ストーリー相撲

大相撲 若隆景 自信になった技能賞 「三役を目指して頑張ります」

2021-05-07 午後 03:15

若隆景は、夏場所で東前頭筆頭に昇進。春場所では、2大関を倒して、低い姿勢からのおっつけがさえわたりました。三賞選考委員会では満場一致で初の技能賞が決まりました。

 

元NHKアナウンサーの刈屋富士雄さん

 

業師の面目躍如の熱戦を振り返り、再び上位を倒して、新三役昇進を目指す夏場所への決意を、元NHKアナウンサー刈屋富士雄さんが聞きました。

新型コロナ感染で、相撲を取れるか不安だった

春場所前の2月に健康診断を受けた若隆景

 

ーー春場所を振り返ってどう思っていますか。

 

場所前は不安がありました。初場所は休場でしたから。それでも自分の相撲を一番一番取り切れてよかったと思います。

 

ーー年末に新型コロナウイルスの陽性反応が出たのでしたね。

 

自分でもびっくりしました。検査に行ったときにはそれほど症状は出ていなかったのですが、次の日から症状が出て発熱とかけん怠感とか、味も匂いも全く分からなくなりました。熱が40度以上に上がったため、1月2日に入院しました。それでも2、3日で退院できました。

 

ーーどれくらいたってから稽古を再開できたのですか。

 

初場所後の2月に稽古を再開

 

稽古の再開は初場所が終わってからでした。自宅で療養していて部屋の方にも一切行っていなかったです。家族も大変でした。熱が上がったときは寝返りが打てないくらい全身が痛かったです。退院するときに先生から、どの程度体が戻るのか、相撲のパフォーマンスに影響が出るかもしれないと言われました。その言葉もあって不安でした。体をしばらく動かしていなかったので、思うように体が動かなかったです。徐々に体を動かして稽古を始めました。

春場所は三役に上がる気持ちで臨んだ

春場所で技能賞を獲得した若隆景(右端)

ーーよく春場所で、あんなにいい相撲を取れましたね。

 

自分でもびっくりしています。それでも春場所の前には、調子は悪くないなと思っていました。

 

ーー気持ちとしては三役に上がってやるぞというものがありましたか。

 

はい。ことしは三役を目指してと思っていました。東日本大震災から10年の節目の場所だったので、ここで自分が三役に上がるという気持ちで臨みました。

満場一致の技能賞、自信になった

ーー初日隆の勝関、2日目照ノ富士関に敗れて2連敗したときは体の動きはどうでしたか。

 

春場所2日目 照ノ富士に押し出しで敗れる

 

そんなに悪い相撲ではなかったので、体は動いているなと思っていました。

 

ーー3日目に貴景勝関に勝ちましたね。いい相撲でしたね。

 

 

自分でもよかったと思います。前回の対戦では一発で持っていかれたので、下がらないようにしました。あの相撲は今振り返ってみれば、かなり自信になったと思います。

 

ーー5日目に正代関に勝った相撲も相手が投げにくるところをサッと反応しました。すごく反応がいいと思って見ていました。

 

 

準備の期間がいつもの場所よりも長かったのがよかったと思っています。2月はまるまる調整ができました。

 

ーー終盤、13日目に優勝争いの先頭にいた髙安関を破りました。三賞とか2桁とかという意識は、勝ち越してから出てきましたか。

 

 

北の富士さんが解説で「三賞をもらえるのではないか」とおっしゃっていましたが、頑張ってとりあえず1日1番という思いで取れば、結果はついてくると考えていました。

 

ーー春場所の三賞選考委員会で満場一致でしたね。

 

もう少し厳しくなるのかなと思っていました。候補に名前が挙がるかどうかとも思っていました。

 

ーー納得のいく相撲内容でしたか。

 

そうですね。振り返ってみれば気持ちの面では自信になりましたし、これからも上位で戦っていけるなという気持ちになりました。

祖父が望んだ技能賞を仏壇に報告

若隆景の祖父 若葉山

 

ーーおじいさん(故若葉山)が小結でしたね。まずおじいさんの小結というのが目標ですか。

 

そこが第一の目標です。祖父も確か2枚目の8番で小結に上がっています。その場所に殊勲賞を取っています。祖父はずっと技能賞が欲しいと言っていたそうです。祖父は技能賞が取れなかったですが、私が取れたので、祖父にも仏壇の前で報告しました。

 

ーーおじいさんは足取り名人と言われたそうですね。手で相手の足を取って脅かす業師でした。

 

そう聞いています。技能賞が欲しかった祖父の思いを、私の受賞で果たせたかなと思っています。

 

ーーこのあと三役に上がったら、おじいさんの若葉山を継ぐという考えはないですか。

 

