ストーリーサッカー

アディショナルタイムの魅力がいっぱい!「サッカーの園」が選ぶ究極のプレーは?

2021-10-11 午後 01:00

1試合で2千ものプレーが生まれるとも言われるサッカー。その中から「究極のワンプレー」を決定しようという番組が「サッカーの園」(BS1で放送)。元日本代表の前園真聖さん、アンタッチャブルの柴田英嗣さんをMCに、毎回さまざまなゲストを迎え、ワンプレーに秘められた極意を探っていく番組です。

 

 

今回のテーマは、勝負をかける最後の時間ともいえる「アディショナルタイム」。1点を取るため、守りきるための最後の数分間だからこそ生まれるドラマがあるんです。

 

日本サッカー史に残る「アディショナルタイム」の中から、MCの前園さんが「究極のワンプレー」を決定します!
(この記事は2021年1月に放送されたものをテキスト化・再構成したものです)

アディショナルタイムと言えば…ドーハの悲劇

まずは、アディショナルタイムといえば、サッカーファンなら思い出す「ドーハの悲劇」について紹介しましょう。

 

1993年のサッカーワールドカップ・アジア最終予選。日本はイラクを相手に、勝てば史上初の本大会出場という運命の一戦を迎えていました。日本は後半のアディショナルタイムでまさかの失点。試合は引き分けとなり、ワールドカップ初出場を逃しました。この出来事は「ドーハの悲劇」ともいわれ、日本のサッカー史上大きな出来事の一つとして語り継がれています。

 

アディショナルタイムでなぜ失点してしまったのか…?当時のキャプテン柱谷哲二さんは、きっかけの一つとして、後半35分フォワードの中山雅史選手に代わって武田修宏選手が出場したことを挙げました。

 

柱谷さん

「守るのに精一杯で何も考えられなかった」

 


一方の武田さんは…

「もう1点を取りに行くのか、ボールをキープするのかの指示が出ていなかったので、僕はもう1点取りに行こうと考えた」

 

追加点を狙うのか守り切るのか、選手同士の意思統一が欠けていたのです。日本のサッカー史上、大きな教訓となった出来事でした。

前園選手のスーパープレー!?ドーハの教訓が生きた3年後

それから3年後の1996年。28年ぶりのオリンピック出場をかけたアジア最終予選のサウジアラビア戦。当時のキャプテン前園選手の独壇場で、2ゴールと主導権をにぎったものの、サウジアラビアに1点を許す展開となっていました。

 

試合が進むにつれ、日本中にあのドーハの記憶がよみがえる中、大きな役割を果たしたのも、前園さんでした。
試合後半、日本はコーナーキックを獲得。キッカーの前園さんがボールをセット、蹴ろうとしたその時!まるで足が滑ったかのようにこけたのです!

 


VTRを見たゲストの元日本代表の名波浩さん、中澤佑二さんもこの”コケ”を大絶賛!柴田さんも大ウケです。

 

柱谷さんも
「これはわざと?普通に転んだんじゃないの?本当だったらスゴイね!」と半信半疑。

 

果たして、その真相は?

 

 

前園さん本人は

「当時は本当に転んだと思った人は結構いたかもしれない」とだけ話してくれました。

 

このプレーによってチーム全体に時間を稼ぐ意識が浸透。その結果アディショナルタイムもリードを守り抜き、日本は28年ぶりのオリンピック出場を果たすことができたのです!

