ストーリーその他のスポーツ

東京オリンピックの安全は本当に守れるか!? “バブルには穴が空く”

2021-06-28 午後 07:25

「バブルには穴が空く」ある感染症の専門家が、はっきりと言いました。

 

東京オリンピック・パラリンピックの開催で鍵を握るとされている感染対策の「バブル方式」ですが、厳重な対策が取られたはずの国際大会でのクラスターが相次いでいます。安全で安心な大会は本当に実現できるのでしょうか。

“バブルの穴” 相次ぐショック

 

6月、多くの大会関係者に不安を与えるニュースが飛び込んできました。ブラジルで開催しているサッカーの南米選手権「コパ・アメリカ」で、選手やスタッフ、合わせて82人が新型コロナウイルスの検査で陽性と判定され、その後も増え続けたのです。

 

 

南米ナンバーワンを決める注目の大会の主催者は「感染対策は厳格に行っている」と声明を出し、関係者の入国や移動の前に検査をして行動範囲を厳しく限定する、いわゆる「バブル方式」の対策を取っていたと主張。しかし、一部のチームがルールに従わなかったことを認めるなど、バブルに穴が空いていたことは明らかでした。

バブル方式とは?

 

「バブル方式」は選手を清潔な「泡」の中に隔離するように、という意味で、東京オリンピック・パラリンピックでも感染対策の柱となります。

 

選手は入国時に検査を受け、陰性と確認されたあとも専用のシャトルバスなどで選手村や競技会場といった必要な場所にしか行くことができず、握手やハグは禁止、食事はなるべく1人、外出禁止などの行動制限が課せられます。ところが、こうした「バブル」方式を取り入れた国際大会で、感染が広がる事例が次々に明らかになってきました。

“バブル崩壊?” なぜ起きた

 

ことし4月、カザフスタンで行われた東京オリンピックアジア予選(9日~11日)とアジア選手権(13日~18日)の2つの大会。終了後に、参加した韓国の選手団のうち、29人の感染がわかったと韓国のマスコミが報道。日本代表も万全な対策を取っていながら現地で過ごした選手やコーチ、8人の感染が明らかになりました。

 

チームに同行した男性がNHKの取材に証言しました。

 

チームに同行した布施鋼治さん

フリーライター・布施 鋼治 さん

日本選手は常にマスクを付けて食事も1人か2人、静かに食べて厳格に対策していた。しかし、国によってはマスクを付けていないし、大声でしゃべり合っていた。

 

食堂や練習場でマスクを下ろして話すだけでなく、外出禁止を破って買い出しに行く選手も見かけました。主催者からは「感染対策を行うように」というルールが競技団体を通じて周知されていたはずでしたが、守られていない国もあったのです。

 

フリーライター・布施 鋼治 さん

ルールを条文化して、守ってねと伝えたと思うが、それが徹底されていない。“バブル”と言ってもいつでも破ることができる状態。

 

異なる文化や習慣の選手たちに対策を徹底させることの難しさが浮き彫りになりました。

“厳しい罰則”と“選手の覚悟”

一方で、感染を抑え込んだ大会もありました。

 

竹内 智香 選手

 

スノーボードアルペンでは、去年(2020年)12月から3月にかけてヨーロッパなどで、11回のワールドカップが行われましたが、クラスターは1件も確認されませんでした。そのほとんどに参加した竹内智香選手(37)。冬のオリンピックに5大会出場している第一人者は厳しい対策について明かしました。

 

竹内 智香 選手

どこで感染するんだろうっていうくらい徹底していました。ほかの国の人と会話は出来ないし、表彰式すらマスク。スタートからゴール以外はマスク。PCR検査ももう何十回やったんだっていうくらい。何回も鼻血を出しました。

 

 

PCR検査は2~3日に1回、マスクは医療用です。ルールを破った選手には厳しいペナルティーが課され、食堂のビュッフェでマスクをせずに食事を取りに行った選手は、翌日、レースに出場できませんでした。


竹内 智香 選手

ストレスはストレスでした。でも今の日本では、それくらい厳しくしないと応援されるオリンピックにはならないと思います。こういう状況の中で、いろんな人の努力や我慢があってオリンピックが成り立っていることを考えれば、選手もある程度の我慢はできるのではないか。

 

多くの人々が日常生活で制限を受ける中で開催するのであれば厳しいルールの運用とともに、選手にも、それを受け入れる覚悟が求められる。5回ものオリンピックを経験してきた竹内選手だからこその重みのある言葉でした。

“バブルの中と外”を行き来するボランティア

ボランティアの海東靖雄さん

 

感染対策でカギを握る、もう1つの存在が、およそ7万人の大会ボランティアです。会場で選手の誘導や道具の管理など様々な役割を担いますが、その多くが自宅から会場に通うことになります。清潔とされる「バブル」の中と外を行き来することになるのです。

ボランティア・海東 靖雄 さん

ずっとバブルの中にいるわけにはいかない。バブルの中と外の世界を媒介する存在にならないかという不安はあります。

 

千葉県の海東靖雄さん(55)は大会ボランティアとして陸上競技の支援を担当し選手の近くで業務を行う機会も多くあります。


「バブル」の中に入る際は厳しい検査体制が敷かれ、各役割によって活動する範囲を限定する「ゾーニング」を徹底するなど、対策が行われる予定ですが、それで十分なのか不安は拭いきれません。

 

ボランティア・海東 靖雄 さん

具体的にどういうことをやるのかまで踏み込めてない。ルールを決めて“あとは個人個人でちゃんとやってね”だけだと、個人で受け取り方も違ってくる。それをどうやって徹底するか、徹底的にガードするためのさらなる仕組みとか、具体的なところがもうちょっとないと。バブルがあるから安心だねっていう状況にならない。

 

ボランティアをしてすぐに職場に行くこともある海東さん。万が一、感染してウイルスを持ち込まないかという不安やみずからの行動を周囲にどう思われるのか、複雑な心境を吐露しました。

“バブルに穴は必ず空く”

日本感染症学会理事長で東京大学医学部付属病院の病院長も務める四柳宏さん。大会ボランティアへの感染対策の講習をする中で不安の声を多く聞いてきました。

 

日本感染症学会理事長 四柳 宏 さん

“感染するのではないか”“選手にうつすのではないか”そういった声は非常に多い。具体的な対策を示すとともにボランティアのワクチン接種率を高めること、検査態勢を充実させることも必要だ。いずれにしろバブルには必ず穴が空く、という前提で対策をすべきで、その穴をどう埋めていくのかを考えなくてはならない。

 

「バブル」は非常にもろいもの。クラスターが発生した国際大会を見ても、専門家の指摘は正しいと思わざるを得ません。

 

成田空港を出るウガンダ代表選手団

 

東京オリンピックの事前合宿のために来日したウガンダの選手団からは、成田空港に到着した際の検査で1人の感染が確認されたほか、空港で陰性とされた選手1人(6月25日現在)もその後、感染がわかりました。懸念は現実味を帯びてきています。

 

「バブル」を守るためには、選手やボランティアの協力のもと厳しい対策に実効性を持たせていくことはもちろん、“穴が空いたとき”に備えた適切な対応が不可欠です。

 

「安全安心な大会」の実施を掲げてきた国・都・組織委員会は、その根拠となる具体的な対策を1つ1つ示していくことが求められています。   

この記事を書いた人

画像alt入ります

清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

画像alt入ります

今野 朋寿 記者

平成23年 NHK入局
岡山局、大阪局を経てスポーツニュース部でフィギュアスケートやゴルフを担当。一児の父として、子育てにも奮闘中

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!