私の口からは言えません。師匠(荒汐親方・元幕内蒼国来)が考えることですし、3人兄弟ですから上2人もいますし難しいことです。ゆくゆくは誰かが若葉山を継ぐという話は3人が入門したときにありました。

同期に追いつき、追い越す思いで

平成29年1月の入門会見

 

ーー同じ時代を戦った選手もプロに行く。その中でライバルというか意識していた力士はいますか。

 

同期の炎鵬と友風

 

同期の存在です。東洋大の同期の村田もそうですし、炎鵬とか同期の学生出身力士は意識します。矢後、水戸龍、友風もそうですね。

 

ーー平成29年の春場所に三段目最下位格付出しで入門して、プロの世界はどうでしたか。

 

初土俵の三段目最下位格付出しで勝ち越し

 

春場所、5勝2敗でしたが全部勝つくらいのつもりでした。幕下くらいからは全然違うと思いました。

 

ーー初土俵の翌場所に三段目優勝をしていますね。そのあと幕下に上がって、幕下下位と幕下上位では違ったわけですね。

 

 

違いましたね。平成29年の九州場所で初めて負け越し甘くないなと思いました。

 

ーー負け越したあとの平成30年の初場所、幕下17枚目で、7戦全勝で優勝しましたね。結構周りから十両に昇進するのではないかと言われませんでしたか。

 

そうですね。その場所は落ちる人が多くて、「新十両の発表がある水曜日に記者会見の準備をしておけよ」ということを言われていました。本当かなと思いながらも結局上がれず、春場所は幕下西の筆頭でした。

 

ーー幕下西の筆頭というのは微妙でしたね。東の筆頭だったら4勝で必ず上がれるはずですが、西は番付運によって止まってしまう人もいました。そのあとすぐに勝ち越して新十両に昇進しました。

 

十両昇進を果たし荒汐親方と握手する若隆景

 

上がれてよかったです。17枚目で、もし優勝して上がっていても幕下上位で関取衆と1番も取っていなかったので相撲が取れるかという不安が大きかったと思います。筆頭で勝ち越して上がれたのがよかったと思います。十両との対戦もありましたし。

 

ーー関取になってからは順調に上がっていきましたね。

 

 

やはり同期が幕内で活躍していたので、歯がゆさがありました。私は十両でくすぶっていて幕内になかなか上がれないのに炎鵬や友風が幕内に上がっていたので、早く追いつきたいと思っていました。追いつき、追い越すという気持ちです。

立ち合いを磨き、低く踏み込む

春場所3日目 貴景勝の攻めをこらえる若隆景(右)

 

ーー自分が幕内に上がって活躍するためにはどこを磨いていこうと思いましたか。

 

やはり立ち合いです。立ち合いの当たりが大切だと思います。低く踏み込むことを意識しました。

 

ーー幕内に上がってくるときに、明らかに押されなくなっていました。相撲内容が変わってきたと見ていました。体重が増えたのか、角度とか体の強さとか何かをつかんだのかと思っていました。

 

体が大きくなったのもよかったと思います。体を大きくしないと幕内で相撲が取れないと思っていました。体重は十両のときよりも10キロほど増えて、今は130キロです。

 

ーー新入幕のときに4連勝のスタートを切っていながら、ケガをしてしまいました。

 

悔しかったです。あのときは10番勝って三賞を取るぞという気持ちでした。

 

ーー今話を聞いているだけでも、番付で惜しいところを逃し、新入幕で三賞を狙えそうな雰囲気だったのにケガをし、返り入幕で10番勝ったのにまた三賞を逃しています。実力で上がって不運に見舞われて、そこを実力で乗り越えて頑張っていますね。

 

そうですね。実力をつけて三役を目指して頑張ります。

福島の人たちを相撲で元気づける

 

ーー関取は東日本大震災を経験していますね。福島県の高校生のときですか。

 

そうです。1年生のときです。学校で授業中でしたが、とんでもない揺れでした。緊急地震速報で携帯電話が一斉に鳴り出してから揺れが来ました。揺れが収まってから学校の外に避難しました。

 

ーーそのあと原発事故による避難で、荒汐部屋で避難生活を送ったそうですね。

 

はい。いちばん上の兄が荒汐部屋に入門していましたので1か月くらい避難生活を送りました。

 

ーーそれだけに、あれから10年ということしの3月は、特別な思いがありますね。

 

ありましたね。気を引き締めて頑張らなければといけないと思っています。

 

ーーまだ復興の途中ですが、福島の人たちを相撲で元気づけたいという気持ちを強く持ったのではないですか。

 

 

そうです。福島の人たちを自分の相撲で元気づけたいという気持ちはいちばん強かったです。

 

ーー春場所の関取の相撲に、福島の人たちは勇気づけられたと思いますよ。

 

そういうふうに言っていただけるとありがたいです。

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

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