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特集 幕内 遠藤 兄弟子へ “感謝” の一番 大相撲夏場所

相撲 2021年5月22日(土) 午前11:25

13日目の結び。勝負が決まった瞬間、国技館はこの日、一番の歓声に包まれた。

 

遠藤(前頭8枚目)が、2敗で優勝を争う大関・貴景勝を破った。

 

 

立ち合い直後、強烈な突き押し受けて押し込まれたかに見えたが「とっさに体が反応した」と土俵際でくるりと反転して白星をつかみ取った。

 

取組後には取材している記者も忙しくなった。ふだん口数が少なく、めったに取材に応じない遠藤だが平幕が大関を破ると中継のインタビューに呼ばれる。テレビの音量が一気に上げられた。

 

“一体、何を語るのか…”

 

意外にも遠藤が話したのは、大関を破った喜びでも取組内容でもなかった。

きょうは、相手が大関とかじゃなくて、どうしても勝ちたかったんでよかった。

 

 

さらに、ほっとした表情を見せて・・・

分かる人は、分かると思うんで、本当に勝ててよかった。

 

 

“どういうことを意味しているのか”

 

この日は、遠藤の付け人で、同じ追手風部屋の大翔龍(三段目)が、現役最後の取組だったという。

 

30歳の遠藤より1つ年上、初土俵は8年も早い先輩力士だ。大翔龍も遠藤のそばで、インタビューを聞いていた。そして、目に涙を浮かべていたという。

 

優勝争いには触れず、苦楽をともにした付け人の兄弟子。大関を破ったことで得たインタビューの機会で、感謝の気持ちを全国の人たちに伝える形になった。

 

 

14日目の相手は、1敗で単独トップの大関・照ノ富士。負ければ相手の優勝が決まってしまう一番だ。

 

大事な取組に向けて「しっかり集中してやるだけ」。少しだけ、じょう舌だった遠藤が、いつもの姿に戻った。

 

14日目は、何のために、誰のために戦うのか。

 

インタビューでは聞けなかったが、圧倒的な力で優勝争いを引っ張ってきた大関に土をつければ、今場所一番の喝采を浴びるに違いない。

この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者

坂梨 宏和 記者

平成21年NHK入局 福岡県出身

長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。プロ野球を担当した後、現在はサッカー担当。

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