ストーリー野球

僕が野球を盛り上げる!ユニフォームデザイナーのお仕事

2018-08-02 午前 0:00

プロ野球の後半戦がスタートし、夏の全国高校野球の開幕も間近。野球好きには心躍るシーズンですが、野球にあまり興味がない人にこそ、注目してほしいのがユニフォーム! SNSを中心に「おしゃれ!」と話題のユニフォームが登場しているんです。

 

おしゃれに進化するユニフォームデザインをけん引するのが、現在、東北楽天ゴールデンイーグルスと東京ヤクルトスワローズのユニフォームデザインを手がける大岩Larry正志さん。そもそもユニフォームデザイナーとはどんな仕事なのか、何を主軸にデザインをしていくのか──あらゆる疑問をぶつけ、野球のユニフォームの魅力に迫ります!

平面にデザインするのがユニフォームデザイナー

──「ユニフォームデザイナー」は、文字どおりユニフォームをデザインされるお仕事ですが、いわゆるファッションデザイナーとは何が違うのでしょう?

 

ファッションデザイナーは、立体の観点からデザインしますよね。一方、ユニフォームデザイナーは、どんなロゴをのせるのか、名前や背番号の書体はどうするのか、色はどうするのかなど、平面の観点からデザインします。そうした点で、グラフィックデザインの仕事に近いかもしれません。

 

肩に「TOHOKU GREEN」の文字があしらわれた楽天初優勝時のユニフォーム(2013年)

 

立体としてのデザインは、スポーツメーカーの仕事。メーカーが完成させたユニフォームをキャンバスに、球団ごとの“色”を付けていくのが僕の仕事です。ただ、こうしたデザインもメーカー内部のデザイナーが行うことが多いため、僕のようにフリーランスで請け負う人間は少ないかもしれません。野球とデザイン、その両方の知識を持った専門のデザイナーはほかにいないと思うので、その点を評価していただいているのではないでしょうか。

 

──たしかに、耳にする機会の少ないお仕事ですよね。

 

僕自身、もともとプロのグラフィックデザイナーとして活動していましたが、ユニフォームに関しては自主制作が原点なんです。

 

日本人選手のメジャーリーグ挑戦が本格化した1990年代終盤から2000年代序盤にかけ、日本でも、アメリカのユニフォームを目にする機会が増えました。率直に言ってしまうと…そのときに感じたのが、日本のユニフォームのやぼったさ。「僕だったら、こうする」というユニフォームをデザインし、個展も開きました。こうした活動が実を結び、個展の開催から足かけ4年。偶然、僕の活動を知った球団関係者からお声がかかり、今に至るというわけです。

メッセージを込めた記念すべき初デザイン

──大岩さんに最初のオファーをした球団が埼玉西武ライオンズ。2008年に交流戦用のユニフォームをデザインされています。

 

 

そう、これがユニフォームデザイナーとしての初仕事。特長をあげるとするなら、肩に入れた十字型の星です。

 

 

線と線が交わる十字が「セ・リーグとパ・リーグの交流」を意味し、白という色には勝利を意味する「白星」の願いを込めています。さらに十字型って、バツ印にも見えますよね。これをデザインした前年の2007年は、ライオンズが26年ぶりにBクラスへ降格した年。バツ印に通じる十字型の星は、いわば前年への「自戒」です。

 

──平面のデザインに、あらゆる意味やメッセージを込める。まさにグラフィックデザインの観点ですね。

 

ただ、初仕事からキャリアを重ねた今の僕なら、十字型の星は入れないかもしれません。交流戦はお祭りのような側面もあり、「ちょっと凝ったデザインに」というオファーをいただきましたが、今なら「いやいや、もっとシンプルに!」と交渉する道を考えますね(笑)。

目指すは100年変わらないユニフォーム

──「もっとシンプルに!」には、どういう意図があるのでしょうか?

 

ファッションには流行があり、少なからずトレンドの要素が求められますが、ユニフォームには不要だと考えています。これもファッションデザイナーとは異なる点ですね。田中将大投手が所属するヤンキースなんて100年以上、同じデザインですよ。それなのに、現代のストリートで着用してもカッコイイ。ファンの間では有名な話ですが、NとYからデザインされたロゴは、あの宝飾品ブランドの二代目であるルイス・コンフォート・ティファニー氏の仕事なんです!

