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特集 大相撲 大関返り咲きの照ノ富士 さらに上を目指して ~NHK 吉田賢アナウンサーが聞く~

相撲 2021年5月7日(金) 午後3:20

照ノ富士はけがと病気で序二段まで番付を下げながら4年ぶりに大関に返り咲いて夏場所に挑みます。大関昇進を伝える使者に「謹んでお受けいたします」と簡潔にこたえた照ノ富士。

 

NHKの大相撲中継でおなじみ吉田賢アナウンサーが、さらに上の番付・横綱に挑む決意を聞きました。

 

さらに上を目指す思いは変わっていない

大関昇進の使者を迎えた照ノ富士

 

ーー伝達式の口上に注目していたら非常にシンプルでしたけれども、あれはどんな思いなのですか。

 

できるだけ多くは語らず簡潔にというか。上を目指すという思いは変わっていないんで。

 

ーー元いた場所に戻ってきたんだから、ある種これは当たり前だなという思いがあったのかなと思ったのですが。

 

当たり前というのはないです。やっと、という感じなので。序二段に復帰したときも、当たり前という状態じゃなかったのは、みんな見て分かったと思うし、やっと勝っていた。三段目でも負けたりしていましたので、当たり前ということは別になかったです。

 

ーー苦しいときに支えてくれた奥様は何と言っていましたか。

 

支えてくれた妻のドルジハンドさんと

 

いや、いつもどおりで特に。「おめでとう」と。

 

ーー以前に聞いたとき、奥様にかっこいい姿を見せることができなかった、と大関は言っていましたけれども、今回ようやくかっこいい姿を見せられたんじゃないですか。

 

やっと……。ちょっとずつ、これから幸せにしてあげたいなと思っていますけれども。

 

ーー一方で、ファンの皆さんの声援がどんどん高まってきたという実感があるんじゃないかと思うのですけれども。よく戻ってきた、頑張っているねと。私の周りでも照ノ富士はすごいという話をあちこちで聞きますよ。

 

 

そうですか。まあそういうふうに考えてくれる人が多ければ、またこれから頑張れますし。自分では頑張っているのですけれども、いろんな支えがあって、結果というのは後から出てくると思う。そんな感じですね。

序二段からの復帰は「ようここまで来たな」という思い

平成31年春場所 序二段で再スタート

 

ーー序二段で復帰してからの、この2年というのは自分ではどうでしたか。非常に順調だったのではないかと思うのですけれども。

 

平成31年春場所初日 序二段で復帰し白星をあげた照ノ富士

 

順調というか、いつも言っているとおり、1日1日どれだけ自分が相撲に対して取り組めるかということを、本当に精いっぱい考えてきました。2年前の春場所から復帰したんで2年ちょうどですが、まあもうここまで来たかと。2年前の自分は四股も踏めない状態でしたし、序二段や三段目の若い子たちと当たっても、やっと勝っていた。圧倒的に勝ったという感覚は自分の中にはなかったですから。まあ「ようここまで来たな」というところです。もちろん、絶対に元の位置に戻るんだという気持ちで臨んではいましたけれども、そんなに言うほどの自信は正直なかったんで。

 

ーーそれにしてもよくやりましたね。「一生懸命やってきた」とひと言で言っても大変だったと思いますもの。

 

平成2年初場所 十両優勝した照ノ富士と序二段で優勝の宇良

 

大変大変と言っていたらきりがないんで。 復帰してから筋トレをしたり、朝稽古もちょっとずつできるようになったりして、それが自信にもなりました。やっていてこの体が変わっていくのも楽しい。昔の新弟子のころ、毎日稽古をやらされて、最初の方は嫌いだったけれども、どんどん勝ったりとか、負けて悔しかったりとかがあって、それが楽しかった。そうした思いが、またあふれ出してきたっていうか、そういう気持ちがあったので、やりきれたのかなと思います。人間の体というのは、多分やった分は返ってくるというのが、正直感じたところです。でもいくら口で言っても行動に移さないとこういう結果は出ないんで。だから伝達式のときも、口で多く語るんじゃなくて、結果で表していけばいいかなと思っていました。

横綱へは今まで以上に取り組まないといけない

大関復帰が決まり伊勢ケ濱部屋の力士に祝福を受ける

 

ーーさて夏場所です。大関に復帰した場所なので注目されますが、どんな思いでしょうか。大関という立場ですから、毎場所優勝争いに加わっていかなければというような思いは。

 

いや、そう深く考えてはいなくて、幕内に復帰してからずっと優勝を争っていますし、今までどおりに、いやもうちょっと、それ以上にというか、そのぐらいやっていれば、まあ後から結果がついてくると思っています。だからこそそんな変にプレッシャーも感じないというか、そういう感じですね。

 

ーーなるほどね。大関は常に目標を口にしてそれに向かってやってきて、関脇になったとき、3場所で33勝という目標を口にしました。今度はどうですか。大関という地位に戻り、次の目標へ何かありますか、具体的なものは。

 

 

言ってきたとおり、やるからにはいちばん上の番付を目指していきたいし、上がるためには、もちろん優勝か優勝に準ずる成績というのが目安になってくるので、それをどうやったらクリアできるかというのは考えなければいけないです。今までどおりにやればできないことでもないかなとか、そんな思いもたまに出てくるんですけれども。相撲はそんなに甘くはないと思います。だから今までより多めに取り組まないといけないなっていう、そういう気持ちですね。

 

ーー横綱を確実なものにするには、今まで以上にやらなければいけない。

 

そういうことです。

 

(相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から)

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