手、そして外国人枠を争うことになるステフェン・ロメロ選手を獲得したのです。

 

ステフェン・ロメロ選手

 

シーズンに入って新戦力の2人が期待通り活躍する一方で、ウィーラー選手は来日6年目で初めて開幕を2軍で迎えました。とは言え、昨シーズンまでの実績や存在感、主力がけがなどで離脱した場合の備えを考えると、いきなりトレードという選択に驚いた人は少なくないはずです。
 
インターネット上でも「人の活躍を自分のことのように喜べるウィーラー選手は太陽のような存在でした」などと惜しむ声が相次ぎました。なぜトレードに踏み切ったのか。チームの編成を担う石井一久ゼネラルマネージャーに尋ねてみると、選手に対する“親心”が見え隠れしました。

 

石井一久 ゼネラルマネージャー

ウィーラー選手のように実績のある選手が1軍で出場できないのは心苦しさもあった。本人の意見を尊重したうえで、こちらから出場機会が得られる環境を探した。

トレードは適材適所

この言葉を聞いたとき、石井ゼネラルマネージャーがある選手についても同じように話していたことを思い出しました。主力のキャッチャーとして13年間、楽天を支え、昨シーズンかぎりで退団した嶋基宏選手です。

 

嶋基宏選手

 

石井ゼネラルマネージャーは、若手の台頭で1軍での出場機会が減っていた嶋選手と、去年のシーズン中から話し合いを重ねたといいます。

「彼は特別な存在。チームでの貢献度を考えると、2番手のキャッチャーで残ってくれ、とは言えない」。“1軍で勝負したい”という嶋選手の思いを尊重し、みずから古巣であるヤクルトに 打診したというのです。移籍した嶋選手は今シーズン、開幕戦で先発出場を果たすなど新しい環境で活躍の場を見いだしています。石井ゼネラルマネージャーは、選手時代に大リーグを含めて4度移籍したみずからの経験を踏まえ、選手の“適材適所”を考えているといいます。

石井一久 ゼネラルマネージャー

トレードや移籍は、否定的に受け止められることが多いが、悪いものではない。ほかの球団であっても、選手が活躍できる環境を探してあげるのが我々の仕事だと思う。

新天地で輝きを放つ選手

石井ゼネラルマネージャーがおととし9月に就任して以降、トレードなどで楽天から移籍し、新天地で花を咲かせている選手は少なくありません。

 

広島にトレードで移籍した菊池保則投手は、楽天の11年間で、1軍での登板は69試合にとどまりましたが、移籍1年目の昨シーズンからリリーフの勝ちパターンを支える“セットアッパー”に飛躍し、58試合で防御率2.80の好成績を残しました。

 

菊池保則投手

 
また、2軍で昨シーズンまで2年連続で最多セーブに輝きながら、1軍でなかなか活躍できなかった小野郁投手は、移籍先のロッテで6月26日にプロ初勝利をあげました。

 

小野郁投手

 
広島に移籍した三好匠選手は高い守備力を買われて試合終盤に起用され、チームを救う好プレーを連発しています。

 

三好匠選手

 

そしてウィーラー選手も、「東北での時間を忘れません。ただ、私にはプレーヤーとしてまだ、やらなければならないことがある」と今後の活躍を誓っています。

 

ウィーラー選手

 

お気に入りの選手が突然、チームを離れてしまうのは、ファンにとって寂しいことに違いありません。それでも、移籍という選択が妥当だったのかどうか、新天地での輝きぶりで見定めるのも、野球の楽しみ方の1つかもしれません。

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