ストーリー陸上

陸上日本選手権 ハードルは男女とも熱い!!

2021-06-21 午前 10:30

日本選手権に向けて男子100メートルにも負けない盛り上がりを見せているのが男子110メートルハードルと女子100メートルハードルだ。

 

このハードル2種目は、ここ数年日本記録が相次いで更新されてきた。2年前の日本選手権の時と比べて男子は実に0秒20、女子は0秒13も日本記録が縮まっている。

 

世界が見えてくるレベルまで上がってきたハードル種目、オリンピックの代表争いはどうなるのか?大一番に臨むハードラーたちを紹介する。

進化の証は日本記録の推移にあり

ここ数年の両種目の進化がどれほど凄いのか、日本記録の推移を見てもらいたい。まずは男子110メートルハードルから。

 

 

14年間止まったままだった日本記録の時計の針は2018年に一気に動き始めた。その主役となったのが金井大旺だ。それに高山峻野、そして泉谷駿介が続いた。一時は日本記録保持者に3人が名を連ねる戦国時代に。そこから高山が抜け出したかに見えたが、ことし金井が再び日本記録を更新。気がつけばこの2年で記録は0秒20も縮まりオリンピックの決勝も視野に入るレベルに突入した。

 

注目選手の自己ベストは以下の通り。金井、高山、泉谷の3人はオリンピックの参加標準記録を突破して臨む日本選手権、それぞれの現在地をリポートする。

 

金井大旺 今季好調の大本命

 

今大会、優勝候補筆頭といわれるのが日本記録保持者の金井大旺だ。

 

オリンピックシーズンにきっちりと合わせてきた25歳は4月の織田記念で13秒16の日本記録をマーク、勢いにのって日本選手権に向かう。13秒16という記録は、リオデジャネイロオリンピックなら銀メダルに相当するすさまじいタイムだ。本人は「想像以上にいいタイムでびっくりした」と振り返るが世界レベルの実力を持っていることが証明された。

 

飛躍の背景には、オフシーズン重点的に行ってきたウエイトトレーニングがある。「全身の筋量が増してパワーがついた」と本人が分析するように、肉体面での成長が安定した走りを生み出しタイムにつながった。

 

その金井、実は父と同じ歯科医師を目指すため、今シーズンを最後に競技生活に区切りをつけると決めている。ラストシーズンに「すべてを出し切る」と、目標とするオリンピック決勝の舞台を見据えて日本選手権に臨む。

 

金井 大旺 選手

まずは、3位以内に入って代表権を勝ち取るというのが最低限の目標。自分の集大成としてやるべきことを最大限やりつくして、悔いのないように終われるようにしたい。応援してくれる人たちにいい結果を見せたい。

高山峻野 復活かける前日本記録保持者

 

日本選手権で復活を期すのが、前の日本記録保持者の高山峻野だ。

 

今シーズンは左アキレスけんの痛みなどで思うような走りができていない。シーズンベストは13秒45にとどまっている。13秒25の自己ベストを持っているハードル界の第一人者だが、いまは「ケガで失った筋肉を取り戻す段階」と考えている。日本選手権での意気込みを聞くと、自虐を交えたいつもの高山節が返ってきた。

 

高山 峻野 選手

意気込みは特にない。正直勝てる気がしないので僕は4番か5番ぐらいだと思う。体の状態が悪い中でもなんとかくらいついていければと思う。

 

しかし、そのことばとは裏腹に高山の目はしっかりと前を向いていた。競技人生では1回しかないであろう自国でのオリンピックに、どこまで体を戻してこられるか。高山の秘めた闘志に期待は高まる。

泉谷駿介 伸び盛りの大学生

 

金井、高山といった実力者たちを一気に追い越す可能性を秘めているのが大学4年の泉谷駿介だ。

 

圧巻の走りを見せたのが5月に行われた関東インカレ。予選でいきなり13秒30をマークしてオリンピックの参加標準記録を突破すると、決勝では追い風5.2メートルの参考記録ながら13秒05をマークした。

 

110メートルハードルを最も得意とするが、走り幅跳びや三段跳びといった跳躍系の種目にも強い泉谷。バネを生かした走りで日本選手権で主役に躍り出る可能性は十分にある。日本記録保持者、金井に対してもライバル心を見せた。

 

泉谷 駿介 選手

やっぱり金井さんに負けたくない。金井さんも手ごわい先輩なのでついていけるように頑張りたい。日本選手権は、まず3位以内に入ってオリンピックの代表入りを決めたい。あまり欲張らず、13秒2台をねらっていきたい。

村竹ラシッド ハードル界の新星

 

6月になってすい星のごとく現れたのが大学2年の村竹ラシッドだ。

 

