ストーリー相撲

遠藤「毎日、一番に集中してやるだけ」大相撲名古屋場所へ決意

2021-06-29 午後 07:15

遠藤は夏場所13日目に貴景勝、14日目に照ノ富士と優勝を争う2大関を連破しました。そしてみずからも加わる25年ぶりの優勝決定ともえ戦の可能性まで演出し、千秋楽を盛り上げた立て役者となりました。

 

元NHKアナウンサーの刈屋富士雄さん

 

度重なるけがとつきあいながらの活躍の秘話を元NHKアナウンサーの刈屋富士雄さんが聞きました。

小さいころからの教えが生きた照ノ富士戦

夏場所14日目  遠藤(右)が下手投げで照ノ富士を破る

 

ーーまず14日目の照ノ富士関戦をどのように思っていますか。

 

勝ったことが何よりよかったという感じです。向こうは大きいですから自分が大きい相撲を取ったらおかしなことになりますので、下から、下から攻めて動いて勝てましたね。

 

ーー相手が小手に振ってくるということは頭に入っていますね。

 

そうですね。振られてから流れで外掛けにいきました。外掛けで決まれば問題はなかったのですが、掛け投げのようにはね上げられることも予想していました。

 

 

ーー天井まで見えたのではないかと思います。

 

はい。私は体格の差で上から覆われるようになって、左足一本でどこまで耐えられるかという状態でした。小さいころからうるさく言われていた倒れるときに手をつかないとか、そういうことが勝負を分けるときに生きたと思っています。

 

ーー普通だったらもっと早く死に体になっています。ところがひっくり返りながら左足が生きていました。あの体勢になりながらも生きた体だったので行司差し違いになったのだと思います。最後まで投げるという意識がありましたか。

 

投げるというより土俵際の攻防になったとき、最後は自分の片足で踏ん張ったこととか身のこなしとか、小さいころから教えてもらったことが生きたと思います。

 

物言いの協議が終わるのを待つ遠藤(左下)

 

ーー物言いがついて、どちらが有利だと思いましたか。

 

際どいかなと思いました。手なのか自分のまげなのか、死に体と判断されたのか。向こうに軍配が上がったので、上から覆いかぶせられたのかなと思いました。

 

ーー最後に落ちるときにあごを引きましたね。意識して引いたのですか。あごを引かなかったら、まげがついています。

 

 

とっさに自分の体が落ちても、落ちるのを遅くするために(あごを)引いたのだと思います。勝負が決まる瞬間が毎回毎回ああなるわけではないです。たまたまです。


ーーいやあれはたまたまではないですね。稽古でずっと積み上げてきた成果です。

 

ありがとうございます。

説明が聞こえず、大関が土俵を下りたので勝ちを知った

行司差し違いで遠藤の勝ちと説明する伊勢ケ濱審判長

 

ーー審判長の場内説明をどのように聞いていましたか。

 

実は場内のざわつきで説明が聞こえなかったのです。館内が盛り上がったので、もしかしてと思いました。しかし、やはり取り直しとか、協議したけれども、軍配どおりとかの可能性もなくはないと思いました。それで土俵に上がって、取り直しだったら、行司さんが「ただいまの取組は……」と言いますよね。それを言わなかったので、取り直しはないのだと思いました。大関があいさつしたあと土俵を下りたので、私が勝ったとようやく気が付きました。

 

ーー勝ったと分かったときはどう思いましたか。

 

相撲を取り切って最後までやったからよかったと思いました。

優勝の意識はないので硬くなったことは一切ない

ーー勝ったことによって優勝争いに残りましたね。

 

夏場所千秋楽で優勝の可能性が残った照ノ富士、貴景勝、遠藤(左から)

 

単独でトップになったわけでもないですし、大関に並んだわけでもないです。あの時点では自力ではできなくて人任せのところしかなかったのでピンとこなかったです。

 

ーー周りは、これはともえ戦になるのではないかと言って盛り上がりましたね。

 

14日目で私が負けたら、そこで大関の優勝が決まることは分かっていました。コロナ禍ですし、テレビでしか観戦できない人もいますので、千秋楽まで優勝争いを続けることは大事だと思っていました。

 

ーーこの1勝は本当に大きかったです。あれで千秋楽が大変な盛り上がりでした。

 

結果的に私はかき回しただけでしたね。

 

ーーそのかき回したことがいちばん大きかったのですよ。14日目で優勝が決まるより、千秋楽に遠藤関も加えたともえ戦になるかという方が、関心が全く違います。技能賞は場所を通しての左四つの相撲が安定していたことと、照ノ富士関を破った身のこなしですね。

