ストーリーフィギュアスケート

"たかがアクセル、されどアクセル" 伊藤みどりとトリプルアクセル

2020-11-13 午前 0:00

 

本記事は2018年10月29日に公開した記事を再掲載するものです。

2020年11月27日(金)~11月29日(日)に開催されるNHK杯国際フィギュアスケート競技大会は、新型コロナウイルスの影響もあり、出場するほとんどが日本の選手です。若手の選手も多く出場しますが、果たしてトリプルアクセルは見られるのでしょうか。

 

女子スケーターとして世界で初めてトリプルアクセルに成功したフィギュアスケート界のレジェンド・伊藤みどりさんが、NHK杯40回の開催を記念して「レジェンドオンアイス」に出演します。

 

伊藤さんといえば、1989年の世界選手権に女子初のトリプルアクセルを決めて優勝。その後1992年のアルベールビルオリンピックで銀メダルを獲得。国内では中学生だった1985年から1992年までの全日本選手権で8連覇、NHK杯フィギュアでは女子最多となる6回の優勝と驚異的な成績をおさめています。

 

今回は伊藤みどりさんの代名詞「トリプルアクセル」のご本人だけが知る裏話と現在のフィギュア界についても語ってもらいました。

 

トリプルアクセルとひとくちに言っても、選手によって違うと思いませんか?たとえば、浅田真央ちゃんのトリプルアクセルは高さがありますよね。今回NHK杯に出場する紀平選手はとっても軽やかだし。私のトリプルアクセルは幅があります。羽生選手なんかは、難しいステップからふっと飛んじゃうし。

 

おっ、早速始まりました、

伊藤みどりさんインタビュースタートです!

伊藤みどりにとってのトリプルアクセル

 

――伊藤さんが公式試合で初めてトリプルアクセルに成功したのは、1989年の世界選手権。これは女子フィギュアスケート史上初の快挙でしたが、アクセルジャンプに苦手意識はなかったんですか?

特になかったです。ただ、コンビネーションジャンプと同じくらい練習をしましたね。私は“たかがアクセル、されどアクセル”という言葉をよく使っているので。

 

――“たかがアクセル、されどアクセル”?

今のルールだと、ショート・フリー共にアクセルを必ず入れなければいけません。女子ならほとんどの選手が2回転のアクセルを入れますが、意外にここでミスしてしまう人が多いです。

 

私も、過去の大会でトリプルアクセルを含むコンビネーションは飛べたのに、後半のダブルアクセルで転倒してしまったことがあったりして。難しいコンビネーションはできるのに単体のアクセルでミスをしてしまう。4回転が飛べる男子でさえも、アクセルで転倒することは頻繁にあります。これではもったいないので、アクセルそのものをしっかり練習しないといけません。

 

 

――なるほど!2回転であっても、アクセルの練習をおろそかにしてはいけないということですね。それではお聞きします。ズバリ、伊藤さんにとってトリプルアクセルとは?

武器ですね。話題作りっていうのかな?誰もやったことがなかったので。伊藤みどりのトリプルアクセルが見たい!といって試合に来てくださる方も多かったですし。
 
世界選手権で優勝した1989年当時は、プログラム全体をきれいにまとめれば優勝できたと思います。だけど、どうしてもトリプルアクセルが飛びたかったんですよね。言い方を変えると、それなしでチャンピオンになってもうれしくなかった。トリプルアクセルに優勝がついてきたようなイメージです。

現代のスケーターに必要なもの、それは?

身体が柔らかくないとだめですね!昔はひとつでも武器を持っていれば活躍できたけど、今は求められるものが多様化しています。もちろんケガ予防の意味もありますが、ビールマンスピンなど色々なポジションが求められる現在は“柔軟性”がとっても大切です。

 

――過去と現在で時代は変わったということですか?

 

私たちの時代と違って、今はトリプルアクセルが武器になりません。成功率の低いトリプルアクセルをプログラムに組み込むよりも、ほかの3回転を2回飛んだ方が確実に点を取れますもんね。
 
そんな中でも、紀平選手はトリプルアクセルを1つのプログラムに2回入れようとしています。また、公式戦で<トリプルアクセル-トリプルトウループ>のコンビネーションにも成功しました。これが、いわゆる最先端のチャレンジなのかなって思います。だからこそ武器になりますし、話題になりますよね。

 

紀平梨花選手

 

――新しいことに挑戦する選手は、それだけ注目されますもんね。つまり、トリプルアクセルで時代が語られると?

そうかもしれないですね~!最初にトリプルアクセルを飛んだ立場としては、とってもうれしいことです。ふふふ。

 

私たちの頃は、『フィギュアスケート?何それ?』という時代でしたから。NHK杯だってやっと始まった頃ですよ。それが、今の子はオリンピックに出たい!チャンピオンになりたい!と思うんですから。当時は全く想像もつかなかったです。世界チャンピオンなんて夢のまた夢でしたよ。

これからは “観る”から“やる”時代に

――これからのフィギュアスケート界はどうなっていくと思いますか?

フィギュアスケートというものが当たり前になった今は、観るだけでなくやる時代です。

 

織田信成くんはコーチ業もがんばっているし、浅田真央ちゃんはフィギュアスケートを始めるきっかけを作るための活動をしています。荒川静香さんなんて、子どもを2人産んでも解説したり、アイスショーで滑ったりしていますからね!

 

左:荒川静香さん 右:織田信成さん

 

――フィギュアスケーターのセカンドキャリアも多様化していますね。

それに、現役選手に対するサポートも手厚くなりました。たとえば、今は栄養士さんなどがついてくれてる。宇野選手は野菜嫌いみたいですけど、肉だけじゃだめでしょっ!って思います(笑)

 

選手によってはスポンサーがつくこともあるので、その分プレッシャーは大きいでしょうね。がんばって当たり前、というか。そういった意味では、昔と今を単純に比較するのは難しいです。

 

宇野昌磨選手

トリプルアクセルは時代の最先端を写す鏡

フィギュアスケートを取り巻く環境は時代と共に大きく変化しています。選手たちがプログラムの中でトリプルアクセルをどう組み込むかを見れば、その時代の特徴が見えてくるはず。

トリプルアクセルはもちろん、スケーター達の華麗な滑りに注目しましょう!

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