ストーリー野球

甲子園に虹を架ける最強の裏方!阪神園芸のグラウンド整備

2018-08-17 午前 0:00

まもなく開幕される第101回全国高等学校野球選手権。高校球児の聖地である甲子園という夢の舞台を、最高のコンディションに維持しているプロフェッショナル集団があります。その名は阪神園芸

 

観戦している野球ファンが歓声を上げるほど卓越した技術は、“神業”と称されるほど。どんな技術で整備しているのでしょうか?

球児たちの夢の舞台を整えるプロに突撃取材!

全国高等学校野球選手権に出場する選手は「甲子園球場は、素晴らしいグラウンドだ」と想像して来られると思うので、その期待に応えられるような舞台を作ろうと日々整備しています」と話す阪神甲子園球場のグラウンド整備を担当する阪神園芸の水谷貴義さんに突撃取材です!

水谷貴義さん

1979年7月25日兵庫県生まれ。2002年5月に阪神園芸に入社し、阪神甲子園球場を整備し続けて今年で18年目のベテラン。

甲子園の“あの”土につまったこだわりを発見

——高校野球といえば、敗退したチームがグラウンドの土を持ち帰ることが多いですが、甲子園球場の土は、ほかのグラウンドとなにか違いはあるのですか?

 

甲子園球場では、黒土と砂が混ざった混合土を使っています。黒土は鹿児島県志布志市から、砂は京都府城陽市の山砂です。黒土は保水性が高いんです。でも、保水するだけだと雨上がりにグラウンドがぬかるんでしまうので、滑り止めとして砂を混ぜています。ちなみに、土と砂は6:4で配合しています。

 

 

——どれくらいの量を使っているのですか?

 

地表から30センチまでが混合土です。内野の部分だけで3000平米なので、約900立方メートル分の土を使っていますね。この30センチの厚みというのは、甲子園球場だけなんです。ほかの球場は、10センチから15センチと少し浅いんですよ。それが、甲子園の水はけがいい理由です。それに、土によく水が含むように日々整備を行っています。同じ30センチの土を使ったとしても、普段からちゃんと整備していないと水を吸い込まないんです。

 

整備は一日にしてならず!驚きの降雨対策

——阪神園芸さんのグラウンド整備術は、“神業”と話題になっていますよね。その理由のひとつが、雨で中断した試合を短時間で再開させる技術にありますが、その秘密を教えてください!

 

じつは、雨が降った後の処置よりも予防のほうが大事なんです。プレーに影響が出る位置に水を貯めないようにする整備だったり、雨が予想される場合は散水を控えてグラウンドから水を抜いておいたり…。

 

守備位置やランナーの走路は、くぼんで水が溜まりやすいので、動いた土を元に戻す作業もしています。あと、グラウンドはマウンドを中心に勾配しているので、それを保つことも大事なんですよ。きちんと傾斜していないと、水たまりができてしまいます。

 

動いた土をならす作業

 

―試合中に対応することはありますか?

 

水たまりがまったくできない訳ではないので、雨が止んだら水たまりに吸水パックを置きますし、足元がぬかるんでいる場所があれば滑り止めとして混合土に使っている砂をまきます。ただ、砂だけを補充すると配合比率が変わってしまうので、試合後に追加した砂を回収しているんですよ。

 

吸水パック

 

——散水する際に、虹がかかるというのも話題になっていますが、そもそもなぜ散水するのでしょうか?

 

砂ぼこりが立たないようにするためというのもありますが、グラウンドの水分が抜けてしまうと土が固まってしまうんです。固くなるとイレギュラー(イレギュラーバウンド=球が不規則に跳ねること)も増えますので、湿らせて柔らかさを保つことが目的です。また、乾くとグラウンドが白っぽくなってしまうので、打球が見にくくなってしまうことも。そういった意味で、選手にとってプレーしやすいように散水しているんですよ!

 

——散水にコツはあるんですか?

 

理想は雨のように均一にまくことです。機械ではなく人がやっているので、なるべくムラができないように、かつ先端を上にむけて散水し、霧のように落としています。虹が掛かる理由はこれだと思いますよ。散水のホースは水圧が強いので、全体重を掛けて前傾姿勢になります。それこそ、マイケル・ジャクソンのダンスのように傾いて散水していますね(笑)。

 

前傾姿勢になって散水する様子

ワンランク上の整備へと導くこだわりの道具

——ホースのノズル部分は、特殊なものを使っているんですか?

 

素材はどこにでもある真ちゅうのものですが、自分たちで加工を施しています。もともと筒状で先端が球状になっているのですが、そこをカットして長さや先端の厚みを変えています。

 

たくさんあるノズルの種類

 

グラウンドにある水柱の位置によって水が届く範囲が違うので、場所ごとに使い分けていて、水圧も違うんですよ。

 

例えば、ファウルグラウンド(=ファウルラインの外側エリアのこと)だけをまく時のものは、霧状になりますが、距離はあまり飛びません。

 

試合前に使うノズル

 

グラウンドで使っているのが上の写真のもので、ある程度きつく絞っていて水圧も強いので、風にも負けないんですよ。

 

——グラウンド整備中の様子がたびたびテレビで流れることがありますよね。そのときに、注目するとおもしろいポイントがあれば教えてください!

 

じつは、足跡を残さないために、足を引きずらないようにしているんですよ。かかとを擦らず、つま先を蹴らないような歩き方です。入社したときに、先輩から「普段から足跡を残さない歩き方を意識しなさい」と言われたんです。プライベートでもそうやって歩くので、スニーカーのかかとが擦れてなくなってしまうことがないんですよ(笑)。

 

 

あと、テレビ画面で見えるかはわからないですが、よく見るとトンボは人それぞれ違うものを使っています。材木屋さんから歯と柄を別々に購入し、歯の部分をカンナで削って好きな角度にしているんですよ。僕のトンボは歯を交換しながら10年以上使っているので、柄が指の形にヘコんでいます。

 

 

——トンボの使い方は人によって違うんですか?

 

トンボを掛ける姿勢がそれぞれ違うので、おのずと使い方も変わります。自分以外のトンボを使うと、引っ張りすぎてしまったり、押す時に力が入りすぎて地面がヘコんでしまったりするんです。なので、自分の姿勢に合ったものが使いやすいですね。刃の部分は、使っていくうちに摩耗していくので、定期的にカンナを掛けて調整しているんですよ。

 

普段使用しているトンボ(左)と、購入したばかりのトンボの刃(右)

 

——やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

 

選手がベストコンディションでプレーできているときですね。今の時代は、インターネットで、高校球児の生の声がわかるので、「甲子園球場は投げやすかった」「守りやすかった」という言葉を見ると、整備をしていてよかったと実感しますし、うれしいですね。

 


高校球児たちの活躍はもちろんですが、最高のパフォーマンスをグラウンドで演出しているプロの仕事も見逃せません。いつ、どのタイミングで神業を見られるかはわかりません!

 

しかし、グラウンド整備にも注目すれば、高校野球がさらに楽しめること、間違いなしです!

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