特集 北の富士勝昭が斬る 横綱 白鵬は進退を懸ける名古屋場所で優勝すれば、かっこいい

横綱・白鵬が名古屋場所で進退を懸ける。もう途中休場はないのだから、伸(の)るか反るかの勝負だ。優勝すれば、いちばんかっこいい。
ただ、白鵬が今の照ノ富士に勝てるかといえば、はた目には、そうは思えない。本人も引き際をどういう形にするかは、しっかり考えていることだろう。
新小結の若隆景は「若葉山」を名乗るのも悪くない
若隆景はいい相撲を取っている。あの小さな体で、おっつけで自分より大きな相手を攻め切るのだから立派なものだ。私はおっつけをやったことはなかったが、うまく使えばあれだけの効果があるのだなと改めて感心した。
昔、横綱の栃木山関におっつけられると腕をへし折られるという話を聞いたことがある。筋骨たくましい怪力の横綱だったが、全盛期でも体重は100キロそこそこだった。体が大きくなくても技と力を磨けば相撲は取れるということだ。
新小結となって、おじいさんの若葉山関と番付で並ぶことになったので「若葉山」を名乗るのも悪くはないと個人的にはどうしても期待してしまう。最近は「山」がつく四股名が、めっきり減ったが「若葉山」はつくづくいい四股名だと思う。
遠藤の相撲のうまさは一級品だ
夏場所で4回目の技能賞を獲得した遠藤
優勝を争う2人の大関を倒した遠藤は夏場所を大いに盛り上げてくれた。やはり相撲のうまさは一級品だ。
インタビューでは珍しくじょう舌だったが、長年付け人を務めてくれた兄弟子(大翔龍)が引退するから、どうしても勝ちたかったそうだ。
私らのころは、付け人が辞めるからといって、そういうのは特になかったな。そんな余裕はなかったし「そうか、これからの方が長いんだから頑張れよ」と、せいぜい、せん別をたくさん渡すくらいのものだった。今の関取衆は昔と違って優しいのだな。
照ノ富士は、3連覇も夢ではない
大関に返り咲いた照ノ富士は、やはり強かった。千秋楽は貴景勝にうまくはたき込まれたが、それ以外で攻め込まれたのは、髙安戦と投げの打ち合いで敗れた遠藤戦くらいなもの。
妙義龍戦は髷(まげ)をつかんだとされ、反則負けとなったが、相手の頭を押さえつけなくても小手投げで勝負は決まっていた。運が悪かったけれど負けを引きずることなく、よく立ち直った。
遠藤との一番は、一瞬、照ノ富士の右手が早く付いたように見えたが相手の体もすでに裏返っていて、悪くても取り直しだと思った。ああいう不運な黒星を喫すると愚痴りたくもなるが、そういうことも聞かない。精神的にも大きく成長したのだろう。この調子でいけば、3連覇も夢ではないだろう。
申し訳ないが周りが弱くて勝手にバタバタ星を落とすから、それほど苦しい展開にならずに綱はとれるのではないか。中盤までは独走ペースだった夏場所も最後はもつれたが、本人はそれほど追い詰められたという感覚はなかったに違いない。決定戦にはなったが、最初から最後まで彼の場所であった。
古傷を抱える両膝に不安はあるだろうが、今度やったらだめだという覚悟は決まっているのだろう。綱を張ったとしても短命でも構わないという、それくらいの気持ちでいるのだと思う。
相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から