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レスリング 須﨑優衣 手繰り寄せた“1%の可能性”

2021-04-21 午前 11:30

「1%でも可能性が残っているなら諦めない」

 

レスリング女子50キロ級、須﨑優衣選手は、この2年間、この言葉を何度も繰り返し、口にしてきました。オリンピック代表内定は、まさに、この「1%の可能性」をつかみ取った瞬間でした。

 

2019年12月 全日本選手権の須﨑選手

 

須﨑選手は中学2年生からJOCエリートアカデミーで技を磨き、早くから「オリンピックの金メダル候補」と期待され続けてきた、まさに「エリート」です。目を見張るようなスピード、タックルを中心とした圧倒的な攻撃力を備え、レスリングを心から楽しむ様子は見ている私たちの心も躍らせてくれます。

 

2017年の世界選手権で金メダルを手に笑顔の須﨑選手

 

大舞台にも強く高校3年生だった2017年から世界選手権を2連覇し、国際大会で負けたことはありません。多くの関係者が「東京オリンピックの代表選考となる2019年の世界選手権で代表に内定するだろう」と考えていましたが、このとき大きな挫折を経験します。

 

2019年7月、世界選手権の代表決定戦で最大のライバルだった入江ゆき選手に敗れたのです。

 

須﨑 優衣 選手

本当に自分が夢だったオリンピックの舞台に立てるのかなと、気持ちが揺らいだ。

 

天真らんまんに試合を楽しむ、いつもの姿はそこにはなく、本来の動きも陰を潜めていました。

 

入江選手が世界選手権で3位以内に入れば、その場で内定が決まり、須﨑選手の東京オリンピックへの道は、まさに「絶望的」と言えるほど厳しくなっていました。

 

「今まで生きてきた中で、どん底だった」

 

エリートが涙を流しながら必死に顔を上げて、みずからを奮い立たせました。

 

「1%でも可能性があるなら信じて頑張っていきたい」

 

それからわずか数日で須﨑選手は練習を再開し、入江選手のいる日本代表の合宿にも参加して自分を高め続ける道を選んだのです。

 

その入江選手は、世界選手権の準々決勝で、まさかの敗戦を喫し、代表内定を決めることができませんでした。

 

 

その年の全日本選手権で、今度は須﨑選手が入江選手を破って優勝し、アジア予選への切符をつかみました。

 

本当に苦しかったけれど、ライバルがいたおかげで、もっと強くならなければと思って進化することができた。

 

順風満帆ではなく「どん底」を経験したからこそのたくましい強さが感じられました。

 

去年3月、今度は新型コロナウイルスの影響でアジア予選が延期。またしても、内定が遠のきましたが動じませんでした。

 

「強くなる時間を1年いただいた」と得意のタックルだけでなく、組み手争いや寝技などの技術を磨くとともにパワーやスタミナの強化にも、じっくり取り組み、1日もむだにすることはありませんでした。

 

迎えた10日のアジア予選は、須﨑選手にとって、1年4か月ぶりの実戦でしたが、ブランクをまったく感じさせませんでした。

 

 

タックルのスピード、組み手争いの技術やパワー、寝技でポイントを取りきる力。すべてが圧倒的で、4試合すべてで1ポイントも失うことなく、テクニカルフォール勝ちと完璧な試合運びを見せました。

 

「思いっきり楽しむことができた」と振り返った須﨑選手。ただ大好きなレスリングを心のおもむくままに生き生きとマットの上で楽しむ、いつもの須﨑選手の表情が、何よりも印象的で、オリンピックを前にした重圧に押しつぶされた2年前の姿はありませんでした。

 

ここまで本当に長くて厳しい道のりだったけれど、ようやくスタートラインに立つことができた。

 

“1%の可能性”を信じ続け、みずからの力で手繰り寄せた須﨑選手。頂点も、どん底も経験した21歳がオリンピックの主役に躍り出る日が近づいています。

この記事を書いた人

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清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

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須﨑 優衣

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