6月1日の木南記念で13秒35の日本歴代4位の記録をマークした。しかもこのときの風は、追い風わずか0.3メートル。条件次第ではさらに記録を伸ばす可能性もあった。オリンピックの参加標準記録13秒32まであと100分の3秒。大学の先輩である泉谷とともに日本選手権で旋風を巻き起こす覚悟だ。

 

村竹 ラシッド 選手

正直なところ、13秒3台を出せると思っていなかったが、いままでぼんやりしていた13秒32という参加標準記録も具体的に見えるようになってきた。日本選手権では、まずは決勝に残り、3番以内に入ってオリンピックを目指したい。

競い合って高め合う 女子はライバル対決に注目

続いて、女子の100メートルハードル。こちらも日本記録更新が相次いでいる。まずは日本記録の変遷を見ていただこう。

 

 

金沢イボンヌが13秒00をマークしたのが2000年。記録更新には男子よりも長い19年を要した。日本選手として初めて12秒台をマークしたのは寺田明日香、2019年9月のことだ。13秒の壁を突破してから記録向上のペースが一気に上がる。2年も立たないうちに12秒8台に乗った。記録の面で突き進んでいた寺田に今月追いついたのが青木益未だ。同タイムの日本記録を持つ2人が日本選手権でも主役になることは間違いない。

寺田明日香 娘のために金メダルで五輪へ

 

まずは寺田明日香。ことし31歳のベテランの心の支えとなっているのが6歳の愛娘・果緒ちゃんだ。4月の織田記念でみずからの記録を100分の1秒更新する12秒96の日本新記録をマークした時には、娘をグラウンドに呼び込み喜びを分かち合った。そのおよそ1か月後には12秒87と一気にタイムを縮めてきた。

 

好調の要因は「チームあすか」と呼ばれるトレーナーや栄養士などとともに作り上げた体にある。ウエイトトレーニングなどで体重は2キロほど増加。絶対的なトップスピードが上がっただけでなく、安定してスピードを出せるスプリント力も身についた。

 

寺田の日本選手権での目標はオリンピックの参加標準記録の12秒84だ。現状では世界ランキングで上位にいるため、この記録を突破しなくてもオリンピックへの道は残されている。しかし「気持ち的に全然違う」とあくまで突破して自力での内定獲得を目指す。娘の思いも同じだ。寺田が12秒87の日本新記録をマークした時、娘からは「12秒84じゃないの?」と言われたという。

 

寺田 明日香 選手

私が目標をクリアしていくところを娘に見せたいし、それによって多くの人が喜んでくれるということを娘にも感じてほしい。標準記録を切って娘に金メダルを渡せたらいいなと思っている。

ライバル 青木の存在も力に

 

寺田にとって、ライバル青木の存在も大きい。6月6日の布勢スプリントでは2着で、優勝した青木に日本記録で並ばれた。それでも「負けたことは悔しかったがうれしいと思った自分もいた」と振り返る。お互いに高めあえていることが喜びだった。一騎打ちが予想される日本選手権の本番でも、青木との競り合いがタイムにつながると考えている。

 

寺田 明日香 選手

去年の日本選手権は負けているので、ことしこそは勝ちたい。青木選手は私についてきてリズムアップして抜かそうと思うだろうし、私はそこを冷静に対処しなければいけない。力はほぼ同じだと思うので、その時どれだけ調子を合わせられるかやメンタル面が鍵になると思う。

青木益未 日本選手権は12秒台で決着を

対する青木にとっても、寺田はライバルであり仲間のような存在だ。布勢スプリントでタイ記録をマークしたあとこう語った。

 

青木 益未 選手

寺田さんの記録に並ぶことができてうれしい。寺田さんのおかげで自分は12秒台で走れるぐらいの選手になれたと思っている。

 

今シーズンは、オフに痛めた股関節のけがを抱えながらのレースになっているが、スプリント力の向上が好タイムにつながっている。

 

青木 益未 選手

練習の中でハードリングがうまくなったという感覚はなかったが、150メートルや200メートルの練習でタイムが速くなっていた。ハードルで1番大事な足が速くなったことがタイムにつながっていると思う。

 

寺田と同様、青木も12秒84の参加標準記録の突破が目標タイムになってくるが「参加標準記録を意識しすぎず、いまの走りのアベレージを上げていきたい」とあくまで自然体を強調する。

 

順当にいけば、この2人が3位以内に入ることは濃厚で、12秒84を突破すればその場で代表内定となる。2人のライバル争いに加え、参加標準記録への挑戦、女子100メートルハードルも見どころがたっぷりだ。

この記事を書いた人

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小林 達記 記者

平成26年NHK入局。神戸局、大阪局を経て、スポーツニュース部。陸上担当。大学では野球部に所属。中学時代は陸上も経験。

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