 

アトランタ五輪 アジア最終予選にて28年ぶり本戦出場権を獲得 赤枠が前園選手

究極のアディショナルタイム候補 2018年W杯 あのパス回し

こうしてアディショナルタイムの戦い方を磨いてきた日本代表、究極のワンプレー候補を紹介しましょう。

 

2018年ワールドカップロシア大会1次リーグの第3戦、決勝トーナメント出場をかけたポーランド戦です。

 

0対0で迎えた後半14分。日本は先制点を奪われてしまいます。この時、同時刻開催で決勝トーナメント進出を争っていたセネガルも1点を失点。同得点のため、このまま試合が終われば警告の数が少ない日本が決勝リーグ進出のチャンスがありました。

 

ここで日本は、最前線で攻撃をするFW武藤嘉紀選手から、中間で攻守を担うMF長谷部誠選手を投入。アディショナルタイムを戦い抜くための、ある明確な指示が与えられていたのです。

 

ポーランド戦で監督の指示を伝える長谷部選手

 

長谷部選手

「『イエローカードを出さないようにして、とにかくこのままで』という指示が出ていた」

 

日本の選択は「0対1のまま試合を終わらせること」でした。もちろん、セネガルが1点でも獲得してしまえば、日本の敗退が決まるというリスクもありました。

そのリスクを承知で、日本は時間を進めるために勝つことを放棄し、パス回しを行いました。その結果、日本は2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めたのです。

 

会場でも大きなブーイングが起こった日本のプレーは、世界中で物議を醸すことになりました。それでも、全員が意思統一を図り戦う姿に日本サッカーの成長を感じた人もいました。

武田さん

「命かけてプレーしていますから、あのプレーは良かった。あれが戦術と思えるのは成長」

中澤さん

「選手全員がこれを遂行したことがすばらしいチーム。1人でも『攻めようぜ』という選手がいたらこの戦術はできない」

究極のアディショナルタイム候補 友達への思いを込めたゴール

2013年Jリーグ得点王に輝いた大久保嘉人選手

 

J1最多185ゴール(2021年1月時点)を誇る日本一のストライカー、大久保嘉人選手。初めて得点王に輝いた2013年には、アディショナルタイムだけで3ゴールも奪う活躍!ミスターアディショナルタイムと言っても過言ではありません。


大久保選手は、なぜアディショナルタイムに相手の脅威になれるのか?

「終盤になるにつれて、DFは疲れてきて “予測”ができなくなる。
仕掛けやすくなるからこそアディショナルタイムが一番チャンス」

 

相手の疲労による反応の遅れを見逃さないからこそ、アディショナルタイムに得点を重ねることができるのです。

 

その大久保選手が自ら選んだ究極のワンプレーは、Jリーグで「2016年、通算得点がトップの佐藤寿人選手に並んでいた時の試合」。しかし大久保選手には、記録とは全く別の「ゴールを決めたい理由」がありました。100万人にひとりといわれる難病を抱えていた、小学校時代の友達を勇気づけるために「Tシャツに名前と『頑張れ』って書いて掲げるね」と約束した試合でもあったのです。


試合は後半0対0のアディショナルタイム。大久保選手は一瞬の隙をつく鋭い一撃で点を決めて見事勝利!通算得点も単独トップの159点を記録しました。しかし、自らの記録よりも、「友達のためのゴール」だと言います。

 

「159点目というのはなんとも思わなかった。Tシャツを掲げられたのがうれしかった。一番好きなゴールかもしれない」

究極のアディショナルタイム候補 J史上初!キーパーによる奇跡のヘディング

モンテディオ山形のJ1昇格に大きく貢献したGK山岸範宏選手(2014年)

 

2014年、J1昇格をかけたプレーオフ。瀬戸際にいたモンテディオ山形を救ったのは、ゴールキーパー山岸範宏選手のとんでもない活躍でした。

 

プレーオフ準決勝の対ジュビロ磐田戦。同点で迎えたアディショナルタイムでコーナーキックを獲得した山形。なんと、GKの山岸選手が迷わず前線に出てきました。そしてコーナーキックから山岸選手のヘディングシュートがさく裂したのです!GKがアディショナルタイムでゴールしたのはJリーグ史上初という快挙でした。

 

Jリーグ史上初「ゴールキーパーのアディショナルタイムゴール」を決めた山岸選手

 

勢いに乗った山形は決勝も制し、見事J1昇格を果たしました。

 