 

大岩さんは、取材時にも、お馴染みの“NYロゴ”をあしらったキャップを着用

 

ヤンキースのユニフォームがそうであるように、ユニフォームはシンプルなほうがカッコイイ!シンプルであればこそ、おじいちゃんから若い女性、子どもでも着用できるし、街でも浮かない。それに球団のユニフォームである以上、大切なのは各球団に根付く歴史であり、球団ごとのキャラクターなんです。

 

100年以上も変わらないヤンキースのユニフォーム

デザインの妙!「シンプルなのにカッコイイ」

──しかしシンプルなことを徹底すると、表現の幅が制限されませんか?

 

シンプルさを徹底しながら球団の個性をにじませ、そのうえでカッコよく仕上げる。それが僕の仕事です。たとえば、2015年からデザインを担当しているヤクルトスワローズのユニフォーム。スワローズといえば、白・青・赤のトリコロールが球団の色であり、ストライプ柄も長く使われている定番です。この伝統を踏襲しながらストライプの線を少し細くするだけで、グッとスマートな印象が強まります。

 

 

日本プロ野球の「名球会」のためにデザインしたユニフォームも、すごくシンプルでしょう?ベースの色には“名球会カラー”のネイビーを使いながら、名前や背番号の書体は、丸みを帯びたかわいらしいデザイン。

 

 

「名球会」は英語で「GOLDEN PLAYERS CLUB」なので、文字と数字部分の差し色にはゴールドを選びました。これを、年を重ねてなお、胸板の厚いレジェンドたちが着ると、むちゃくちゃカッコイイんです!

 

長嶋茂雄さんなど、レジェンドたちの直筆サインがびっしり!

 

そうそう、「シンプルさ」とともにポイントになっているのが「ギャップの魅力」。年配の方がポップなデザインのシャツなんて着ていると、その意外性がむしろ粋じゃないですか。このユニフォームにも、同じセオリーを持ち込んでいるんです。

「野球は文化」 近代野球発祥の地で見た光景

──「シンプル・イズ・ベスト」をはじめとした、大岩さんのデザインの原点は、いったいどこにあるんでしょうか?

 

アメリカかぶれと言ってもいいくらい大好きなU.S.デザインが、ひとつの原点ですね。そしてそれ以上に、アメリカの野球文化そのものにひかれているところが大きいと思います。

 

 

僕は毎年のように、メジャーリーグ観戦の旅に出ていますが、なかでも印象的だったのが、ニューヨーク郊外にあるクーパーズタウンという街で見た光景です。諸説ありますが、この街にあるダブルデイ・フィールドという小さな球場が、近代野球発祥の地と言われています。

 

住民にとっては、野球が誇りなのかもしれません。腰の曲がったおじいちゃんが、野球のバットを杖に加工して使っているんですよ(笑)。「ここまで根付いているのか!」と、感動すら覚えましたね。これは極端なエピソードですが、野球のユニフォームが「街着」として定着しているのと一緒。このスポーツとの関わり方が、すごく魅力的なんです。日本でもいつか、こんな光景を見てみたいですね。

デザインで野球を盛り上げたい!

──だからこそ、街着にしても浮かないくらい「ユニフォームはシンプルに」がモットーなんですね。

 

そのとおりです。まだまだ、街着として定着するには至りませんが、最近では、フォーマルなファッションにカジュアルなスポーツウェアを組み込んだ「スポーツミックス」なんて言葉もあるじゃないですか。ユニフォームのデザインは、野球に興味を抱く入り口になり得ると思うし、僕自身、デザインの力で野球を盛り上げたい、ファンに楽しんでもらいたいという気持ちで仕事をしています。

 

サッカーのワールドカップが終わり“ロス”の人も多いかもしれませんが、プロ野球は7月16日から後半戦がスタートしたばかり。8月5日には夏の高校野球も始まります。野球選手のルックスから、徐々に野球にハマっていくのと一緒(笑)。あまり野球に興味のない人こそ、ユニフォームに注目してみてください。野球の魅力に触れる、ひとつのきっかけになるはずです。

大岩Larry正志

1975年生まれ、滋賀県出身。「野球とデザイン」をテーマに制作活動を続け、2008年に埼玉西武ライオンズの交流戦用ユニフォームをデザイン。以降、2009年に福岡ソフトバンクホークス「鷹の祭典」ユニフォームとグラフィック、2012年から楽天イーグルス夏季用ユニフォームや優勝ロゴ、2015年から東京ヤクルトスワローズのユニフォームやグラフィック、ロゴのデザインを手がける。

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