特集 サッカーだけじゃない!カーリングのコンサドーレです

サッカーJ1でおなじみのコンサドーレにカーリングチームが誕生したのは去年8月のこと。「北海道とともに、世界へ」というクラブスローガンを体現する競技として、サッカー、バドンミントンに次いで3番目にカーリングが選ばれました。
その後、ピョンチャンオリンピックに出場した清水徹郎選手を加えたチームは、今年2月にカーリング日本選手権を制し、日本代表として世界選手権に挑みます。
3月9日 優勝報告イベントでの選手たち 左から相田選手、阿部選手、清水選手、松村選手
スポーツクラブ・コンサドーレの一員となって8か月、選手を取り巻く状況やチームはどう変わったのか?リードの阿部晋也選手、サードの清水徹郎選手、スキップの松村雄太選手、フィフスの相田晃輔選手それぞれの視点で語ってもらいました。
選手もびっくり!サッカーのサポーターからの応援
サッカー・コンサドーレのホーム開幕戦となったJ1第3節。札幌ドームのコンコースではカーリングチームの優勝報告が行われました。ポストカードを配る選手の周りには、あっという間に握手や記念撮影を待つ長蛇の列が!
子どもたちと写真に収まる清水選手
――イベントはとても盛り上がりましたね!ファンの方の様子はどうだったのでしょうか?
阿部選手:大人から子どもまで、こんなに並んでくれるのか!と驚きました。僕たちの名前をちゃんと知ってくれていたりするので、うれしかったですね。
サッカーのユニフォームにサインする阿部選手
――コンサドーレになって「変わったな!」と実感することも多いのではないですか?
阿部選手:やはり、応援してくれる人が圧倒的に増えました。コンサドーレの一員になることで、クラブそのものを応援しているサポーターの方から声をかけられる場面が増えましたね。
それこそ、今日も準備の段階やドームの中を歩いているだけで声をかけていただいて驚きました!
カーリング日本選手権の優勝トロフィーを持ってパシャリ!
――背負うものが大きくなったという実感はありますか?
阿部選手:もちろんあります。おこがましいですけど、(コンサドーレの)看板を背負わせてもらっているので、自然と意識が高くなっていますね。クラブに引っ張られて一気にチームが上手く回るようになりました。
――他に変わった部分……たとえば、もぐもぐタイムなどはいかがでしょう?
阿部選手:この間の日本選手権ではそれぞれが食べたいものを持ってきていましたね。エネルギー系のゼリーとか……そのあたりの変化はほとんどないです(笑)。
――マッサージなど、体調管理の部分に関してはどうですか?
阿部選手:マッサージはコンサドーレになってからです。この歳になって「コンディショニングってこういうことなのか」と知りました。
松村選手:おかげ様ですこぶる調子がいいです、ほんと。
――それはカーリング専門のチームなのでしょうか。
阿部選手:そうです。しっかりサポートしてくれるので、遠征などの環境も良くなりましたね。今までよりも競技に集中できるようになりましたし、今後もどんどん良くなると思います。
――ピョンチャンオリンピック出場の強豪チーム SC軽井沢クラブにいた清水選手から見るとどうでしょうか。
清水選手:SC軽井沢クラブのときもサポートしてくれる方や企業はいましたが、その規模が大きくなった印象です。今の方がよりカーリングに集中できるというか、純粋にカーリングに使える時間が増えましたね。身体のメンテナンスに関しても、以前なら調子が悪くなってから対応することが多かったのですが、調子が悪くなる前にケアできるので助かっています。
――コンサドーレのサッカーチームとの交流もあるのですか?
松村選手:僕と清水はサッカーが好きなのでよく見に行きます。
阿部選手:僕はクラブで働いているので何人かの選手とは話しますね。
J1の『マッチデープログラム』にもカーリングチームの特集が!
――ちなみに、サッカー選手に聞いてみたいことはありますか?
阿部選手:監督やコーチはもちろん、選手個人が相手の情報をどれだけ知っているのかが気になります。僕はこれまで相手の情報を全く気にしていなかったんですが、カーリングがより競技的になっていく中で細かい統計が出るようになり、そこでようやく相手のことを気にするようになりました。監督がどう選手に伝えているのかも気になりますね。
清水選手の加入とポジション変更が与えた変化
――「コンサドーレ」の一員となることで、環境はがらりと変わったようでが、ピョンチャンオリンピックに出場した清水選手が加入して変化したこともあるのではないですか?
集中力を研ぎ澄ませショット放つ清水選手(日本選手権2019)
試合中の集中した表情が和らぐ勝利後の選手たち(日本選手権2019)
松村選手・相田選手:うーん……。
清水選手:……何もないんじゃないですか?
