大相撲 横綱って、いったい何なの?

NHK
2024年3月29日 午前7:15 公開

大相撲の横綱は、江戸時代の初代、明石志賀之助から72代の稀勢の里まで、長い歴史のなかでも72人しかいません。

全力士の頂点、横綱に昇進するためにはどんな条件があって、昇進に合わせて行う行事とはどんなものなのか、改めて見てみたいと思います。(※2021年5月14日スポーツオンライン掲載)

横綱に昇進するための条件は何なのか?


稀勢の里の横綱昇進伝達式(平成29年1月25日)

日本相撲協会の横綱審議委員会という組織が横綱を推薦する決まりをまとめています。それによりますと「品格・力量が抜群であること」「大関で二場所連続優勝、またはこれに準ずる好成績を挙げる」が条件となっています。

横綱審議委員会でふさわしいと決めると、そのあとの番付編成会議と理事会で横綱昇進を正式に決めます。そして日本相撲協会から理事と審判委員が使者になって、昇進が決まったことを力士と師匠に伝える伝達式が行われます。この時に大関から昇進した力士は横綱になる決意を口上として述べます。

横綱昇進の口上には、どんな言葉があったのか?


稀勢の里の横綱推挙状

平成29年の初場所に初優勝を果たし、場所後に72代の横綱に昇進した稀勢の里「横綱の名に恥じぬよう精進します」と分かりやすい言葉で口上を述べました。平成19年の夏場所後に69代の横綱に昇進した白鵬「横綱の地位を汚さぬよう、精神一到を貫き、相撲道に精進します」と述べました。

兄弟横綱で『若貴ブーム』を巻き起こした貴乃花「相撲道に不惜身命を貫きます」若乃花「堅忍不抜の精神で精進していきます」と、ともに四字熟語を使って決意を述べました。

令和3年春場所後に大関に復活し、73代の横綱を目指す照ノ富士には大願成就を遂げて、口上を述べる機会がくるのでしょうか。

横綱になるとき、どのような行事があるのか?


明治神宮の神前で日本相撲協会の八角理事長から横綱を受ける稀勢の里(平成29年1月27日)

伝達式の翌日には横綱の綱打ちが行われます。土俵入りの型を雲龍型にするか不知火型にするかを決めて綱を打って、横綱経験者の親方の指導で土俵入りの稽古をします。

伝達式の2日後に、東京の明治神宮で横綱推挙式が行われ、推挙状と横綱が授与されます。続いて横綱になって初めての奉納土俵入りが行われ、大勢の人たちが新横綱の晴れ姿を見ようと明治神宮に詰めかけます。

横綱から陥落することはあるのか?


明治神宮で初めて奉納土俵入りを行う稀勢の里(平成29年1月27日)

大関は2場所続けて負け越すと関脇に陥落します。しかし横綱は何場所負け越しても大関への陥落はありません。あるのは引退だけです。

成績不振で横綱を返上したいと言った人や、横綱で初めて負け越して引退を申し出た人もいましたが、いずれも認められませんでした。

稀勢の里は平成29年の夏場所から8場所続けて休場するなど成績が振るわず、横綱審議委員会から「激励」を決議されました。そして平成31年初場所、初日から3連敗して引退しました。

休場が続いて横綱審議委員会から「注意」を決議された鶴竜は令和3年春場所も休場して再起を期しましたが、春場所11日目の3月24日に「中途半端な状態で土俵に上がるわけにはいかない」とけじめをつけて引退しました。

横綱は昇進した者にしか分からない責任と向き合い、日々重圧と戦っているのです。

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から