特集 年齢差19歳!カーリング男子 コンサドーレの強さに迫る!

今注目のカーリングチーム、コンサドーレをご存じですか?
チーム発足初年度ながら、2018年11月のパシフィックアジア選手権で優勝し、日本男子の世界選手権出場枠を獲得。2019年2月のカーリング日本選手権で優勝し、新たに日本代表の権利を得て、3月からカナダで開かれた世界選手権に出場しました。
メンバーの年齢差は実に19歳!世代の違うメンバーがどのようにコミュニケーションをとって強さを発揮したのか?
取材に参加できなかった谷田康真選手を除く4人のメンバーに、それぞれのカーリングとの出会いやチーム結成の経緯についても、たっぷり語ってもらいました!
カーリングとの出会いは?
(左)相田選手、清水選手、松村選手、阿部選手(右)
まずはそれぞれのカーリングとの出会いを語ってもらいましょう!
阿部:僕は北海道北見市常呂町出身なので、専用リンクができた小学1年生頃からやるようになりました。まだカーリングが世の中に知られていなかった頃だと思います。

阿部晋也(あべ しんや)
【生年月日】1980年1月6日
【出身地】北海道北見市常呂町
【ポジション】リード
【競技歴】
96年日本選手権優勝
06年トリノ五輪女子日本代表監督
10年バンクーバー五輪女子日本代表監督
17年ミックスダブルス日本代表
15、17、18年 日本選手権準優勝
阿部:昔すぎて覚えていないんですが……大人たちが夜な夜な集まっていて、楽しそうだなと。
松村・清水・相田:(即答で)ないです!

(一同笑)
――それでは、松村選手はどうですか?
松村:両親がもともとカーリングをやっていたので、その影響です。

松村雄太(まつむら ゆうた)
【生年月日】1989年9月29日
【出身地】長野県軽井沢町
【ポジション】スキップ
【競技歴】
15年世界選手権6位
15、17、18年 日本選手権準優勝
阿部:常呂町で日本選手権をやったときにお父さんが準優勝してるよな、たしか。
松村:そうそう。競技としてやるようになったのは清水選手に誘われたのがきっかけです。カーリングより先にサッカーを始めて、そのときの先輩が清水なんですよね。
清水:(カーリングを)始めてから7年くらい同じチームで、その後また一緒にできたらいいなって話してたんだよね。
松村:そうそう。今はそれがかなったかたちですね。
――もとはサッカーから繋がった縁だというのは驚きました。そんな清水選手がカーリングを始めたきっかけは?
清水:僕は長野県軽井沢町出身で、長野オリンピックのときにカーリング場ができたのをきっかけに始めました。中学校は部活でサッカーをして、雪が降る冬はカーリングをしていました。

清水徹郎(しみず てつろう)
【生年月日】1988年2月10日
【出身地】長野県軽井沢町
【ポジション】サード
【競技歴】
07~09年、13~17年 日本選手権優勝
15年世界選手権 6位
16年世界選手権 4位
18年平昌五輪 8位
――サッカーとカーリングは全く違うスポーツですが、その違いについては意識していましたか?
清水:全く考えていなかったです!放課後に公園で遊ぶのと同じような感覚でした。サッカーの試合をした後にカーリングの試合行ったりもしたよね?
松村:あれはマジでしんどかった……(笑)
阿部:そのおかげで、今タフにやれてるのかもね。
――サッカーとカーリング、2足のわらじは大変そうです。それでは、最年少の相田選手はどうでしょうか?
相田:僕の家族はカーリングをやっていなかったんですが、北海道北見市常呂町出身で、町そのものがカーリングで有名だったからです。小学校3年生くらいのときにジュニアのカーリング教室があったのがきっかけでした。