(一同笑)
阿部選手:試合をしていて、こいつ(清水選手)負ける気ねーなっていう雰囲気は感じます。決していい状況でないときも、勝って当然というオーラが出てますね。
――勝って当然!そのオーラは意識的に出しているのですか?
清水選手:いえ、無意識に出ちゃってるのかと……(笑)
阿部選手:基本的に負けず嫌いなんだと思います。この間の日本選手権のときは試合前から負けるつもりが一切ないという雰囲気でしたし、ここぞというときに一段ギアが上がるような集中力をもっています。
――そういえば、ポジションの変更もあったようですね。もとは阿部選手がスキップでしたが、松村選手とポジションを交代したのはなぜですか?
阿部選手:ラストに投げる人がハウスに立った方がいいなとは思っていましたし、清水が加入した時点でこいつのポジションはサードしかないなと。試しにやってみたら思った以上に良かったんです。
松村選手:ハマりすぎて、もう動かせないですね。
阿部選手:ポジション変更は難しいので、迷走してしまうチームも少なくないんです。一度変えただけでこんなにハマるチームはなかなかないと思います。
――ちなみに、現スキップの松村選手から見た阿部選手はどんな選手ですか?
松村選手:今は僕がスキップとしてハウスに立ち、反対側に(阿部選手が)いることで、チームに脳みそが2つあるイメージです。スキップ=ブレインかつリーダーであると思われがちですが、うちのチームは違いますね。
清水選手:今のチームは4人が話し合って、しっかり理解したうえで試合を進めているので一投ごとの集中力が違ってきますね。それに(阿部選手は)ずっと同じところに投げ続けてくれるので、僕と(松村)雄太にとってはすごく楽。(阿部選手のセットアップのおかげでその後の展開で)難しいショットがない分、試合を支配できる確率が非常に高くなります。
松村選手:そうそう、迷いなく投げられるのは助かってますね。「次のショットはこれ」というのがすぐに出てくるので、試合全体をみたときにいいリズムで投げられる。すごくいい仕事をしていると思います。
(一同笑)
――ポジションの変更についても、早めの決断が功を奏したということですね。清水選手は満場一致でサードになったようですが、その理由を教えてください。
阿部選手:単純に、これまでサードで慣らしてきた男だからというのが理由です。対戦していたときは“嫌なときに決めるヤツ”でした。逆に、今は“欲しいときに決めるヤツ”。頼もしいですからね。トラブったときも何とかリカバリーしてフォースに繋いでくれます。
松村選手:必要な場面では確実に決めてくれますし、(局面を)マイナスの状態では渡してこないのが清水の強さです。
コンサドーレのここに注目!
カーリングを見てくれるファンに向けて、「俺たちのここを見てくれ!」というポイントはありますか?
松村選手:よく聞かれるんですけど、特にないんですよね。清水とヤス(セカンドの谷田康真選手)は中盤のつくり方で見せ場があるんですが。
阿部選手:リードはひたすら同じことを繰り返していますし、(松村)雄太は投げなきゃいけないのを投げるしかないんですよね。ただ他の競技と圧倒的に違うのは、選手がマイクを付けることです。
試合中に行われる選手たちの作戦会議
――どんな会話をしているか分かるのですね。
松村選手:4人集まるときは必ずオンになっているので、分かります。議論が聞こえたり、他の選手が何を言っているのかが分かるのは面白いと思いますよ。
――それでは最後に……チームの特徴を一言でいうと?相田選手、お願いします。
相田選手:えーっと、ちょっと時間もらっていいですか?
松村選手:新しい!
清水選手:無理やり絞り出すとかじゃないんだ!(笑)
相田選手:ええと、いい意味で発展途上のチームだと思います。
阿部選手:俺たち今日本一だけどその答えで大丈夫?
相田選手:たしかに日本一にはなりましたが、世界に目を向けるという意味ではもっとレベルアップしていかなければいけないし、まだまだ可能性があるチームだと思います。
――今後もどんどん変わって、成長していけるというイメージですか?
相田選手:はい、その通りです!
――無理やりまとめてしまったでしょうか……。
阿部選手:ははは!いいんじゃない?相田が変えてくれるんだろ?
相田選手:おこがましいですが……頑張ります。
松村選手:オリンピック選手(清水)もどんどん上手くなってるしなぁ。
大きなスポーツクラブのチームとなり、新メンバーの加入やポジション変更で急成長を遂げた一方で、世界で戦うにはまだ発展途上であると語ってくれたコンサドーレのメンバーたち。
次回は、カーリング男子世界選手権大会に出場にするにあたっての意気込みや、チームとしての課題をうかがいます。お楽しみに!