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“ソフトボール界のイチロー” 山田恵里 (37) 「挑戦に年齢は関係ない」

2021-05-31 午後 0:10

「正面からソフトボールに向き合えていない」

 

今から1年程前、ソフトボール日本代表のキャプテン、山田恵里(37)は悩んでいた。集大成と位置づける東京オリンピックに向け下した決断が山田を変えた。

37歳で初の移籍決断

 

ことし4月、愛知県安城市にある実業団チーム、デンソーのグラウンドに誰よりも大きな山田の声が響き渡っていた。神奈川で生まれ育ち、高校を卒業後は地元にある日立で19年間ずっとプレーしてきた。

 

 

それが3回目のオリンピックを前に移籍を決断したのだ。競技人生の終わりが見えてきた37歳でわざわざ環境を変える必要はないのではないか。

 

私が率直に尋ねると練習で声出しをしすぎて枯れてしまったという声で、こう答えた。

 

山田 恵里 選手

何かに挑戦するのに年齢は関係ないし、新しい自分を見つけたいという思いのほうが強かったので、怖さはありませんでした。本当にすごい新鮮ですし、毎日楽しんでいます。

 

打席での独特の構えと卓越したバットコントロールから、山田についた異名は「ソフトボール界のイチロー」

 

北京オリンピック決勝 山田選手がホームランを打ちガッツポーズ

 

金メダルを獲得した北京オリンピックでもキャプテンを務め、アメリカとの決勝ではホームランを打って勝利に貢献。

 

そして日本リーグの通算打率は、3割8分近くで、ヒット数や打点では歴代最多を誇る。ピッチャーのレジェンドが上野由岐子なら、野手のそれは、山田であることに異論はないだろう。

 

 

実際に同じチームでプレーをする若手は山田が練習している姿を真剣なまなざしで見つめている。

小島 あみ 選手

憧れの人だったので、本当にいる!と思って。もう神、雲の上の存在です。

中村 優花 選手

ソフトボールに対しての姿勢とか打ち方とか、全部教えてほしいです。

 

競技に向き合えないほどの不調

打席で向かうところ敵なしとも思えた山田が昨シーズンの日本リーグで、もがき苦しんだ。打率はわずか2割。これまで4割を超える打率をマークしたこともある山田にとって信じられない成績だ。

 

 

金メダルを目指す日本代表を長年引っ張ってきたプレッシャーと環境が変わらないことの甘えから競技にしっかりと向き合えなくなったという。

 

その精神状態に引っ張られるように自信を持って打席に立てなくなっていた。

 

山田 恵里 選手

ずっと同じチームにいて守られている自分がいたと正直感じていました。その中で成長できていない自分がいたんです。このままオリンピックを迎えていたら結果は出ないと思いました。

 

練習前に円陣を組むデンソーの選手たち

 

現状を打破しないと自分はこのまま終わってしまう。東京オリンピックの1年延期が決まり、移籍を決断。新たな環境で若い選手が純粋にソフトボールと向き合う姿を見て、山田も初心に返って競技に取り組むことができるようになった。

 

山田 恵里 選手

ひとつの物事に対して真剣に取り組む姿勢を自分は忘れかけていました。みんなの姿を見て、これじゃいけないなと気づかされた部分がありました。新鮮な気持ちでやることは大事です。

 

山田は「昔の体を取り戻したい」と練習メニューも変えた。きっかけは同世代の上野がエースとして活躍し続ける姿に刺激を受けたことだった。

 

 

30代になってけがが多くなり、山田はみずから練習量を制限してしまっていたと振り返る。1つ年上の先輩に勇気を出して去年「トレーニングメニューを作ってほしい」と頼んだ。

 

 

そして上野が考えた筋力トレーニングをオフから始めた。ことし1月は体全体の筋力を増やすメニュー。実戦が入ってくる直前の2月は瞬発的な動きを意識した内容だった。その時期に必要で体の状態にあったメニューをエースは用意してくれた。

 

 

山田は多いときには週4回、1日3時間一心不乱に練習に取り組んだ。この結果、筋肉量は落とさず体重が3キロほど減り、動きのよさを実感している。今シーズンは打率3割4分以上をマークし、飛距離も伸びた。

 

山田 恵里 選手

上野さんは、これだけやっているから結果が出続けているんだなと、その姿を見て感じています。トレーニングをこなすようになって、もっともっと自分はできるんだなと思えました。

 

37歳の打のレジェンドは東京オリンピックに対してさまざまな世論があることはわかっている。それでも自分にできることはあると信じている。

 

山田 恵里 選手

今こういう状況の中でスポーツが与える力って、大きいんじゃないかと感じています。自分自身が楽しんで、それが誰かの力になればいいし、恩返ししたいという気持ちでオリンピックの試合に臨めば、きっと伝わると考えています。

この記事を書いた人

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沼田 悠里 記者

平成24年 NHK入局。金沢局、岡山局を経てスポーツニュース部。プロ野球・DeNAを2年間担当したあと、ウインタースポーツとソフトボールを取材。

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