相田晃輔(あいた こうすけ)
【生年月日】1998年10月2日
【出身地】北海道北見市常呂町
【ポジション】フィフス
【競技歴】
16年リレハンメル ユース五輪日本代表
18年日本選手権準優勝
――当時はうまくできましたか?
相田:いや、それが結構難しくて……。ただ、うまくできるようになるのがうれしくて、どんどんハマっていった感じです。
二大聖地!常呂と軽井沢の違いは?
阿部選手と相田選手が北見市常呂町出身、清水選手と松村選手が軽井沢町出身。カーリングの二大聖地ともいえる常呂町と軽井沢町の選手が混在していますが、それぞれに地域ならではのカーリング文化の違いや共通点はあるのでしょうか。
阿部:しいて言うなら常呂町は天才肌が多いイメージです。軽井沢町はしっかり基礎から指導されたタイプが多かったですね。
松村:常呂町の人はよくわからないけど上手いというか。「えっ、それで決まるんだ?」というシーンも多くて……
(阿部選手を見ながら)天才肌ですよね?
阿部:えっ、俺が?
松村:はい。
2018年カーリング パシフィックアジア選手権
相田:ちょっとズレても正確に決めてきますよね。
阿部:僕は常呂町の中でもちゃんとやってる方だと思ってたんですけど……こいつ(相田選手)も常呂町の人っぽくない?
松村:たしかに、わけわかんないくらい決めてくる。
阿部:……上手いって言ってるわけじゃないからな!
相田:はい、心得てます……(笑)
大会初日が初対面!チーム結成 驚きの経緯
それぞれのやり取りからメンバーの仲の良さがうかがえるコンサドーレですが、結成前のメンバー同士の関係性はどうだったのでしょうか。
阿部:清水との付き合いが一番長いですね。女子のコーチをしているときに清水が男子の代表で、大会(会場)ではよく会っていました。
――阿部選手はなぜコーチ業を辞めて現役に復帰したのですか?
阿部:僕の中ではバンクーバーオリンピックで一区切りだと思っていました。カーリングに関わっていくのであれば現役をやっていた方がその後のためになると思いましたから。そのタイミングでちょうど松村が競技を続けるかどうか悩んでいたので、「一緒にやる?」ってなって。相田の存在は全く知らなかったんですけど……。
相田:僕も知らなかったです。
阿部:初めての大会当日が初対面だもんな?
――えぇーっ!!大会当日が初対面!?相田選手はどういう経緯でチームに加入することになったのでしょうか。
相田:松村さんの奥さんが常呂町のカーリングホールの受付をしていて顔見知りだったんですけど、松村さんとは面識がなくて。でも、ある日突然電話がきたんです。初めは冗談かと思いました。
――それは確かにびっくりしますよね。相田選手を誘おうと思ったのはどうしてですか?
松村:(メンバーが一人辞めて代わりを探していた)僕が常呂町周辺でリサーチした結果、いちばん多く名前が挙がったのが相田でした。
大会2か月前に電話して「部活があるから考えさせてください」と言われ、その日の夜に返事がきました。考えるような時間もないくらい早かったです(笑)
――たしかに早い……!阿部選手とは試合の日が初対面ということですが、相田選手はその日どんな心境でしたか?
相田:緊張しっぱなしでした。雲の上の存在の人たちと一緒にチームを組むなんて!
――それはそうですよね。逆に、他のメンバーから見た相田選手の印象は?
松村:まぁ、最初はやるなと思ったんですけどね……。
(一同笑)
松村:(一緒に)初めて出た大会で優勝してるんですよ。最初の印象はまさに常呂町の人、天才肌だなと。ただ、2日目に負けたときはボロ泣きしてましたね。
阿部:あー、泣いてたね。変な期待もプレッシャーもかけないようにしたんですけど、めちゃめちゃ泣いてましたね。……そんなにダメだった?
相田:ダメでしたね。他のメンバーが良かったのに、僕のせいで負けてしまったので。
――清水選手はどのようなきっかけでチームに加入したのでしょうか。
清水:前のチーム(ピョンチャンオリンピック代表のSC軽井沢クラブ)を離れると決めて、次の行き先を探していたときに松村といつか一緒にやろうねと話していたのを思い出したのがきっかけです。そこから話が発展して、チームに入れてもらおうと。
インタビュー中の穏やかな表情とは違う試合中の清水選手。2019年2月のカーリング日本選手権
松村:僕らからしたら、こんなにいい浮き駒はないなっていう……(笑)
清水:ははは!いずれは一緒にやろうって話していたので、それがかなってよかったです!
チームメイトであり兄弟!チーム作りのポイントは?
最年長の阿部選手が39歳、最年少の相田選手が20歳(取材当時)。メンバーの間で世代の差があるうえに、出身地もバラバラですが、普段どのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか。
阿部:僕自身、後輩との距離は近いタイプかもしれません。偉そうに見えるけど偉そうじゃないよね?
松村:昔、合宿で僕らのジュニアのチームと阿部さんの代表チームが集められたとき、大浴場でわけもわからずチームメイトに水をかけてきたり、(顔を伏せて)髪を流しているときにひたすらシャンプーをこう、ポンプで後ろからかけてきたり……陽気なおじさんなんですよね。
(一同笑)
阿部:精神的には近いんです。
松村:知り合ったときからそういう人だと思っていたので、とくに年の差は感じないですね。
――陽気なおじさん!(笑)たしかにこうしてお話していると、チームの雰囲気の良さが伝わってきます。年の差はあっても、阿部選手のフレンドリーな部分が今のチーム作りのポイントとなっているのでしょうか。
阿部:生活を共にしていくような関係ですし、チームメイトであり兄弟。楽しくいられなきゃ続かないですし、いずれどこかで負けがきます。勝てなかったときにどうカムバックしてくるかでチームの力が問われるんです。
――チームの雰囲気がダイレクトに試合に影響するんですね。いい空気感を保つために気を付けていることはありますか?
松村:チームで過ごす時間と個人で過ごす時間をしっかり分けています。また、皆で話をするときは誰の意見でも一度はしっかり話を聞くようにしていますね。
――清水選手は以前オリンピックに出場するようなチームにいましたが、強いチームの条件として雰囲気の良さは重要だと思いますか?
清水:思います。前のチームを離れてみて分かったことですが、カーリングに集中するために他のことをコントロールするということができていたのかもしれません。集まったときに楽しくいけるというのを、自然にできるようになって強くなったのかなと。いい雰囲気のときはいい結果が残せますしね。
2019年2月 カーリング日本選手権の試合後、勝利に笑顔あふれる選手たち
多様性こそが強さの秘訣
年齢や出身地が違うメンバーが集まり、その多様性を認め合うコミュニケーションがあるからこその強さ。取材中も笑いが絶えず、雰囲気の良さがひしひしと伝わってきました。
このチームワークが強みのコンサドーレ、今後の活躍に注目です!