 

夏場所千秋楽 4回目の技能賞を受賞した遠藤

 

ーー千秋楽の一番で特別に優勝を意識するということはなかったですか。

 

なかったですね。テレビの解説で「硬くなった」と言われていましたが、硬くなったということは一切なかったです(笑)。

 

ーー部屋の大栄翔関が初場所で優勝していますね。自分も優勝したいという思いは出てきませんでしたか。

 

今はみんな初優勝しています。少し前なら横綱も毎場所出場していて横綱、大関の壁が厚かったと思います。どうやったら横綱、大関に勝てるのだろうかと考えていました。今は誰が優勝してもおかしくないときなのかなと思います。だからと言って自分がという思いはなかったですね。

体調が悪いなりの相撲で夏場所はうまくはまった

夏場所13日目 遠藤(右)が突き落としで貴景勝を破る

 

ーー機会はこれからいくらでもありますよ。

 

私は日によって体調が全く違うのです。自分の体調がいいか、悪いかで、その日のメンタルが違います。

 

ーーその中で夏場所で11勝を挙げて、優勝争いに最後まで関わりました。このあと、体調をしっかり整えていけばチャンスがあると思いませんか。

 

まあチャンスがあればいいですね(笑)。

 

ーーそんなひと事みたいに言わないでください(笑)。

 

ひと事というより、実はきのう体の調子がよかったのに、ひねったとかねじったとか負担をかけたこともないのに、翌朝起きたら調子が悪いのです。きのう左が調子悪かったのに、きょうは左が調子いいのに右が悪いなということがあるのです。なぜなのか分からない状態です。そういう状態が続いています。

 

 

ーー夏場所は15日間、ある程度、力を発揮できたと言えるのですか。

 

場所前も、場所中も変わらないです。悪いからと言って、きょうはダメだというように諦めていてはいけないと思っています。悪いときなりの相撲というか、自分の体の使い方があると思っています。夏場所はうまくはまったという感じです。

 

ーー夏場所前に、関取衆と申し合いはできなかったですか。

 

春場所前に足のけががあったので、足の状態がよかったり悪かったりを繰り返しているので、なかなか思った稽古ができなかったです。入門以来できていないので、今は諦めるしかないです。

 

ーーそれを聞くと本当にびっくりします。そういう状態で三役に上がり幕内の上位でずっと相撲を取るということは驚異的です。

 

けがさえなければとよく周りの人が言いますが、そう言われないようにしたいです。

けがなくその日が終わる、それが15日間続いた

 

ーー自分なりのノウハウというか体とのつきあい方を、自分の中に確立して引き出しができましたか。

 

自分で確立したと思ったら悪くなったりしています。逆に確立したと思ったけれど、もっといい方法が見つかったということもあります。よく前に出たほうがけがをしないと言われます。それを否定するのはよくないのですが、前に出ても、けがをするときはけがをします。夏場所は休場に至るアクシデントがなかったことがよかったと思います。けががなく、その日1日が終われたら何よりです。それが15日間続いたということです。

 

ーー名古屋場所は前頭筆頭まで戻って上位と総当たりになるかもしれませんが、まず体とどう向き合うかということですね。

 

そうですね。体とどう向き合うかです。

体とのつきあい方、きっかけがつかめた

 

ーー相撲以外のことを伺いますが、けがを治すときにじっとしていて、そのときに趣味とか気分転換は何かありますか。

 

特に趣味もなければ気分転換もないです。じっと横になってテレビを見ているだけです(笑)。テレビも相撲を見るわけではなく、連続ドラマを見たり、録画したものを見たりしています。バラエティー番組も見ますね。力士がバラエティー番組に出ているのを見て面白くて笑うこともあります。

 

ーー結婚はされていますね。

 

はい。男の子が去年11月に生まれました。

 

ーーお子さんの顔を見ることが気分転換になりますね。好きな食べ物はどうですか。

 

お茶づけは、やはり、外せないですね(笑)。祖父が捕ってきた魚で作るゴリの佃煮とか、コノワタなどの珍味が好きです。昔は当たり前のように毎日食べていました。出身地の石川県の穴水町を離れてから、なかなか口にすることがなくなりました。たまに送ってもらって食べると懐かしいですね。昔のことを思い出します。

 

ーー名古屋場所への期待が高まると思いますがどうですか。

 

毎日、一番に集中してやるだけですね。それが結果につながってくれるといいですね。

 

ーー夏場所で体との新しいつきあい方を感じられたのではないですか。

 

そうですね。体とのつきあい方で少しきっかけがつかめたような気がします。それが崩れないことを願っています。

 

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

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