磐田のわずかな焦りを感じ、相手の嫌がるプレーはなにか?と考えた山岸選手。相手の隙を見逃さない“平常心”がありました。

当時、磐田の監督だった名波さん

「磐田の焦りを感じ取るゲーム勘が素晴らしい」

元日本代表ディフェンダーの中澤さん

「キーパーの山岸選手が攻撃参加することで、今までいなかった選手もマークすることになる。するとそこにマークの一瞬のずれが発生する。その一瞬の隙をついた」


と振り返りました。

究極のアディショナルタイム候補 2020年川崎フロンターレの”等々力劇場”

究極のワンプレー、最後のエントリーは2020年にJ1優勝した川崎フロンターレから。

 

圧倒的な攻撃力で、シーズン最多得点記録を更新した川崎フロンターレは、アディショナルタイムを含む試合後半での強さが特徴。2010年から2020年のデータを見てみると、なんと全得点の1/4が試合76分以降の試合終盤のゴールなんです!

 

川崎フロンターレがホームで見せる終盤の強さは“等々力劇場”とも呼ばれています。フロンターレ一筋の中村憲剛選手は、こんなふうに表現してくれました。

 

「等々力には神がいる。地域密着でサポーターと川崎市の人たちと一緒にという思いでやってきた結果。サポーターの思いや熱がピッチに反映されるような感じがする」

 

”等々力劇場”とは、フロンターレの超攻撃的なサッカーと、相手を疲れさせたところでスイッチを入れるサポーターの応援歌、このピッチとスタンドがひとつになることで生まれる劇的なプレーなのです。

 

中でも、サポーターの中で語り継がれている伝説の試合があります。
それは2011年の対ガンバ大阪戦。
土砂降りの雨の中、川崎が1点ビハインドの後半16分、中村憲剛選手の鋭いシュートで1対1の同点に追いつきます。さらに、アディショナルタイムのフリーキックで、中村選手が逆転ゴール!

中村選手

「ボールをセットした瞬間にボールを蹴るコースが見え、そのコースに打てば入ると思った」

 

選手とサポーターがひとつに。これこそがフロンターレの歴史に残る等々力劇場です。

さて、究極のワンプレーは…?

2018年ワールドカップの日本代表(決勝トーナメント1回戦)

 

番組MC前園さんが選んだのは…
日本代表のワールドカップ ロシア大会1次リーグの第3戦、決勝トーナメントをかけたポーランド戦です。

 

前園さん

「ブーイングの中で、これをやり通すのが本当に難しい状況だったけれども、これもこの時だけじゃなくて、日本サッカー界の歴史の積み上げがあってここに至ったと思う。こういう経験があったから、また次に違う経験ができていけると思うので、これを選ばせてもらいました」

まとめ アディショナルタイムとは?

改めて、今回のテーマ「アディショナルタイム」とはなんでしょうか?ゲストに聞きました。

 

中澤さん

「“天国か地獄か”その数分間で、笑顔で終われるか、涙で終わるかが決まるところ。この言葉が一番ピンときますね」

 

 

名波さん

「まるで“アンタッチャブルの漫才”。ネタ通りに進むことがなく、山崎さんというとんでもないエースがいて、ぐちゃぐちゃにしてしまうが、そのぐちゃぐちゃを楽しむ4分間。アディショナルタイムも同じで監督や審判がコントロールしたいけど、できないあの時間こそアディショナルタイム」

柴田さん

「俺たちの漫才をどれだけの人が知っているかわからないのに!名波さんはめちゃくちゃ見てくれているから。本当にありがとうございます(笑)」

前園さん

「アディショナルタイムのゴールや失点は、一瞬時が止まりずっと残像のように残ってくる“余韻”というところに結び付くんだと思います」

 


サッカーの試合を見る際は、“何か”が起こることを期待して、アディショナルタイムの最後の瞬間まで目を離さずにご覧ください!

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